クラシックギターの弦の中で最もぼやけた音がする弦といえば3弦です。特にハイポジションでは他の弦よりもこもった、はっきりしない音となりフラストレーションがたまることがあります。そんな3弦の音を改善するための対策と解消法をまとめました。カーボン弦以外の新素材についても紹介しています。
以下の記事で本ブログの弦のレビュー/感想/情報記事をまとめています:
なぜ3弦の音はボソボソしてぼけた音になるのか
まずはなぜ3弦の音がぼやけた音になるのかという話です。
一言でいうなら「太いから」です。1~3弦は一般に巻弦ではなく単一繊維の弦になっていますが、太くなるにつれ振動しづらくなり、はっきりした音が出なくなってきます。
4~6弦がより太いのに割とはっきりした音が出るのは金属を巻き付けた巻弦になっているからで、そうでなければ3弦よりももっとぼやけた音になるはずです。
また、アコギやエレキにおいて3弦の音が問題にならないのは1~3弦が金属弦のためです。金属はクラシックギターで一般的に使われるナイロンよりも比重が重く、同じ音を出すのに細くすることができます。
3弦の音対策
クラシックギターの3弦の音の問題については製作者、弦メーカー、演奏者全員が認識しており、様々な対策が取られています。
そんな対策について紹介します。
カーボン弦などの新素材の3弦を使う
もっとも簡単で効果のある方法はカーボン弦などの新素材を使った3弦を使うことです。
新素材の弦はナイロン弦よりも比重が重く、同じ音を出すのに細く弦を作ることができます。これによりはっきりした音を出すことができます。
新素材にはいくつか種類がありますが、私の試した限りでは以下の順番ではっきりした音が出ます。
- サトウキビ由来のプラスチック(シュガー)
- 金属粉末入りポリマー
- カーボン弦
- カーボンとナイロンを混ぜた弦
- コンポジット素材
- チタニウム弦
- ナイロン弦
以下がそれぞれの詳細です。順番はメジャーなものからになっています。
フロロカーボン
一番メジャーで古くからあるのはフロロカーボンという素材を使った弦です。サバレスのアリアンスという弦が最初といわれています。
フロロカーボンはナイロン弦よりもかなり細くなるので、3弦でもはっきりした音が出ます。その反面、1,2弦になるとちょっと金属的で神経質な音になったりします。さらに、弦が細くなり張力が高くなったように感じることもあります。また、一般的にナイロン弦よりもカーボン弦の方が高価です。
このため、3弦のみフロロカーボンにし、1,2弦はナイロン弦を使うという使い方がプロをはじめ結構行われています。
また、3弦だけが他の弦とは違う音色になって違和感が出ることもあるので組み合わせには注意が必要です。
最近では弦メーカーもそのような構成の弦をセットで売り出しているので、まずはそういったものを使うのがお勧めです。
上の記事で紹介しているクリエイションカンティーガといわれるセットは1,2弦がナイロン弦のニュークリスタル、3弦がカーボン弦のアリアンスとなっています。メーカーがセットで売り出しているだけあって音の相性も悪くありません。
まずはカーボン弦を試してみるのがいいかと思います。
チタニウム弦
カーボン弦の次に出てきたのがチタニウム弦と呼ばれる弦です。
この弦、別に金属のチタンと関係があるわけではなく、ナイロンに混ぜ物をした素材です。見た目がうす紫色でなんとなくチタンっぽいのでチタニウム弦と呼ばれています。最初に出したのはロイヤルクラシックスと記憶しています。
この混ぜ物によって普通のナイロン弦よりも比重が大きくなり、弦を細くすることができます。ただし、カーボン弦ほど比重が大きいわけではないので、音はさほど金属的に鳴らず、太さもあまり変わりません。このため、カーボン弦は金属的すぎるけどナイロン弦よりはもう少しはっきりした音が欲しい人にお勧めです。
日本でもっとも手軽に買えるのはプロアルテのダイナコアと呼ばれる製品です。
また、ハナバッハの最高級弦であるexclusiveは3弦のみチタニウム弦となっています。
コンポジット素材
これは割と古くからある製品ですが、プロアルテにコンポジットといわれるセットあります。
このセットには3弦が2種類入っています。1つは普通のナイロン弦、もう1つはコンポジット素材でできた弦です。
コンポジット素材はカフェオレのような色をしており、普通のナイロン弦よりもはっきりした音が出ます。
ただ、このコンポジット素材の弦、ナイロン弦とちょっと音色な感触が違うので違和感を覚える場合もあります。2種類入っているので両方試して気に入った方を選べばいいかと。
ナイロンとカーボンのミックス
最近新しく出てきたものにナイロンとカーボンを混ぜたものがあります。これはドーガルのディアマンテが採用しています。
どのように混ぜたのかについては不明ですが、釣り糸にカーボナイロンというものがあるらしいので、それなのかもしれません。
この弦はカーボン弦よりは柔らかい音がしますが、ナイロン弦やチタニウム弦よりははっきりした音が出ます。
また、ドーガルにはマエストラーレというポリマーを使った弦もあります。はっきりした音というより大きな音の弦ですが、これも面白いです。
金属粉末入りポリマー
ポリマーに金属粉末を入れた弦を使った弦がアクイーラにあります。ルビーノといわれる製品ですが、
金属粉末のために弦が赤いそうです。以下の現代ギターの写真を見る限りは赤というか赤褐色です。メーカーはカーボン弦よりもはっきりした音が出るといっており、期待ができます。
試してみましたが、確かにぼやけが少なく、力強い音の弦でした。
サトウキビ由来のプラスチック
最も最新の素材と思われるのがサトウキビ由来のプラスチックです。アクイーラのシュガーという弦です:
サトウキビ由来というとなんとなく自然派な感じがして優しい音が出そうですが、今まで試した中で最も金属的ともいえるシャープな音でした。
あまりにもシャープすぎてアコギのような音が出ます。また、素材のためか指とこすれるときにキーキーという音が出てしまいます。
低尾弦も銀メッキではなく樹脂コーティングだったりいろいろととんがった弦です。
弦留めチップを使う
弦を変える以外の方法としては弦留めチップと呼ばれる製品を使うという方法があります。
弦留めチップは弦をサドルによりしっかりと密着させ、弦の振動をより効率的に表面版へと伝える効果があるといわれています。これにより少しはっきりした音になります。
また、弦留めチップは弦交換の手間や弦飛びの頻度を下げる効果もあるといわれています。
少し待つ or 交換してみる
初めてはる弦がぼやけたようなこもったような音の場合、張ってから2,3日~1週間ほど待つのも手です。
ナイロン弦は張ってからどんどん伸びていき、どこかで安定します。伸びていくと弦がだんだん細くなっていくのか、音がはっきりしてきます。このため、最初はぼやけた音と持っていた弦が時とともにはっきりとした音になるのはよくあります。
また、不良弦の可能性もありますので、あまりにもひどい場合は交換してみるのも手です。
テンションを下げてみる
同じシリーズの弦のテンションの低いものに変えるのも1つの手です。テンションを下げると弦が細くなります。
また、テンションの高い弦だと演奏者が鳴らしきれない場合があり、その場合はテンションを下げてみるとしっかりと弦を鳴らすことができてはっきりした音になる場合があります。
弾き方を見直す
身も蓋もありませんが、弾き方が悪い場合もあります。
楽器をしっかりと鳴らすような弾き方ができないとこもったようなぼやけたような音になります。うまい人なりプロの人に同じ楽器を弾いてもらってこもらないようであればこの要素も大きいかと。。。
楽器を変える
これも身も蓋もありませんが、量産品の安いギターだとそもそも楽器が鳴らない場合があります。
このような場合は楽器を変えてみると全然違う印象を受けるかと思います。
楽器屋へ行って試奏させてもらうとわかるかもしれません。
クラシックギターとはそういう音だと思うのも大事
そもそもクラシックギターの3弦は昔からぼやけた音であり、そのような楽器を対象に曲は作曲されています。
ぼやけた音と言いますが、逆に甘さがあったり、柔らかい音が出たりと、3弦には3弦の良さがあります。そのような表現をしたくてあえてハイポジションを指定している曲もよくあります。
ギターは単音を弾いて楽しむものではなく曲を楽しむものですので、3弦だけを弾いてぼやけていると思うのではなく、曲を弾いている中でどうなのかを考えることが大事です。
そうはいっても気になるものは気になるので、一度試してみては?
そうはいっても、3弦の音が気になりだすと曲や練習に集中できなくなることもたしかです。
上で紹介した方法を一度試してみて、自分がどう感じるかを試してみるのも良いかと思います。
それによってクラシックギターの3弦の良さが発見できるかもしれませんし、改善されたことでよりギターが楽しめるようになるかもしれません。
楽器を買い替える以外はそれほど大金がかかるわけではないので新素材の弦への交換から試してみてください。