クラシックギター弾きにとって爪の悩みは尽きないものですが、特に爪が弦に引っかかったり、爪によって雑音が出るとストレスがたまるものです。私も爪の形がよくないので散々苦労してきました。そんな時に試してほしい&確認してほしい爪の形と長さのポイントをまとめました。
ギタリストの爪に関する記事は以下のまとめを参照ください:
一般的な爪の長さと形の決め方
一般には以下のように長さと形を決めるのがいいとされています。口述しますが、これは理想的ないい形の爪の持ち主用です。とはいえ、まずはこのやり方を押さえておくことが重要です。
最初に指先の肉に弦が触れる
まず、弦を指がとらえるときには爪ではなく指先の肉に弦が触れるようにします。
指先の肉と爪が同時という説もありますが、いずれにせよ、爪が直接弦に触れるのはだめです。
弦は振動によって音を出すものであり、振動している弦に直接硬い爪が触れると「ビシャッ」といった感じのノイズが出ます。試しに、1弦を弾いた後に爪で消音するとこのノイズがわかるかと思います。
まずは肉でとらえることにより振動を抑えることが重要であり、このために必然的にこの部分の爪は短くなります。
また、この時弦をとらえるのは指先の親指側(手の甲側から爪を見た時に左側)が良いとされています。
弦が指先の肉から爪にスムーズに移行する
次に、肉でとらえた弦を爪にスムーズに移行します。肉のみ→肉と爪が両方当たっている→爪のみというように移行します。
この時、「肉と爪が両方当たっている」がないと、爪が弦に強く当たってしまい雑音がでます。このため、以下の写真のように弦が最初に触れる個所から右にかけて徐々に爪が長くなるような形にします。
爪の上をすべるように弦が当たる場所を変える
指先の肉と爪が両方当たっている状態から爪のみになり、さらに爪からうまくリリースするためにはだんだんと爪の長さを長くする必要があります。
短すぎると弦が急激に跳ねすぎ、雑音の原因になります。このため、弦が最初に当たる個所から右側にかけて徐々に爪が長くなるようにします。
イメージ的にはこの間に弓の弦を引き絞る感じです。
最後は一点でリリースする
そして、最終的には弦が爪を離れるわけですが、この時弦が爪と触れている長さは徐々に短くなり最終的には小さな一点で離れます。
この離れる点は爪の最も長くなっている場所になります。
爪の長さを長くすると、爪の角度が大きくなり、弦と触れる長さが長くなります。こうなると太い柔らかい音が出るといわれています。
きれいでまっすぐな形の爪の人以外はこんなところに注意が必要
以上が一般的な爪の決め方なのですが、これは理想的なまっすぐで平らな爪の持ち主用の決め方です。
私も含め、そんなにきれいでない爪の持ち主も多くいると思いますので、そういう方は以下の点に注意が必要です。
爪の端が肉に巻き込んでいる人 → リリースの場所を調整する
私は中指がこれなのですが、爪の端が折れて肉に食い込んだような形になっています。絵にするとこんな感じの形です。両端が折れています:
こうなると、リリースの時に爪が弧の折れた部分に引っかかってしまい、雑音の原因にもなります。
このため、あえてこの部分は削り落としています。
左側が短く、右に行くにしたがって長くなっていますが、途中でまた短くなっています。右端に行き過ぎると折れた部分に当たるので、その前にリリースされるようにあえて削り落としています。
爪が折れたような形になっている or へこみがある 最初に触れる位置とリリースの位置を調整する
私は薬指と中指がこれなのですが、爪がきれいな弧を描いておらず、途中で折れたような場所やへこんだような場所があります。
こちらが薬指です。画像の右上あたりで爪がかくんと折れて急角度になっているのがわかるかと思います。
こちらは中指です。中指ほどではないのでわかりづらいですが、真ん中付近で2か所折れています。
この場合も両端が肉に食い込んでいる場合と同様、折れた場所が爪に当たると引っ掛かりや雑音の原因になります。
私の場合、薬指は困った場所にあるのでセオリー通りの形をやめ、爪の先端付近から右下に向けてリリースするような形にしました。
この方法は特殊というわけではなく、スコット・テナントのギター教則本でも紹介されているやり方です。
また、中指は2か所折れていますが、折れ方が急でない方はあきらめ、もう一方を避けるような形にしています。
これによって大きく折れている箇所を弦が通過することがなくなり、弦に引っかかることや雑音がなくなりました。
爪が大きく弧を描いている → 右端を削り落とす
爪が大きく弧を描いている人は、爪の2点に弦が当たらないように注意が必要です。
再び私の薬指ですが、大きく弧を描いていることがわかるかと思います。弦は常に爪の一か所と当たらなくてはなりませんが、このような爪だと弦が爪の上をすべるときに途中でもう一方の弧の端に当たることがあります。
こうなると雑音の原因になりますので、大きな弧を描いている人はあえて弦が当たらない側の爪を短く削り落としておいた方がいいです。
鷲爪 → 爪を長くしすぎない
鷲爪とは、爪が伸びるに従いまっすぐ伸びるのではなくだんだんと下方向に曲がっていく爪のことです。こんな感じの形になります:
鷲爪だと弦をリリースするときに引っかかってしまい、雑音の原因にもなります。
程度にもよりますが、鷲爪は爪を長くするほど曲がっていくため、短めの爪にするのが重要です。
私も鷲爪気味なので爪を長く伸ばすのはあきらめ、短めにしています。
爪の長さや形以外に磨き方や保湿も重要
爪の長さや形も重要ですが、削るための道具やその後の磨き方、保湿も重要です。
削る道具は適当ではなく良いものを使いましょう。たとえば、以下の爪やすりは爪の細胞を壊さないところをうりにしています。こういった道具を使うと爪をいい状態に保ったまま形を整えることができます:
磨き方に関しては特に爪の裏側を磨くことが重要です。爪が弦と当たるのは爪の裏側であって先端ではありません。先端を頑張って磨くのではなく、裏側を磨きましょう。
また、指先が乾燥していると表面がガサガサになり、やすりのような状態になります。こうなると弦が指先に触れた時にノイズや引っかかりの原因になります。しっかりと保湿するようにしましょう。
時間とともに変わる最適な長さと形、爪の形や長さは常に探求し続けるもの
さらに厄介なことに最適な長さと形は時間とともに変わります。
これにはいくつかの要素があります:
- 加齢: 年を取ると爪の柔軟性が失われ硬くなっていく。また、指の力や瞬発力が衰えていく。
- 奏法の変化: 上達(あるいは劣化)ともに指の角度や強さが変わっていく。
- ギターの変化: ギターを買い替えたり、あるいはギターが時間とともに変化することによって適した弾き方が変わる。
これらを考えると、最適な爪の長さや形はずっと追い求めていかなくてはいけないもののように思います。
だからといって悲観する必要はなく、むしろこれもクラシックギターの面白さの一つだと思っていろいろ試すのがいいと思います。
たとえばヴァイオリンなら弓を買い替えるのにかなりのお金が必要ですが、爪は削りすぎても時間とともにまた伸びます。セオリーとは違う方法をいろいろ試すこともぜひやってみてください。