プロアルテといえば、クラシックギター弦の代表格ともいうべきブランドです。初心者や迷ったらまずはプロアルテノーマル、といわれるほど信頼度が高く、プロの中にも愛用者が多くいます。
そんなダダリオプロアルテのクラシックギター用弦を全種類紹介し、特徴やレビュー評価についても解説します。
以下の記事で本ブログの弦のレビュー/感想/情報記事をまとめています
元々はイタリアの家族経営の弦メーカー
今でこそダダリオはアメリカのニューヨークに本社を置くメーカーですが、もともとはイタリアで弦を製造していたD’Addario一家が起源の非常に長い歴史のあるメーカーです。
Wikipediaによると、1680年にDonato D’Addarioという人にロープや弦の製造者かつ売り主を意味する”cordaro”という洗礼名を付けた記録が残っているそうです。
その後、1915年にそのイタリアの街が地震で大打撃を受け、RoccoとCarmineというD’Addario一家の義兄弟がアメリカのニューヨークに移住します。
そして20世紀のギター音楽の盛り上がりとともに発展し、今に至ります。現在ではギターだけでなくベース、マンドリン、バンジョー、ウクレレ、フィドルなど様々な弦楽器の弦を製造し、世界最大の弦メーカーの1つとなっています。
プロアルテ (Pro-arte) はダダリオのクラシックギター用弦のブランド名
よく混同されますが、「プロアルテ」というのはダダリオの製品のブランド名であって、会社名ではありません。いわば、「サバレスのカンティーガ」と同じで、「ダダリオのプロアルテ」なのです。
とはいえややこしいのが、「ダダリオのプロアルテのコンポジット」のようにプロアルテの中にも複数の製品があることです。これを嫌ったのか、最新のXTシリーズでは「プロアルテ」をやめました。今後はこの流れになるのかもしれません。
ダダリオ (D’Addario) のクラシックギター用の弦 一覧
世界最大の弦メーカーの1つだけあって非常に種類が多いです。
まず、一覧にするとこのようになります。
名称 | 型番 | 種類 | |
ナイロンコア | EJ43, EJ44, EJ45, EJ46 | 普通の高音ナイロン弦、普通の銀色の低音弦セット。テンションはEJ43がライトテンション、EJ45がノーマルテンション、EJ46がハイテンション、EJ44がエクストラハードテンション。 | |
ブラックナイロン | EJ49, EJ50 | 高音弦がブラックナイロンという黒色の弦になっている。音が普通のナイロン弦よりも柔らかいらしい。 EJ49がノーマル、EJ50がハイテンション。低音弦は普通の銀色の低音弦。 | |
低音ブロンズ | EJ47, E48 | 高音弦は普通のナイロン弦、低音弦がブロンズ(青銅)80%と亜鉛20%の合金(いわゆる真鍮)。普通の低音弦よりも輝かしい音らしい。 EJ47がノーマルテンション、EJ48がハイテンション | |
研摩弦 | EJ51 | 普通のプロアルテに対して低音弦が研磨されていてノイズが少ない。なぜかハイテンションしかない。 | |
レクティファイド(Rectified) | EJ29, EJ30, EJ31 | 普通のプロアルテに対して高音弦を研磨して真円性を高めたもの。音程が良い。また、そのため音が柔らか。 EJ30がノーマルテンション、EJ31がハイテンション。EJ29はライトテンションとノーマルテンションの間くらい。 | |
EXPコーティッド | EXP44, EXP45, EXP46 | 普通のプロアルテに対して、低音弦をマルチフィラメントの心線にし、さらに極薄のコーティングを施したもの。錆や弦の摩耗に強く、通常の低音弦の2~3倍長持ちする。 EJ44がエクストラハードテンション、EJ45がノーマルテンション、EXP46がハイテンション。 | |
コンポジット (Composites) | EJ44C, EJ45C, EJ46C | 低音弦をマルチフィラメント(複数の細い繊維を束ねたもの)の心線にしたもの。さらに、3弦に普通のナイロン弦と、コンポジット素材(こちらは単一繊維)の3弦の両方がついている。EJ44Cがエクストラハードテンション、EJ45Cがノーマルテンション、EJ46Cがハイテンション。 | |
Lightly Polished | EJ44LP, EJ45LP, EJ46LP | EJ44C/EJ45C/EJ46Cに対して、低音弦を研磨してノイズを低減したもの。EJ44LPがエクストラハードテンション、EJ45LPがノーマルテンション、EJ46LPがハイテンション。 | |
ダイナコア (Dynacore) | EJ44TT, EJ45TT, EJ46TT | 低音弦をダイナコアといわれる新素材の心線にし、高音弦にチタニウムと呼ばれる添加剤をして輝かしい音にしたものを使ったセット。低音弦は長寿命で、調弦の安定性も高いらしい。EJ44TTがエクストラハードテンション、EJ45TTがノーマルテンション、EJ46TTがハイテンション。 | |
カーボン(Carbon) | EJ45FF, EJ46FF | 低音弦はチタニウムセットと同じダイナコア、高音弦がフロロカーボン弦のセット。EJ45FFがノーマルテンション、EJ46FFがハイテンション。高音弦のテンションはナイロン弦よりも高め。 | |
XTシリーズ | XTC44, XTC45, XTC46 | 従来の弦の4倍以上の寿命を誇る長寿命弦。新しいコーティングを採用している。プロアルテシリーズではない。XTC45がノーマル、XTC46がハイ、XTC44がエクストラハイテンション。 | |
クラシック (Classic) | EJ27N, EJ27H, EJ27N 1/2, EJ27N 3/4 | よく弦を交換する人のためにリーズナブルな価格に設定した弦。EJ27Nがノーマル、EJ27Hがハイ、1/2と3/4は子供ギター用。 | |
XTダイナコアシリーズ | 高音チタニウム弦 | XTC45TT, XTC46TT | ダイナコアの低音弦にXTコーティングを施したシリーズ。高音弦がチタニウム弦。XTC45TTがノーマル、XTC46TTがハードテンション。 |
高音カーボン弦 | XTC45FF, XTC46FF | ダイナコアの低音弦にXTコーティングを施したシリーズ。高音弦がカーボン弦。XTC45FFがノーマル、XTC46FFがハードテンション。 |
以下からそれぞれの詳細です。
プロアルテ ナイロン
最も歴史のあるプロアルテの弦です。
昔から精度の良さには定評があり、癖のない音質からクラシックギター弦のデファクト的存在です。
人気のある弦のためバリエーションも豊富で、テンションが4種類あるほか、ブラックナイロンの弦やブロンズの低音弦、研磨減などが存在しています。
私も色々な弦を使ってよくわからなくなった時はこれに立ち戻るようにしています。
値上げによってだいぶ値段が上がりましたが、今でもAmazonなどでは安く買えます。
レビューはこちら:
プロアルテ レクティファイド ナイロン(Rectified Nylon)
通常のプロアルテのナイロン弦に対して心なし研削盤によって削ることで真円度を高めた高音弦を使用しています。
通常のナイロン弦はレーザーによる検査だけなので、どうしても誤差が残りますが、こちらは削ることによって真円度がさらに高まります。真円度が高まることでいわゆる「はずれ弦」がなくなり、音程がよく鳴ります。
削った結果なのか真円度が高まった結果なのか、通常のプロアルテよりも暖かみのある音がするそうです。
このレクティファイドナイロンには珍しい”モデラート”テンションが存在します。こちらはライトテンションとノーマルテンションの間なのだとか。
プロアルテ EXP コーティッド
低音弦の芯線にナイロンではなく新素材のコンポジット素材を使い、かつ巻線にコーティングを施した弦です。これにより寿命を長くしています。高音弦は普通のプロアルテと同じです。
昔は赤色の半透明のコーティングでしたが、いつの間にか透明なコーティングになって安くなりました。
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プロアルテ コンポジット
EXPと同じく低音弦の芯線にコンポジット素材を使用しています。ただし、コーティングがなく、かつテンションの設定もこちらの方が高いです。
また、3弦が2種類入っており、通常のナイロン弦とカフェオレ色のコンポジット素材の弦が入っています。
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低音弦を軽く研磨してフィンガーノイズを減らしたシリーズもあります。
プロアルテ ダイナコア (Dynacore)
低音弦の芯線にコンポジット素材とも異なる新素材を使用しています。これにより現代的な音かつ長寿命を実現しています。
また、高音弦にはチタニウム弦を使用してより大音量でこもらない音になっています。
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プロアルテ カーボン
ダイナコアの高音弦をカーボン弦に変えたセットです。よりこもりのないはっきりとした大きい音が出ます。
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XT
ダダリオの最新のクラシックギター用弦で、パッケージの見た目も今までとはだいぶ違います。寿命が今までの3~4倍という触れ込みの長寿命弦です。詳細はこちらの記事を参照ください。
レビューはこちら:
プロアルテ クラシック
学生など長時間ギターを弾く人がリーズナブルに弦を交換できるように安い価格設定にした弦です。安いがプロアルテの品質は保たれています。
レビューはこちら:
XTダイナコア
プロアルテダイナコアの低音弦にXTコーティングを施したシリーズです。ダイナコア自体が長寿命なので、かなりの持ちが期待できそうです。
高音弦がチタニウム弦とカーボン弦の2つのバリエーションがあります。
日本でも発売開始されました。
ハーフセット
プロアルテには6弦すべてセット弦のほか、高音だけのセットや低音だけのセットの「ハーフセット」と呼ばれる製品が存在しています。
このハーフセットにはフルセットにはない組み合わせも存在しています。たとえば、セットだとカーボン弦は1~3弦すべてカーボンですが、1弦がナイロンで2,3弦がカーボンというハーフセットもあります。また、セットにはない高音弦は普通のナイロン、低音弦はダイナコアという組み合わせも楽しめます。
それぞれの弦の特徴は全セット弦の方を参照ください。
以下の表が型番と内容のまとめです:
高音弦のハーフセット
型番 | 内容 |
CNA-3T, CNH-3T, CNL-3T, CNN-3T, CNX-3T | 普通のナイロンの高音弦セット。 型番は順番に、アルトテンション、ハイテンション、ローテンション、ノーマルテンション、エクストラハードテンション。 |
BNH-3T, BNN-3T | ブラックナイロンの高音弦セット。 BNH-3Tがハイテンション、BNN-3Tがノーマルテンション。 |
RNH-3T, RNM-3T, RNN-3T | 研磨弦の高音弦セット。 RNH-3Tがハイテンション、RNM-3Tがモデレートテンション(中間)、RNN-3Tがノーマルテンション。 |
CGH-3T, CGN-3T, CGX-3T | 1,2弦が通常のナイロン、3弦がコンポジット弦の高音弦セット。 全弦セットとと違って3弦は1本だけ。 CGH-3Tがハイテンション、CGN-3Tがノーマルテンション、CGX-3Tがエクストラハードテンション。 |
TNH-3T, TNN-3T, TNX-3T | チタニウム高音弦のセット。TNH-3Tがハイテンション、TNN-3Tがノーマルテンション、TNX-3Tがエクストラハードテンション。 |
HBH-3T, HBN-3T | 1弦がナイロン弦、2,3弦がカーボン弦のセット。 HBH-3Tがハイテンション、HBN-3Tがノーマルテンション。 |
HGH-3T, HGN-3T | 1,2弦がナイロン弦、3弦がカーボン弦のセット。 HGH-3Tがハイテンション、HGN-3Tがノーマルテンション。 |
CBH-3T, CBN-3T | 1~3弦すべてカーボン弦のセット。CBH-3Tがハイテンション、CBN-3Tがノーマルテンション。 |
低音弦のハーフセット
型番 | 内容 |
SNA-3B, SNH-3B, SNL-3B, SNN-3B, SNX-3B | 通常の低音弦。 型番順にアルトテンション、ハイテンション、ローテンション、ノーマルテンション、エクストラハードテンション。 |
BNH-3B, BNN-3B | 真鍮製巻弦のセット。 BNH-3Bがハイテンション、BNN-3Bがノーマルテンション。 |
PCH-3B | 通常の低音弦を研磨したもの。 テンションはハイテンションのみ。 |
XCH-3B, XCN-3B, XCX-3B | EXPコーティングが施されたコンポジット素材の低音弦セット。 XCH-3Bがハイテンション、XCN-3Bがノーマルテンション、XCX-3Bがエクストラハードテンション。 |
SCH-3B, SCN-3B, SCX-3B | コンポジット素材の低音弦セット。 SCH-3Bがハイテンション、SCN-3Bがノーマルテンション、SCX-3Bがエクストラハイテンション。 |
SDH-3B, SDN-3B, SDX-3B | ダイナコアの低音弦セット。 SDH-3Bがハイテンション、SDN-3Bがノーマルテンション、SDX-3Bがエクストラハイテンション。 |
ダダリオ プロアルテ弦の評価とレビュー
プロアルテ弦についてはこのサイトでも多数レビューしています。
以下の記事で紹介しているのでご覧ください。
プロアルテ弦を愛用しているプロのクラシックギタリスト
昔から人気のある弦だけあり、プロの中にも愛用者がたくさんいます。
以下の記事で紹介しているので参照ください。
まとめてみて気づく膨大な弦の種類
最近は日本ではサバレスの方が勢いがある印象受けますが、プロアルテも頑張っています。トレンドの新素材やカーボン弦をおさえつつ、普通の弦も継続しており、新製品も発売するなど積極的にこの分野に取り組んでいるようです。
特にプロアルテノーマルは長期間人気を保っており、価格が安いことから買いやすい弦でもあります。
今後もクラシックギターの弦業界を牽引していってほしいものです。