初心者がクラシックギターを始めたり、中級者がより腕を上げたりするのに役立つ教則本(教本)にはさまざまなものが存在しています。スポーツと同じく、ギターを弾くにも基礎力が必要であり、教則本は基礎力向上に役立てることが可能です。この記事では現在出版されている教則本のなかからおすすめのものをピックアップし、その特徴を紹介します。
クラシックギターの練習についての記事はこちらのカテゴリーも参照ください:
定番のカルカッシや青本も良いけど
クラシックギター教則本の定番といえば、「カルカッシ・ギター教則本」でしょう。
また、日本で作られたものとしては、小原安正の「教室用新ギター教本」(通称「青本」)も有名です。
これらは確かに長年使われてきた名著ではあるのですが、少々内容が古いことは否めません。
伝統的なクラシックギターの学び方を実践したい方にはおすすめですが、より現代的なやり方を目指すならほかの選択肢もあるでしょう。
初心者向けのおすすめのクラシックギター教則本
まずは初心者向けのおすすめ教則本を紹介します。初心者向けといっても、中級者や上級者も使えるものを紹介しています。
「プランティング」を始めて取り入れた「Pumping Nylon(課題別テクニックを習得する新しいアプローチ)」
現代的な教則本の筆頭にあげられるのが、LAGQのメンバーとして知られるスコット・テナントが書いた「Pumping Nylon」です。
日本では「課題別テクニックを習得する新しいアプローチ」というタイトルで出版されています。
この教則本は今やクラシックギターを演奏する上で当たり前となっている、「プランティング」を教則本に初めて記載したことで知られています。
プランティングとは、弦を弾く前に右手を弦の上に置く弾き方であり、昔からギタリストは無意識あるいは意識的にこれを取り入れていました。
しかしながら、奏法の1つとして教則本に掲載し、その練習方法を提示したという意味でPumping Nylonは画期的といえます。
プランティングについてはこちらの記事を参照ください:
また、内容が非常に合理的に書かれていたり、アンドリュー・ヨークやブライアン・ヘッドといった現代の作曲家による曲が練習曲として収録されていたりする点も新しいです。
Pumping Nylonについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。
村治佳織/奏一の父親による「ギターだ〜いすき」シリーズ
村治佳織/奏一の父親である村治昇が作った教則本が「ギターだ〜いすき」シリーズです。
1巻と2巻は子ども向けなのですが、3巻と4巻は中高生以上の大人向けとなっており、誰でも使えます。
特に4巻は、村治佳織の著書に、今でもこれを練習の最初にやっているということを示すような記述があり、中級者や上級者でも長く使えるといえるでしょう。
1巻と2巻は子ども向けになっているので、子どもに英才教育を施したい保護者におすすめです。
全4巻を解説する5巻もあります。
独学なら動画付きの教則本がおすすめ
クラシックギターを独学で始めるなら、動画付きの教則本がおすすめです。
独学でクラシックギターを始める場合、どうしても文字だけだと伝わらない情報がありますが、動画付きなら一目瞭然です。
おすすめとしては、たとえばこんなものがあります。
1番目のヤマハの「文字と楽譜が大きいクラシックギター入門」はQRコードを読み取ることでスマホやタブレットから動画が見られるので便利です。
また、「宇宙一やさしいクラシック・ギターはじめました」と銘打った教則本も登場しました。
あえて理論や奏法に触れない、実用的な教本です。
中級者向けのおすすめのクラシックギター教則本
続いて、初心者は脱したけどこれからさらに腕を上げていきたい中級者のための教則本です。
短時間の練習でうまくなりたい人向けの「1日に3つのフレーズを5分ずつ弾くクラシックギターワークアウトブック」
ヤマハから出版されている中級者向けの教本(というか練習曲、フレーズ集)が、「1日に3つのフレーズを5分ずつ弾くクラシックギターワークアウトブック」です。
5分で終わるフレーズが270収録されており、1日に3つやれば3カ月、1日1つでも9カ月でコンプリートできるという、忙しい方にピッタリの内容となっています。
ヤマハ自ら対象者を「中級」としており、やり応えがありそうです。
詳細はこちらの記事を参照ください:
実際に試してレビューしました:
基礎をしっかりかためたい人向けの「ギタリストのための標準ギター・エチュード選集アルペジオ編/スケール編」
アルペジオやスケールといった基礎をしっかりかためたい方には「ギタリストのための標準ギター・エチュード選集アルペジオ編/スケール編」がおすすめです。
クラシックギターの曲は大雑把に言えば、ほぼアルペジオとスケールでできています。
このため、この2つの技能を高めることで、多彩な曲に対応できる基礎力を付けることができ、中級者から上級者へのステップアップにつながるでしょう。
詳細はこちらの記事を参照ください:
毎日の基礎練習ルーチンがほしい人向けの「Complete Warm-Up for Classical Guitar」
ギターを弾き始める前には指ならし(ウォームアップ)が欠かせません。
また、毎日決まった基礎練習をおこなうことで、少しずつ能力を伸ばすことができるでしょう。
そのために有用なのが「Complete Warm-Up for Classical Guitar」です。
この本にはギタリスト兼指導者である著者が、長年の指導のなかで見つけたウォームアップや基礎練習にピッタリの練習内容が収録されています。
著者自身もこのウォームアップをおこなっているそうで、上級者にも役立ちそうです。
毎日少しずつ弾いていくことで、コツコツと腕を上げていくことができます。
詳細はこちらの記事を参照ください:
年を取ってもギターを楽しみたい人向けの「年齢を超える!ギター技巧維持教本」
人は年齢とともに衰えていくものですが、年を取ってもギターを楽しみたいなら中林淳眞の「年齢を超える!ギター技巧維持教本」を試してみてはいかがでしょうか。
準備運動や筋力を鍛えるだけでなく、脳神経のトレーニングも収録されています。
また、ギターの技術を維持するには右手の小指が重要として、小指を鍛えるトレーニングが収録されているのが新しい点です。
詳細はこちらの記事を参照ください:
独学でうまくなりたいなら「決定版 ギター・エチュード集」
独学でギターの腕を上げたいなら練習曲(エチュード)がおすすめです。
エチュードは名ギタリストたちがギターの技術向上のために書いた曲であり、自分が苦手とする技術を集中的に練習できるでしょう。
「決定版 ギター・エチュード集」には96曲ものエチュードが収録されており、さまざまな技術向上に役立ちます。
簡単な曲から難しい曲まで幅広く収録されており、中級者や上級者であっても自分の演奏を見つめ直すのに役立ちそうです。
詳細はこちらの記事を参照ください:
読者からのおすすめ
情報交換掲示板に投稿いただいた、読者からのおすすめ教則本を紹介します。
ほかにもありましたら追加しますので、ぜひ掲示板に投稿ください。
サグレラスの教則本(Julio S. Sagreras Guitar Lessons Book 1-3, 4-6)
ギターねこさんから推薦されたのが、マリア・ルイサで知られるサグレラスの教則本です。
Book 1-3とBook 4-6に分かれており、4-6が上級編です。
日本ではあまり知られていない練習曲が多数含まれており、これまでほかの教則本をやってきた人でもこれまでとは異なる練習ができるでしょう。
きれいな曲も多く、初心者向けから上級者向けまで幅広く網羅されており、英語ながらさまざまな方が解説動画をアップしているとのことです。
当然日本語ではなく英語ですが、英語の教本はスマホカメラを使うと簡単に翻訳できます。
IMSLPにもBook 1がありますが、スペイン語のようです。上で紹介したスマホカメラを使って翻訳すると良いかもしれません。
IMSLPなど無料で楽譜を手に入れる手段についてはこちらの記事を参照ください:
教則本を活用して効率よくギターの腕を上げよう
ギターの演奏技術を向上しようと思っても、曲ばかり弾いていたのではなかなかうまくなりません。
スポーツ選手が筋トレ、走り込み、素振り、キャッチボールなどをおこなうように、ギタリストにも基礎力をつけるための練習が必要です。
教則本はそのために役に立つ本であり、ギターを弾くなら1つは持っておきたいといえるでしょう。
初心者はもちろん、中級者であっても教則本を使って練習することを習慣にするのがおすすめです。