クラシックギターの世界では様式美が大事にされており、人前で弾くときにクリップチューナーをつけっぱなしにしていると批判されることがあります。コンクールの時は特に気を付ける方が良いでしょう。ダダリオのNS Microヘッドストックチューナーシリーズはプロのクラシックギタリストも愛用する目立たないチューナーです。そんなNS Microシリーズの新作である「PW-CT-12RC」を購入したのでレビューしたいと思います。

ギター用チューナーについてはこちらの記事でさまざまな製品を紹介しています:
また、ステージ上で目立たないチューナーについてはこちらの記事で特集しています:
「クリップ」部分が目立つクリップチューナー
クリップチューナーと呼ばれるチューナーが登場したのは21世紀に入ってすぐの頃だったように記憶しています。
それまでのケーブル付きマイクをつなげる方式と比べ、ステージ上でそのまま使えることから、瞬く間に普及しました。
しかしながら、クリップチューナーにはその名前の由来ともなっている「クリップ」部が大きいという欠点があります。

クリップチューナーはバネの力でギターに固定するという仕組みです。
バネの力でしっかりと固定し、ギターの振動をコンタクトマイクに拾わせるためではあるのですが、バネの開閉のためにどうしても人間が指で挟む場所が必要になります。
人間が指で挟みやすいようにするにはギター本体から飛び出した形で配置せざるを得ず、そのために取り付けたときに目立ってしまうというわけです。
バネを使わずに固定するNS Microヘッドストックチューナーシリーズ
ダダリオのNS Microヘッドストックチューナーシリーズは金属バネを使わずにギターの固定することにより、取り付け時に目立たないようにしたチューナーです。
プラスチックの弾性力を利用して固定
横から見ると以下の写真のようになっており、クリップチューナーに存在していた指でつまむ場所がありません:

下側の棒が少し斜めになっているのがミソで、プラスチックの弾性力を使ってギターに固定します。
厚みを調整するときは、後部にあるボタンを押しながら下部パーツを上下させることでギターにフィットさせられます:

非常にシンプルな作りです。
付けたままでもまったく目立たない
シンプルなのですが効果は絶大で、ギターに取り付けたときに正面から見えるのはこの程度です:

クリップチューナーに比べると飛び出している部分が最小限なのでまったく目立ちません。上の写真は比較的明るい色のヘッドのギターですが、暗い色のヘッドならより目立たないでしょう。
さらに、コの字型の形状を生かし、チューナー糸巻き部分に固定することもできます:

横から見ても目立ちません:

これならつけっぱなしでも気にならないのではないでしょうか?
固定の強度はやはりクリップ式には劣ります。
ただ、演奏していて外れたということはないですので、実用上は問題ないレベルです。クラシックギターの場合はギターを激しく動かすということもないですし。
USB-C充電式 & 上下の角度調節が可能な「PW-CT-12RC」
NS Microヘッドストックチューナーはこれまで、PW-CT-12という電池式かつ左右方向の回転ができるものが販売されていました。
この製品の発展版として発売されたのがPW-CT-12RCです(Re-Chageableの略でしょうか?)。
今回はこちらのPW-CT-12RCを購入したのでレビューしていきたいと思います。
付属品は最小限、充電ケーブルは短め
パッケージは以下のように、店頭でつるして売ることを想定したシンプルなものです:

「USB充電式」というところを大きくアピールしています。
付属品は本体とケーブルだけとシンプルで、説明書はパッケージ裏への印刷で代用されています:

ケーブルはかなり短めなので必要に応じて長めのものを用意した方が良いでしょう。
充電端子はUSB-Cなので汎用性が高いです:

左右に加えて上下の角度調整が可能
これまでのPW-CT-12は左右方向の回転はできたものの、上下方向の角度調整ができませんでした。
PW-CT-12RCでは上下方向にも角度調整が可能になり、より表示を見やすく調整できます:
表示文字の回転も可能です:
フル充電で22時間使用可能、ピッチは410Hzから480Hz対応
バッテリーはフル充電で22時間使用可能と十分長いです。
バッテリー残量はインジケーターの色で示され、100%から10%なら緑、10%から5%なら黄、5%から0%なら赤になります。
黄色になっても2時間くらいは使える計算なので安心ですし、10分経つと自動的に電源が切れるのでいつの間にかバッテリーがなくなっていたということは少ないでしょう。
チューニングの基準ピッチは410Hzから480Hzまで対応とかなり広いです。
起動は高速、音への反応も速い
チューナーは使いたくなったときにすぐに使えるのが大事なので、起動速度は重要です。
実際に起動と終了を試したのがこちらの動画:
右下の緑色のバッテリーインジケーターが点灯したら使える状態になるのですが、十分高速と言えるのではないでしょうか?
音への反応速度も良好で、違う弦を弾くとすぐにチューニングが切り替わります。
ただ、チューニングのずれを示す表示は上下それぞれ3段階しかありません。このため、ずれの大きさを把握するには慣れが必要でしょう。
ここは本体の大きさとのトレードオフなので仕方ないところでしょう。
とはいえ、使っていて精度が悪いとか、合わせにくいと感じたことはないです。
PW-CT-12よりもコスパが高い?
この記事を書いている時点で、PW-CT-12RCは先代のPW-CT-12よりも500円ほど高い値段で売られています。
しかしながら、電池交換が必要ないという点を考慮すると、実はPW-CT-12RCの方がコスパが高いのではないかと思います。
PW-CT-12はCR2032という電池を使っているのですが、Amazonで買うとAmazon Basicの安いもので1個あたり50円、有名メーカーなら1個あたり150円以上します。
Amazon Basicの安いものを使っても、10回交換する期間使えば元が取れる計算です。
電池交換の手間がいらず、かつ上下方向の角度も変えられるので、今から買うならPW-CT-12RCがおすすめです。
人前で演奏する機会があるなら1つ持っておきたい
PW-CT-12RCは人前で弾く機会がある方は持っておいて損がないチューナーといえます。
付けていてもまったく目立たず、演奏やギターの様式美を邪魔しません。
精度や反応速度も良好で、充電可能なバッテリー内蔵という特徴もあり、常用するチューナーとしてもおすすめです。
チューナーを探している方はぜひ試してみてください。