大事な楽器を保管したり持ち歩いたりするのに必須アイテムのケース。こだわりのクラシックギター用のハードケースの2大巨頭といえば「BAMケース」とカーボン製の「アランフェスギターケース」です。これら2つを実際に手に入れましたので、比較しながらどちらがおすすめかご紹介したいと思います。
結論：保護性能重視ならBAMケース、持ち運び重視ならカーボン製のアランフェスギターケース
先に結論を書いておくと、保護性能を重視するならBAMケース、持ち運び重視ならカーボン製のアランフェスギターケースがおすすめです。
この2つのケース、値段が同じくらいでかつハードケースという特徴はあるのですが、設計思想が全然違っていて同列に並べるべきものではないと感じました。
なお、この記事で紹介しているBAMケースは「ハイテック」と呼ばれるシリーズ、アランフェスギターケースはカーボン製の「カムフラージュ」あるいは「ナチュラルカーボン」です。
本サイトではそれぞれのケースの個別レビューを掲載していますので、こちらも参考にしてください：
BAMケースとカーボン製アランフェスギターケースを徹底比較！
それでは実際の比較に移ります。
超軽量かつ小型のカーボン製アランフェスギターケース、ハードケースとしては軽い部類のBAMケース
まず、持ち運び性の比較をおこないます。
重さについてはカーボン製アランフェスギターケースのほうが0.5kg軽いです：
| 重さ | |
| カーボン製アランフェスギターケース | 2.3kg |
| BAMケース | 2.8kg |
| （参考）グラスファイバー製アランフェスギターケース | 3.2kg |
この違い、たった0.5kgですが実際に持ってみたときの印象はかなり違います。
できるだけ軽い方がよいという方は、0.5kgを妥協せずにカーボン製アランフェスギターケースを選ぶとよいでしょう。
BAMケースも決して重いわけではなく、ハードケースのなかでは軽いです。たとえばグラスファイバー製アランフェスギターケースは3.2kgありますし、木製のハードケースだと4kg超えが当たり前です。
BAMケースの重さで十分、というのも1つの答えだと思います。
カーボン製アランフェスギターケースは薄くてバスや電車に持ち込みやすい
カーボン製アランフェスギターケースにはBAMケースよりも厚みが薄いという特徴があります。
下の写真の左がカーボン製アランフェスギターケース、右がBAMケースです。カーボン製アランフェスギターケースはゴム足の高さが高いにもかかわらず、高さがBAMケースと同等かあるいはむしろ低いのがわかるかと思います：
この薄さが威力を発揮するのがバスや電車といった公共交通機関。狭い座席や満員電車の中でも邪魔になりづらく、軽さも相まって公共交通機関での持ち運びに適したケースといえるでしょう。
また、硬い外殻を持たないセミハードケースに比べると、丈夫なカーボン製外殻なので満員電車などでの圧迫にも強いです。
楽器の保護性能はBAMケースの方が上
一方、楽器の保護性能はBAMケースに軍配が上がります。
その最たるところが蓋の厚み。カーボン製アランフェスギターケースはカーボン分の厚みしかありません：
一方、BAMケースの外殻は3層構造になっており、厚みが全然違います：
厚ければよいというわけではありませんが、カーボン製アランフェスギターケースの蓋は手でひねるとたわむのも事実。硬さでいえばBAMケースの勝ちです。
また、使われているクッションもBAMケースの方がしっかりしていると感じました。
カーボン製アランフェスギターケースはそもそも蓋側のクッションがほとんどないなど、クッションの量が少ないです。
また、ギターを収納する側のクッションは厚みはあるものの、触ったときの感触が安っぽく、BAMケースの方が密度があってしっかりとしていると感じました。
クッションの密度を上げると重くなるので、カーボン製アランフェスギターケースはここでも軽さに重きを置いているのでしょうね。
温度や湿度の変化にも強いBAMケース
ギターが故障する原因は物理的な衝撃のほかに、温度や湿度の変化があります。
ケースの目的の1つに急激な温度や湿度の変化を防ぐというものがありますが、この点でもBAMケースの方が強いです。
上でも紹介した写真の通り、カーボン製アランフェスギターケースは蓋にカーボン分の厚みしかありません：
ケースを近くで見るとわかるのですが、カーボンは繊維状の素材を織り込んで作られています。このため、カーボン素材そのものに温度や湿度の変化を防ぐ効果は期待できません。カーボン繊維を固めるための接着剤にもたいした効果は期待できないでしょう。
一方、BAMケースの蓋の厚みは単に分厚いABS樹脂を使っているわけではなく、エアレックスフォームと呼ばれる保温・保湿性に優れた素材が内部に入っています：
このためエアコンの効いた部屋に外から入るなどの急激な温度や湿度の変化が起きても、楽器が入っている空間は緩やかな変化になり、ダメージを抑えられるのです。
ギターの出し入れはBAMケースがしやすいが、アランフェスギターケースの方が安全
ギターの出し入れの観点ではBAMケースの方が有利です。ケースをロックする金具の開閉がワンタッチであり、手軽に開閉できます（このロックは最新型ではさらに開閉しやすくなっているようです）。
また、金具が3カ所しかないため、開けるのも閉めるのも本当に楽です。
一方、カーボン製アランフェスギターケースは開けるときはワンタッチですが、閉めるときは指で金具を引っかける必要があります：
また、金具が5カ所もあるため、BAMケースに慣れていると面倒です。
ただ、BAMケースの場合は3カ所しか無く、かつすべてが同じ側面にあるため、不用意にケースが開いてしまう心配があります。鍵があるので持ち運び時はロックした方がよいかもしれません。
一方、カーボン製アランフェスギターケースは持ち手と反対側にもロックがあるため、安心感はこちらの方が高いです。ただ、鍵はないのでロックすることはできません。
何を重視するかを明確にしてケースを選びたい
冒頭でも書きましたが、この2つのケースは設計思想が違いすぎます。
何を重視するかで自ずと選ぶべきケースが絞られるでしょう。
たとえば、あまり弾かないギターはBAMケースの方が安心です。保温・保湿性が高く、しばらく放っておいてもしっかりと楽器を守ってくれるでしょう。
一方、公共交通機関での持ち運びが多い方はカーボン製アランフェスギターケースの方がよいかもしれません。軽くて薄いので電車やバスに持ち込むストレスを減らせます。
車での移動が多いならそれほど軽さを求めなくてもよいので、BAMケースがよいかもしれません。
ギターを複数台持っている方は両方のケースを持っておき、場面場面にあわせて使い分けると便利でしょう。
などなど、ご自身がケースに何を期待するかによって選んでみてください。
