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スペインの弦メーカー、ノブロックから新たに登場した弦を試しました。「DUO ASSAD」と名付けられたこのモデルは、ノブロックのオーナーがアサド兄弟の音楽性の要求に応えて開発された弦です。
以下の記事で本ブログの弦の評価/レビュー/感想/情報記事をまとめています:
アサド兄弟の音楽性に適した「アサド兄弟モデル」
ノブロックのアサド兄弟モデルは、ノブロックのオーナーであるボーデュ氏がアサド兄弟と良好な関係を築いていたことから実現しました。
アサド兄弟が求める音楽性に応えられる弦として開発され、アサド兄弟のお墨付きをもらったそうです。
ノブロックは以前にもレオ・ブローウェルの80歳の誕生日を記念したモデルを開発しました。
これからもこのようなギタリストシリーズを続けていくのでしょうか?
高音弦はバイオナイロン、低音弦はトリプルシルバー
開発の方向性としては、自然な音で右手でスムーズに弾ける弦を目指しています。
このために高音弦は新たにエリサカスで導入されたバイオナイロンです。
ただ、同じバイオナイロンではないようで、「DA BIO Nylon」と名付けられています。
音としては自然かつ純粋、だそうです。
低音弦には「DA Triple Silver」を採用しました。この弦は長寿命で、かつしっかりとした響きとピュアな音が特徴です。
通常のノブロック弦には「ダブルシルバー」が使われますが、これとトリプルシルバーの違いを聞いてみたところ、銀層の厚みによるものなのだとか。
通常のダブルシルバーですら他社の低音弦よりも品質が高いそうなのですが、アサド兄弟モデルはそれよりもさらに上を目指し、ノブロックの純銀モデルとの中間を目指しています。
ノブロックの製品についてはこちらの記事を参照ください:
高級感のあるパッケージ
アサド兄弟モデルのパッケージはこんな感じです。
アサド兄弟の姿が描かれた厚い紙パッケージに金色で文字が入っており、高級感があります。
裏には弦の仕様が書かれています。張力の合計は34.5kgと書かれていますが、後述の通り実際の張りはもっと強いと感じました。
開封するとさらに詳細が書かれています。
面白いのが、「巻き弦の方向を変えたことで右手のノイズが減った」と書かれている点です。そんなコロンブスの卵的な工夫がされているのですね。
というか、他者の弦も含め、クラシックギターの巻き弦はすべて今までは同じ方向に巻かれていたのでしょうか?いろいろと気になるところがあります。
弦はすべて1まとめにされて1つの気密パッケージに入っています。
2弦と5弦に赤色がついているため、弦の判別は問題ありません。が、どこかにそのことを書いておいて欲しい…。
全体的に豪華な音
早速張ってみた音の感想ですが、全体的に豪華な音がすると感じました。
「自然かつ純粋な音」を目指したとのことですが、確かにプラスチックぽさや金属っぽさを感じさせず、おおらかな音がします。
しかしながら、決して小さくまとまった音ではなく、スケールの大きい音がするのが特徴です。
エリサカスの時には気になった高音弦のハイポジションが鳴りにくいという問題はこのアサド兄弟モデルでは感じません。やはり同じバイオナイロンが原料でも違う弦が使われているのでしょうか?
低音弦は巻き弦がしっかり鳴って特に豪華に聞こえます。芯線が鳴っているというより、巻き弦が鳴っているという印象です。
甘い音よりは、スケールの大きい豪華な音を求める人におすすめといえるかもしれません。
張りは強め、右手のノイズがむしろ大きい?
一方、弦の張りは強めだと感じました。
合計張力が34.5kgとのことですが、明らかに数字よりも強く感じ、ミディアムテンションからハイテンションくらいの印象です。
そもそもこの製品は「ハイテンション」と名乗っているので正しいともいえますが…。
また、「巻き弦の方向を変えた」ことによるノイズ低減効果ですが、私の場合はむしろ親指で弾いたときのノイズが増えました。
考えてみると、クラシックギターにおいて右手親指の使い方はさまざまであり、アサド兄弟などの人によってはノイズが減る、が正しいのかもしれません。
もう1つ気になったのは、3弦のノイズです。下の動画のように、親指の肉部分で触れたときに「キーキー」という音が出ます。
このノイズ、以前アクイーラのシュガーを試したときにも同じ音がしました。
シュガーはサトウキビから作られた弦ですが、バイオナイロンなどの植物系の原料で作られた弦はこのような音がしてしまうものなのでしょうか?
日本からの入手性は悪いが良い弦
ノブロックのアサド兄弟モデルはスケールの大きい豪華な音がする良い弦でした。
張りの強さや右手のノイズは感じるものの、大きく鳴ってくれるので弾いていて楽しい弦です。
ただ、日本からの入手性は良好とはいえません。
日本のショップは軒並み取り扱っておらず、Strings by Mailすら今のところ取り扱いがありません。
直接ノブロックに注文しなくてはいけないのはちょっと面倒です。
また、価格も安くなく、ノブロック公式で19.83ユーロ(約2,500円)となっています。
寿命が長いとされているのでこれが本当ならそれほど高くないのかもしれませんが…。
アサド兄弟ファンはもちろん、スケールの大きい豪華な音を求めている人は試してみてはいかがでしょうか。