クラシックギターを弾くときに足台を使うと腰痛などの原因となるため、代わりとなる支持具を使う人が多くいます。しかしながらその多くは吸盤や挟み込むことでギターに固定するため、セラックなどの弱い塗装の場合塗装を痛めるかもしれません。SageWork Guitar Supportは磁石を使って固定することにより塗装への影響を最小限に抑えることができるギター用支持具です。購入して試したのでレビューしたいと思います。
クラシックギターの支持具や足台については以下の記事でまとめています:
磁石を使ってギターに固定する支持具「SageWork Guitar Support」
SageWork Guitar Supportは、磁石を使ってギターに固定する支持具です。昔はBarnett Guitar Supportと呼ばれていました。
実際にギターに固定するとこんな見た目になります:
何もないのにギターに固定されているように見えますが、実はギター内部に磁石を仕込んでおり、SageWork Guitar Support本体の磁石と吸着することで、磁力によりギターに固定しているのです。
よくあるギター用支持具は吸盤での吸着や万力のように挟み込むことによってギターに固定しますが、これらの方法はギターの塗装への影響が避けられません。
特にセラックやラッカーといった繊細な塗装の場合、白濁などの影響が起こりやすいです。
ギターの塗装に関しては以下の塗装で詳しく紹介しています:
これに対してSageWork Guitar Supportは磁力で固定するため、塗装面に影響が出にくいといえます。
SageWork Guitar Supportのギターへの取り付け
磁力でギターに取り付けるためには、ギターの中に磁石を仕込まなくてはなりません。普通の支持具は特に準備がいらないので、SageWork Guitar Supportは使い始めるまでに一手間必要と言えます。
実際にギターに取り付けた様子を感想も交えて紹介しましょう。
外箱と梱包
外箱はこんな感じです:
見た目は高級感がありますが、ペラペラの箱なので持った感じはそれほどでもありません。
中には本体、磁石、説明書、固定用の両面テープ、そして注意書きが入っていました。
木材を使ったおしゃれなAtlasと、質実剛健なUmbraという2つのモデルがあるのですが、私は安い方のUmbraを買いました。
ちなみに価格はAtlasが150ドル(約19,500円)、Umbraが89ドル(約11,500円)です。
注意書きには「とんでもなく強力な磁石なので指を挟むと非常に痛いから気をつけて」と書いてあります。
ネオジウムを使った磁石なのでかなり強力なのでしょう。
仮取り付け
SageWork Guitar Supportをギターに取り付けるには、まず仮取り付けという形でギター内部に磁石を取り付ける位置を決めます。
下の写真の上にあるのが磁石です。これをギターを構えたときに下部にくる側面板の裏に取り付ける位置を決めます。
どうやってやるかというと、シンプルにホールから手を突っ込みます。
そして、外側からSageWork Guitar Support本体を近づけ、うまく取り付けられる位置を探します。
「うまく取り付けられる位置」とは、あまり曲面が強くない場所です。
…と言葉で書くのは簡単ですが、この作業が実につらかったです。
まず、ギターのホールは小さいので手が入れづらく、手が届く位置が限られます。
無理に奥の方に入れようとすると磁石を落としてしまい、大変なことになります。実際私は落としてしまい、大変なことになりました…。
また、ギターの側面板の裏には木が配置されていますが、これのせいで磁石を貼り付けられないところが多いのも辛いです。
私のギターの場合、以下の写真のように木の棒がたくさんあり、そのぎりぎりのところにつけざるを得ませんでした。
説明書には以下のような図が書いてありましたが、こんなことを考えている余裕はありません。つけられるところにつける、という感じです。
磁石の位置が決まったら、付属の付箋でその位置を記録します。
両面テープで磁石を固定
磁石の位置が決まったら、磁石を付属の両面テープでギター内部に固定します。この両面テープにはタブがついており、これをゆっくり引っ張ることで跡を残すことなく剥がすことが可能です。
このとき、外側の付箋をつけた位置に本体を置いておくことで間違わずに貼り付けられます。
所要時間は私の場合30分ほどでした。もう少し効率良くやれば短縮できると思います。
無事使用可能な状態になりました:
SageWork Guitar Supportの感想
それでは、実際に使ったみて感想を紹介します。
磁石は非常に強力で取れる心配はない
磁石というと演奏中にとれる心配があるのではないかと思うかもしれませんが、SageWork Guitar Supportに使われている磁石はかなり強力で演奏中に外れる心配はありません。
本体側を持ってギターを持ち上げることができました:
これくらいの強さがあれば十分でしょう。
外すのも簡単
強力な磁石ではありますが、外すのは簡単です。本体を手前や奥に傾けることで、梃子の原理でそれほど力を入れなくても外れます。
取れなくて困るということもなく、絶妙な強さと言えます。
体重をかけたときにしっかりしている
SageWork Guitar Supportを実際に演奏に使って感じたのは、体重をかけた時の安定感が高いということです。
吸盤を使った支持具の場合、本体がいくら丈夫でも吸盤の部分は柔らかいため、どうしても少したわみのようなものを感じます。ギターリフトの万力版も、ギターを固定する部分はいいのですが、パイプを継ぐ部分にどうしても遊びが生まれてしまいます。
SageWork Guitar Supportの場合は磁力の吸着かつ本体がしっかりしているため、足台を使っている時のような安定感で演奏が可能です。
これは今まで使ってきたギター支持具にない感覚でした。
ギターの振動が体にしっかり伝わる
しっかりとギターに固定されることで、ギターの振動が体に伝わりやすいというメリットもあります。
吸盤を使ったものだとどうしてもそこで振動が抑えられがちですが、SageWork Guitar Supportの場合はそんなことはありません。
足台を使っているような感覚でギターの振動が体に伝わり、楽しく弾けます。
調整幅が大きくカスタマイズが簡単
SageWork Guitar Supportには稼働部が多くあり、それによって自分に合った角度にギターを調整できます。
二つの腕の高さはもちろん変えれられます:
長い方の腕は角度も変わります:
ギターと接する部分もこの通り:
また、私が一番気に入ったのは、ギターを傾ける角度を変えられることです:
結構大きく角度が変えられるので、いろいろな姿勢で安定して演奏することができるでしょう。
ギターに接する部分がコルクで優しい
ギターに接する部分はコルクのようなゴムのような柔らかい素材でできており、ギターを傷つけません。
吸盤のように塗装にダメージを与えることもないでしょう。
ただ、磁石が内蔵されていることから、小さな金属片がここにつくことには注意が必要です。演奏前には何かがくっついていないか確認した方がいいと思います。
小型軽量でケースの中に収納できる
SageWork Guitar Supportは非常に小型で、かつ軽量なのでギターケースの中のアクセサリ入れに入れることができます。
ちなみに重さは220gと、スマホより少し重い程度です。
取り付ける時は慎重に
使っていて気になったのは、ギターへの取り付けの際に気をつけないとガチっ!とすごい音がしてギターにSageWork Guitar Supportがくっつくことがあるという点です。
あまりにも磁力が強いため、普通に近づけると側面板に本体が衝突することになります。
指を間に挟むなどして慎重に取り付けた方がいいでしょう。
準備は面倒だけど優れたギター支持具
SageWork Guitar Supportは非常に優れたギター支持具だと感じました。
塗装への優しさはもちろん、ギターにしっかり固定されていることで演奏時の安定感が高く、振動を殺すことなく体に伝えてくれます。
小型軽量で持ち運びやすいのも素晴らしいです。
一方、唯一といって良い欠点が、取り付けのための準備の面倒さでしょう。ホールの中に手を突っ込んで悪戦苦闘しないといけないのはちょっと面倒です。
しかしながら、準備は1回やれば良いだけなので、最初だけであり、頑張った先には喜びが待っています。
もう1つ、日本での問題は日本国内で販売店がないという点でしょう。以前はギターショップカリスが取り扱っていたのですが、現在では閉店してしまっており、公式サイトかStrings by Mailあたりから海外通販しなくてはなりません。
その価値がある支持具だと思いますので、現在使っている足台や支持具に不満がある方は是非挑戦してみてください。