弦の評価: アクイーラ アラバストロ ライトテンション (Aquila Alabastro LT)

4.0
アクイーラ アラバストロ (Aquila Alabastro)
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従来の素材にとらわれずに新素材を積極的に使うことで知られるアクイーラの弦です。ナイルガット(NYLGUT)と呼ばれるこの素材はガット(羊腸)弦を人工的に再現したものなのだとか。なかなか興味深いです。

ガット弦と同じ密度を持つナイルガット

アクイーラはナイルガットは世界で初めて人工的作られた合成ガット弦であるとしています。

ナイルガットは羊腸と同じ1.30 g/cm3 という密度を持っており、それ故にガット弦に近い音が出るのだそうです。

また、羊腸のガット弦は高い上に天然のものなので品質が安定しませんが、ナイルガットは人工的なものなので安価で品質が一定しているのも利点です。

さらにナイロン弦は湿度(水分)で大きく音が変わるという欠点があるのですが、ナイルガットは水分に対して安定性が高いそうです。

ちなみに、ナイルガットは切れやすい素材らしく、ナットやブリッジで傷がつくと切れてしまうそうです。このため、張る前にナットやブリッジの状態を確かめて必要ならやすり掛けすることが推奨されています。

このナイルガットはアクイーラが特許をとっている素材なのだとか。

石膏を意味するアラバストロ

このナイルガットを高音弦と低音弦両方に使ったのが今回紹介するアクイーラのアラバストロです。日本のSIEのHPではスーパーナイルガット(Supernylgut)となっていますが、アクイーラのHPおよびパッケージではナイルガットとなっているので、おそらくSIEが間違っています。

高音弦にはナイルガットのモノフィラメント、低音弦にはマルチフィラメントの芯線を銀メッキした銅線で巻いています。

弦の見た目はこんな感じ:

高音弦は乳白色です。普通のクラシックギター弦は透明なものが多いので、ここまで白いのは珍しいです。低音弦は普通の見た目ですね。

カーボン弦と比べるとこんなに違います:

ただ、比べると全然違うのですが、張ってしまえば意外と違和感がありません:

この辺りはドーガルのマエストラーレアクイーラのルビーノとは違うところですね。

ちなみに、低音弦は袋には入っていますが密閉されているわけではありません。単に高音弦とこすれあって傷つけるのを防ぐためなのでしょうか?

アクイーラの弦ではいつものことですが、各弦に弦番号がついていません。このため、太さで見分ける必要があります。問題はないのですがちょっと面倒。まあ、弦番号付ける代わりに値上げ、とかよりはいいのですが。

テンションは3種類

今回はローテンションを試しましたが、アラバストロには3つのテンションがあります。ライト、ノーマル、スペリアーの3種類です。

それぞれのテンション(張力)は以下のようになっています(単位は㎏):

LightNormalSuperior
1弦8.008.609.60
2弦6.907.408.10
3弦6.106.807.50
4弦7.307.407.80
5弦7.507.708.50
6弦6.406.607.50
合計42.2044.4948.99

ライトテンションでも合計で42.2kg!と驚くかもしれませんが、アクイーラのテンション表示は高めなので、触った感じはこんなに高いテンションではありませんでした。クラシックギター弦のテンション表示には統一規格がなくて各社好き放題なので…。

付帯音が少なくスッキリとした音

肝心の音はというと、付帯音が少なくスッキリとした印象を受けました。

ナイルガットの高音弦はこもった音がするということはなく、しっかりと鳴ります。しかしながら、余計な音がなくて芯が鳴っているという印象です。カーボン弦のようにキンキンすることもなく、ナイロン弦のようにこもることもなく、なかなか面白いです。羊腸の弦はこういう音なのでしょうか?

低音弦も同じく金属的な音が少なく芯が鳴っているという印象です。決して派手ではないのですが、しっかりと低い音が鳴っています。金属的な音が少ないのでこもっていると感じられるかもしれませんが、決してボヤっとした音ではありません。

この特徴のせいか、低音弦と高音弦の音のつながりがいいように感じました。

羊腸を人工的に再現した弦ということでものすごく個性的な音かと思いましたが、意外と普通のギターの音がします。弾いていて飽きない音なところがガット弦的なのかな、と思いました。

音の安定が速い

もう1つ印象に残ったのが安定の速さです。

張ってから少し経つと弦が安定し、すぐに弾けるようになりました

ナイロンとかカーボン弦だとしばらくはだらだらと伸びますが、これがないのはメリットのように感じます。

現代的な音に疲れた人におすすめ

アラバストロは羊腸弦を人工的に再現したということでかなり個性的なものを想像していましたが、普通に使えるギター弦という感じでした。

最近のクラシックギターはとにかく派手な音が好まれる印象がありますが、それとは対極のように思います。

現代的な音に疲れた時、あるいはクラシックギターの音ってどんなのだっけ?とわからなくなった時にふと立ち止まって使いたい弦です。

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