一昔前までクラシックギターのケースといえば木でできた無骨なデザインのものばかりでした。それが今ではさまざまな選択肢が存在し、なかにはおしゃれなデザインのものも。BAMケースはそんなおしゃれなクラシックギターケースの筆頭格ともいえる存在です。そんなBAMケースを実際に購入したので、デザインだけでなく機能面も含めレビューしたいと思います。
クラシックギター用ケースについてはこちらの記事でさまざまな製品を比較しています:
また、カーボン製アランフェスギターケースとの直接比較をこちらの記事でおこなっています:
フランスのおしゃれな楽器用ケースメーカー「BAM」
BAM(バム)はフランスのおしゃれな楽器用ケースメーカーです。
手がけているのはギターだけではなく、弦楽器や管楽器などかなり多種多様な製品を揃えています。
また、日本では比較的高価なケースしか販売されていませんが、安価なものも扱っており、手広くケースを扱っているメーカーです。
クラシックギター用の高級ライン「ハイテック(HIGH-TECH)」シリーズ
先述の通り、実はBAMは安いケースから高いケースまでさまざまなケースを販売しており、クラシックギターも例外ではありません。
日本で販売されているのは、
- ハイテック(HIGHTECH)
- クラシック(CLASSIC)
- パフォーマンス(PERFORMANCE)
の3種類ですが、特に有名なのがハイテックシリーズでしょう。
BAMも含めさまざまなクラシックギターケースをこちらの記事で比較、紹介しています:
3層構造で軽くて丈夫
ハイテックシリーズの特徴は、外殻の3層構造にあります。
素材としては外側から、
- ABS樹脂
- エアレックスフォーム(ポリウレタン)
- PETG樹脂
の3種類です。
重要なのは真ん中に挟まっているポリウレタン層の存在です。
このポリウレタン層によって温度と湿度を遮断し、温度変化や湿度変化から楽器を守ってくれます。
また、エアレックスフォームは飛行機や船舶にも使われるほど衝撃吸収性能が高いため、外側のABS樹脂とあわせ、衝撃にも強そうです。
おしゃれなクラシックギター用ハードケースとしてはほかにアランフェスケースがありますが、こちらはこのような層がありません。
価格はアランフェスケースが39,600円(グラスファイバー版)、BAMハイテックケースが110,000円と大きな差がありますが、こんなところに違いがあるのでしょう。
デザインの選択肢が豊富
BAMハイテックシリーズのもう1つの特徴として、デザインの選択肢が豊富という点が挙げられます。
現在日本で販売されているものだけで10種類です。
しかも、単に色違いというだけでなく、使っている素材が異なるものもあるなど、デザインだけでなく質感にもこだわっています。
たとえば外装にエンボス加工を施したものがあります:
さらには外装がABS樹脂ではなくフランネル生地になっているものまで:
こんな派手な見た目のものもあります:
もちろんABS樹脂も単に色を塗っただけでなく、カーボン調のものや金属調のものなど、変化に富んでいて選ぶ楽しみにあふれているといえるでしょう。
BAM ハイテックのカーボンブラック(8002XLC)を購入したのでレビュー
そんなBAMハイテックシリーズのなかから、カーボンブラック(型番:8002XLC)を購入したのでレビューしたいと思います。
スーパーライトケースからの買い換え
私はこれまでセミハードケースのスーパーライトケースを使ってきました。
スーパーライトケースは素晴らしいケースなのですが、いくつか不満点があります。
そのなかで買い換えのきっかけになったのが満員電車での不安です。
最近満員電車の中にギターを持ち込む機会があったのですが、電車の発進/停車で人が揺れるとギターに寄りかかられることがありました。
そのとき、もし急停止などされて人が倒れ、ギターケースの上に乗られたら終わりだなと感じ、買い換えを決意した次第です。
せっかくいいギターを使っていることもあり、しっかりと守ってあげたいと思いBAMケースを購入しました。
スーパーライトケースとの比較についてはまた別の記事でご紹介したいと思います。
スーパーライトケースとの比較はこちらの記事で行っています:
所有欲を満たしてくれるデザイン
BAMケース最大の特徴は、やはりそのデザインです。
かつてこんなに優美な形をしたギターケースがあったでしょうか?
昔アランフェスギターケースが登場したときはそのデザインに衝撃を受けましたが、BAMケースはそれ以上です。
外観だけでなく、フタを開けたときのデザインも素晴らしいと感じます:
ギターの形に添った無駄のないデザインであり、ギターがより美しく感じられ、1ランク上のギターに買い換えたかのようです。
多数の追加クッションつきでショートスケールや小さいボディのギターにも対応
BAMケースのうれしいところは、さまざまな形状のギターに対応できるよう多数の追加クッションがついている点です。
私が使っているハウザーIII世は645mmのショートスケールかつトーレスタイプのボディのため、スーパーライトケースなどの一般的なケースの場合隙間が大きすぎてギターがケース内で動いてしまいます。
このため単体で売られている隙間を埋めるクッションを使っていたのですが、BAMケースの場合はこのクッションが付属しており、ケース内に取り付け可能です:
私のハウザーIII世の場合、上の写真のように6カ所取り付けてピッタリでした。
6カ所取り付けたにもかかわらず、まだ8個もクッションが残っており、クッションを重ねて使えばかなり多様な形状のギターに対応できそうです。
ところで、長方形のものとかまぼこ形のものが付属しているのですが、どう使い分けてよいのかわかりません…。
ケースが開けやすく閉めやすい
ギターを出したりしまったりするのが面倒だと感じたことはないでしょうか?
たとえばパチン錠の数が多かったり、ロックの解除や施錠が面倒だったりすると、ギターを出すのがおっくうになってしまいます。
BAMケースの場合、まず、なんとロックが全部で3つしかありません。このためギターを弾こうと思ったらすぐに出せますし、しまうときも楽々です。
しかも、開け閉めはタブを上げ下げするだけです。
文章で書くとよくわからないと思うので、下の動画をご覧ください:
一般的なパチン錠の場合、タブの操作だけでなくロックを上のフタに引っかけたり外したりしなくてはなりませんが、BAMケースの場合はこの動画のようにその必要がなく、感動的に楽です。
ハードケースにしては軽い
スーパーライトケースからの買い換えで一番不安だったのが重さです。
スーパーライトケースは2.1kgしかないのに対し、BAMケースは2.8kgもあります。0.7kgというとギターの半分くらいの重さです
実際に使ってみた感想としては、やはり背負ったときの軽さはスーパーライトケースの方が上です。
ただ、カーボン製でないハードケースの中ではBAMケースは軽いですし、ストラップが優れているのか、ケースの重さの差ほど重いとは感じませんでした。
もちろん不満点もある
個人的にはBAMケースを気に入りましたが、重さ以外にも不満点がないわけではありません。
側面の緩衝材が薄い
1つ目が追加のクッションを使わない場合の側面の緩衝材の薄さ。
下の写真のように厚みが薄く、かつ触った感じもペラペラです:
スーパーライトケースも緩衝材が薄かったのですが、こちらはその外が柔らかい発泡スチロールなので許容できます。
しかしながら、BAMケースの場合は緩衝材の外がPETG樹脂なのでギターがケース内で暴れたときに衝撃が大きそうです。
ケースに対してギターが小さい場合、しっかりと追加のクッションを貼った方がよいでしょう。
ちなみに上下に関してはわりとしっかりとしたクッションが外周部についています。
そもそもギターの側面部は強いのでそれほど厚みのある緩衝材は必要ない、という判断なのでしょうか。
ロックの表面が処理が加水分解してベタベタに
2つ目はロック表面のコーティング。
機能的には素晴らしいBAMケースのロックですが、しばらく使っているとベタベタになってきて、そのうちこんな感じの見た目になります:
これはおそらくロックの表面がウレタンか何かでコーティングされていて、それが水分を吸って加水分解するためだと思われます。
動きが渋くなるわけではないので機能的には問題ないのですが、せっかくの素晴らしいデザインが台無しです。
触ったときに柔らかな質感を出すためなのでしょうが、時間が経つとこうなってしまうのは残念です。
ちなみにベタベタは重曹などで取り除けますが、当然ウレタンコーティングが取れます。
外装のABS樹脂が傷つきやすい
3つ目は外装が傷つきやすい点。
BAMハイテックシリーズの外装はABS樹脂であり、私が購入したカーボンブラックモデルもカーボン調の塗装(印刷?)なだけで同じくABS樹脂製です。
ときどきBAMハイテックシリーズを「カーボン製」と書いているショップがありますが、間違っていますのでご注意ください。
樹脂は柔らかく傷つきやすいものであり、BAMハイテックシリーズも例外ではありません。
特に気になるのがケースを背負うためのストラップ取り付け部周辺:
ストラップが外れないよう金属製のカラビナで取り付けるのですが、このカラビナが当たるところが傷だらけになります。
ちなみに以前のBAMケースは金属製のカラビナではなくプラスチック製の取り付け部でした。傷よりも取れにくさを選んだのでしょうか。
傷をできるだけつけたくない方は、「フーディーカバー」という専用のカバーを使うとよいでしょう:
収納が少ない
4つめは収納の少なさ。
スーパーライトケースには楽譜が入るほど大きなポケットがありましたが、BAMケースにはネックを支える目的を兼ねた取り外しできるポケットしかありません:
上の写真の通りポケットにしては大きいものの、楽譜などの持ち運びには別のかばんなどが必要になるでしょう。
この点についてはBAMケースに取り付けられるバックパックである「A+ バックパック」を購入して解決したので、別記事でご紹介しています:
値段が高い
最後は値段。
BAMケースの現在の定価は、モデルにもよって変わりますが、11万円からとなっています。
以前は8万円くらいだったように思うのですが、値上がりしました。
デザインや機能を考えれば妥当なのかもしれませんが、安いギターが買えるくらいの値段であることは確かです。
価格にさえ納得できれば満足度の高いギターケース
BAMハイテックシリーズのクラシックギターケースを使ってみて、総じて満足度の高いギターケースだと感じました。
何よりそのデザインはケースを外から見てもフタを開けても美しく、ギターの持つ魅力をより引き出してくれると感じます。
機能的にも衝撃や温度、湿度変化に強く、ロックも解除しやすく、決して見た目だけのケースではありません。
一番の問題は価格でしょうか。定価11万円というのは、たとえその価値があったとしても、気軽に出せる額ではないと思います。
ただ、間違いなく日々の練習や持ち出しにおける満足度は上がりますし、そう買い換えるものでもなくギターが変わっても使えますので、決して無駄にはなりません。
ギターライフの充実のためにもぜひ検討してみてください。