ギターは使う前に調律が必須である楽器です。したがって、チューニングを正確に行うことは良い音楽を奏でるのに必要です。とはいえ、あまり時間をかけるのも考え物です。そんなギターのチューニングにあった個性的な面白いチューナーをまとめてみました。
正確性と高速性
ギターのチューニングに求められるのは大きく分けて2つの要素があるかと思います。
正確性(精度)
1つ目はいかに正確に調律を合わせられるかという点です。
実はデジタルで動作するチューナーといっても精度はまちまちです。
安いチューナーだと±1セントというものが一般的ですが、高いものだと±0.02セントという超高精度なものがあります(後述します)。
特に精度の高いものはストロボモードというモードを持っていることが多いです。
たとえばこんな感じ(3:24あたり):
普通のチューナーは針の動きでチューニングのずれを表すのですが、この場合、表示できる針の角度の限界がチューニング精度の限界になります。デジタルで針を表示している場合はLED等のドットであらわしますので、どうしても限界があります。
これに対して、ストロボモードの場合光の動きでチューニングをあらわします。光が止まればチューニングがあっていることになるのですが、この場合はあらわせるチューニングの精度に原理的には限界がありません。
昔懐かしのもので言うと、レコードの回転数を合わせるための突起です。あれが止まっているように見えれば回転数があっているという原理で、ストロボチューナーも同じです。
ただ、もちろんしっかり合わせるには結構時間がかかります。チューナーというよりは人間とペグと弦の問題です。
精度は高ければ高いほどいいです。ただ、ギターの宿命としてどれだけ開放弦で正確に合わせても和音の濁りは発生します。ここは耳で微調整するかありませんが、その前段階としてまずは開放弦でしっかり正確に合わせられるかどうかは重要な要素です。
高速性
もう1つはいかに速くチューニングできるかという点です。この点においては3つほど考えるべきポイントがあります。
チューナーの反応の良さ
チューナーはマイクから拾った音を内部で演算を行ってあっているかどうかを判定するのですが、この演算の速さが反応の良さにつながります。
反応が悪いものは弦を弾いてもなかなか表示が出なかったり、あるいはペグを回してもなかなか反応しなかったりしてストレスがたまります。
反応の良さを決めるのは使っているCPUの速さおよびソフトウェアのアルゴリズムです。
ここはカタログには出てこないところなので判定が難しいですが、高いものは良いものを使っていることが多いです。また、多機能なものも高速なCPUを使っている可能性は高いですしアルゴリズムもこだわっているかと。
ポリフォニックチューニング
2番目はポリフォニックチューナーかどうかという点です。
通常のチューナーは1度に1つの弦しかチューニングできませんが、ポリフォニックチューナーは何と複数の弦が同時にチューニングできます。
例えばこんな感じです:
これの何が良いかというと、ポリフォニックモードで各弦のずれを確認することで、チューニングの必要のある弦とない弦を判定できます。
たとえば3弦だけくるっている状況でも、ポリフォニックチューナーでない場合は1つ1つ調弦を確認する必要がありますが、ポリフォニックの場合は3弦だけくるっていることが分かるのでこれだけ合わせれば終わります。
練習や本番の合間にチューニングを確認するには非常に便利な機能です。
オートチューナー
究極ともいえる時短チューナーがオートチューナーです。
その名の通り、ペグを勝手に機械が回して調弦してくれます。人間がやるのはチューナーをペグ回しにあてて音を鳴らすだけです。
自動的に調弦してくれますので調弦に頭を使うことなく演奏に集中することが可能です。
個性的なおすすめチューナー紹介
これらを踏まえてお勧めのチューナーを紹介します。安くて何の変哲もないチューナーは紹介しません。
tc electronic POLYTUNE CLIP/UNITUNE CLIP
1つ目はカナダのtc electornicというメーカーが作っているチューナーです。割と新しいメーカーです。
このチューナーはポリフォニックチューナーで複数の弦を同時に調弦することが可能です。
また、ストロボモードにも対応していて、精度は何と±0.02セント。私が調べた中では最高精度です。
内部もARM社製のCPUを使っていたりと反応も高速そうです。お値段もこれだけの機能を搭載しながらお安めです。
欠点としては、クラシックギター用チューナーにしてはちょっと派手な外観である点と、本体の可動域が狭いところでしょうか。
ちなみに、このチューナーからポリフォニックチューナー機能のみを省いたUNITUNE CLIPというのも売られています。
こちらならさらにお安いです。
(追記): 実際買ってみました
Peterson(ピーターソン) StroboClip HD
ピーターソン製のストロボチューナーです。ピーターソン社はチューナー分野では定評のあるメーカーです。
ストロボチューナー機能で±0.1セントの精度を誇ります。
また、ディスプレイの解像度が高いところも特徴の1つです。ストロボチューナーは表示の動きでチューニングするため、解像度が高い方があわせやすいため、改造が高いこのチューナーはストロボモードをしっかり活かしてチューニングできそうです。
ピーターソン社のチューナーの特徴として、“Sweetened Tuning”とか“Sweetners”とか言われる機能があります。
これは、調律/調弦を単純に周波数(Hz)で行うのではなく、そこから楽器や音楽の特性の合わせて微調整するチューニングモードです。ギターではそれぞれの弦の太さによってぶれるチューニングを合わせてくれるそうです。通常はそれぞれの奏者が自分の感覚でチューニングを微妙に調整していたものを、自動的にやってくれるというので手軽に美しい音を得ることができます。ただし、クラシックギターモードはなくアコースティックギターモードしかないようですが。。。
KORG(コルグ) Sledgehammer PRO(SH-PRO)
日本のメーカーであるコルグのストロボモード対応チューナーです。±0.1セントの精度があります。
このチューナーの特長は3Dビジュアルメーターと呼ばれるディスプレイです。
普通のチューナーの画面は平面になっています。そこにLEDがあったり液晶があったりするのですが、このチューナーは円筒形の本体に光が写るような構造になっています(下記動画の19秒目くらい):
普通のチューナーはしっかり自分の方を向かせないと画面が見づらいのですが、この3Dビジュアルメーターであればちょっとくらいずれていても全く問題ありません。また、しっかり光って表示することから暗いところでもはっきり見えます。
欠点は針のチューナーの表示とは異なるので慣れるのに少しだけ時間がかかるところでしょうか。
ちなみに、私はこのチューナーを使っています:
ダダリオ Nexxus 360(PW-CT-26)
ダダリオのUSB充電式のチューナーです。
1回の充電で24時間使用可能なリチウムイオン電池を内蔵し、電池交換のコストと手間を省くことができます。
また、盤面が360度回転するため、見やすい角度に調整しやすいのもうれしいポイントです。
詳細はこちらの記事を参照ください:
Roadie 2(ローディー2), Roadie 3
オートチューナーといえばこれ、といえるチューナーであるローディー2です。
特徴は何といっても自動的にチューニングしてくれるところ。本体上にディスプレイがあり、そこで楽器を選び、ペグに本体をさして音を鳴らすだけです。
また、スマホとBluetoothで接続して設定することも可能です。今どきですね。大きさも電動ドリルのような大きさかと思いきや手のひらに収まるサイズです。
精度は
最大でも2セントまでの正確なチューニング機構
Roadie 2のHPより
とあるので±2セントでしょうか。
おまけ機能として、弦をつけたり外したりするためにペグを回し続けるモードもあります。
欠点はやはり価格でしょうか。他に比べてちょっとお高めです。また、クリップチューナーと違ってつけっぱなしにできないので、演奏中はどこかに置いておく必要があります。
追記:新型のRoadie 3も登場しました。ペグを回すスピードが倍になるなど、進化しています。
追記:Roadie 3を実際に購入してレビューしました。
JOWOOM T2 Smart Tuner
比較的最近発売されたオートチューナーです。ローディー2に比べると半額くらいの安さがポイントです。
安い分、スマホとBluetoothで接続するような機能はありません。しかしながら、ローディー2に比べると大型のカラーLCDディスプレイや多くのボタンが搭載されていて、こちらの方が使いやすい場面もありそうです。
どうしてもスマホと接続したい、ということがなければこちらでもいいかもしれません。
(追記): おそらく同じ製品の名前違いと思われるRevol effects RT1が登場しました。こちらの方が少し安そうです。
Cherub WST-905Li
CherubのWST-905Liはバッテリーを内蔵しUSBで充電できるチューナーです。
電池式のランニングコストが高いという悩みを解決することができます。
また、「CPSチューニング」という特殊なチューニングモードを持ち、ギターの響きを変えることができます。
詳細はこちらの記事を参照ください:
iPhone/Androidのスマホアプリという選択肢も
スマホにはマイクもディスプレイも高速なCPUも搭載されていますので、色々なチューナーアプリがあります。
チューナーを持ち歩かなくていい分移動時の荷物は減りますが、楽器につけたままにすることはできないのは良しあしかもしれません。
しかしながら、自宅でチューニングしたり、控室でチューニングしたりする分には問題ないかと思います。
ちなみに、マイクに関してはスマホにつなげられるマイクがあります。これを使えば騒がしいところでのチューニングも安心です。
すでにチューナー用マイクを持っている方はこのような変換ケーブルを使えばスマホに接続できます:
クリップチューナーだとケーブルがうっとうしいという場合は以下のようなマイクをスマホにつけると、スマホ本体のマイクよりは指向性が高そうなので、快適にチューニングできそうです。ダイナミックレンジもスマホ内蔵マイクより高いとメーカーはうたっています。
iStroboSoft
上で紹介したPeterson社が出しているチューナーアプリ iStroboSoftです。
有料ですが、Peterson社のノウハウがつまったアプリで評価も高いです。
Sweetened Tuningももちろん搭載されており、上で紹介しているチューナーよりもより多くのモードがあります。ただし、別途料金がかかります。
PolyTune
こちらも上で紹介したTC Electronic社が出しているPolyTuneアプリです。
PolyTune社のチューナーのアルゴリズムをそのまま移植しているそうです。したがって、ポリフォニックチューナーも使えます。
アルゴリズムが同じだそうなので、TC Electronic社のチューナーを買う前のお試しにもいいかもしれません。
HardWire HT-6 Fast Tune
Harmanが出しているHT-6というポリフォニックチューナーをアプリにしたもので、なんと無料です。
ポリフォニックチューナーがどのようなものか試してみたい方にもいいかもしれません。
UltraTuner
何と驚異の0.001セントという高精度をうりにするチューナーアプリ UltraTunerです。
人間の指やペグの精度の限界をこえていないか心配になるほどの精度です。
面白いのがApple Watchに対応している点で、チューニング状況がApple Watchに表示されるとか。これにより、スマホ画面をにらみながらチューニングする必要がありません。
ステージ上で目立たないチューナーを本番用に用意しよう
特にクラシックギターにおいては、チューナーを付けたまま演奏することに対して否定的な意見もあります。
目立たないチューナーについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
良いチューナーを使って快適なギター生活を
チューニングは重要な作業ではあるのですが、これが楽しみという人は少ないかと思います。むしろできるだけ手早く終わらせたい方が多いのではないかと。
ここで紹介したチューナーを使えば煩わしい調律の時間を短くし演奏の方に集中できるかもしれません。
また、そもそもチューニングの精度が低い状態で使っていた人はしっかり調律したギターの響きの美しさに驚くかと思います。
私は現在KORGのSledgehammer Proを使っていますが、tc electoricのPOLYTUNE CLIPとJOWOOM T2 Smart Tunerが気になっています。買い替えるかどうか。。。どうしたものか。。。
(追記) 実際買ってみました