弦の評価: フィガロ ブルー(低音弦) + クリア(高音弦) (Figaro Blue + Clear)

4.5
フィガロ弦の青(低音弦)

おそらく今現在最も新しいクラシックギター用弦メーカーの弦を初レビューです。このご時世の中で日本国内でこだわって作られた弦です。弾いていて楽しい、ギターの魅力を存分に味わえる弦でした。

神戸で作られるMade in Japanの弦メーカー

フィガロはおそらく唯一の国産クラシックギター用弦メーカーです。フィガロについては以下の記事を参照ください:

フィガロは当初は低音弦のみ(と巻弦の3弦)のみを販売していましたが、つい先日高音弦も発売され、はれてギターのすべてのすべての弦をフィガロで統一できるようになりました

フィガロが理想の音を追求して作られたブルー(青)

フィガロ弦の青(低音弦)

低音弦として張ったのがブルーの「4,5,6弦推奨セット」というものです。

フィガロには全部で3種類の低音弦がありますが、その中でフィガロとして「自分たちが求める音」を追求して作られたのがブルーなのだそうです。

テンションは4,5,6弦それぞれに対してロー、ミディアム、ハイが用意されていますが、この推奨セットは

  • 4弦: ロー
  • 5弦: ロー
  • 6弦: ミディアム

となっています。

芯線に松脂でコーティング

このフィガロの低音弦、他に見られない特徴として、芯線のナイロンを松脂でコーティングしているそうです。

これにより水分に強くなり長持ちするようになっているとか。

他社の弦でも巻線にコーティングしているものはあります(ダダリオのEXP45XTC45)。しかしながら、芯線にコーティングをしているというのは少なくとも私は聞いたことがありません。

プロのギタリストである柴田杏里氏の感想として、

スタンダードな弦の3倍の時間張替えの必要がないと感じられる。

アウラのHPより

というものがありますが、このコーティングもその一因かもしれません。

巻線はリン青銅(フォスファーブロンズ)

巻線に使われているのは通常の銅ではなくリン青銅だそうです。

リン青銅はフォスファーブロンズともいわれ、アコギの弦ではよく使われます。クラシックギターの弦でフォスファーブロンズを使っているとうたっているものはあまり見たことがないので変わっているかもしれません。

リン青銅は銅よりも硬いのでフレットによる摩耗が抑えられ、寿命が長くなるようです。

4弦に保護スリーブがついている

他の弦では見られない変わったところとして、4弦に保護スリーブなるものがついています。

フィガロ弦の4弦用スリーブ

これはブリッジに弦を巻き付けるときに、サドルから伸びている弦に戻した弦を巻き付ける部分を保護するためにあります。

調弦時に素材の限界近くの能力を使っています

とのことで、これがないと弦が傷んでしまうようです。

しかしながら、これが必要なのは普通のシングルホール方式のブリッジで、原理的に弦に弦を巻き付ける部分が発生しないダブルーホールやトリプルホール、ギターチップなどの留め具を使った場合は必要ないそうです(フィガロに確認済み)。

私のギターもダブルホール方式なので興味はありましたが使わずに捨てることとなりました。。。

テンションは割と低め

ローとミディアムといっているだけあり、テンションは比較的低めです。

現代ギター2018年11月号のギター弦測定のコーナーで以下のようになっていました(単位はkg):

ブルーレッドイエロー
4弦6.96.07.3
5弦5.85.96.0
6弦6.06.76.6
合計18.718.619.9

※レッドとブルーはミディアム/ミディアム/ハイの組み合わせ。

サバレスカンティーガの低音弦がノーマルで19.5 kg、プロアルテのライトが18.8 kg、ハナバッハの素パーライトが18.5 kgなのでそれなりにローテンションです。

1,2弦がナイロン、3弦がカーボンのClear

一方、高音弦は最近発売されたものです。

構成として、

  • 1,2弦: ナイロン
  • 3弦: カーボン

となっており、サバレスのクリエイションカンティーガと同じ材料の構成となっています。

テンションのバリエーションはなく、1種類のようです。

フィガロのコメントとして、

1弦は少し音が出やすいように工夫を凝らしており、
演奏時の苦労を軽減する事が期待されます。

3弦はフロロカーボン特有のキンキンした音を排し4弦から3弦の音のつながり、
3弦から2弦への音のつながりがスムーズになるよう調整いたしました。

フィガロの低音弦と合うのは勿論のこと、他社の低音弦とも相性が良い
非常に優等生タイプの弦です。

と述べられています。

テンション情報は公開されていませんが、割と低いテンションのように思います。

丁寧に作られていることを感じる低音弦

実際に張ってみました。

まず、低音弦に関しては非常に丁寧に作られていることを感じられます。

巻線が滑らか

巻線は金属線を巻いてあるのでどこかごつごつした感触が感じられますが、フィガロの弦はごつごつ感が少ないです。

かといって巻線が細いわけではなく、6弦などはしっかりした太さの巻線を使っているのにごつごつが感じづらいです。おそらく、巻線を巻くときに精度が高いのでむらが少なく、なめらかに感じられるのではないかと思います。

弦のよじれが少ない

弦は他社の弦と同じく最初は巻かれた状態で収納されています。

これを解くと大体の弦はどこかよじれていたり、まだ丸まっていたりしますが、フィガロは今までにないくらいまっすぐになりました。

これも精度の高さ故でしょうか?

芯が硬く曲がりづらい

最近はサバレスのカンティーガをはじめ、低音弦がしなやかなものが増えている気がします。

これに対してフィガロは非常に曲がりづらい弦になっています。芯線の材質のためなのか、芯線のコーティングのせいなのか、巻線のためなのかわかりませんが、最近の流行からすると逆になっている気がします。

細めだがスタンダードな高音弦

一方、高音弦は比較的スタンダードな見た目と触感でした。

ただ、クリエイションカンティーガの場合は2弦と3弦が結構違うのに対して、フィガロのClearの場合は見た目と触感の差が少ないように思います。音のつながりを重視しているとのことなので、そのために近いものになったのでしょうか。

太さは割と細目で、テンションもそれほど高くないのではないかと思います。

派手さがなくおとなしいが芯のある音の低音弦の音

張った直後ですが軽く弾いてみたので音の感想を書きたいと思います。

低音弦は派手さがなくおとなしいです。悪い言い方をすれば地味に聞こえます。しかしながら、音の芯はしっかりしており、曲を弾いた時に音楽の下支えがしっかりされ、かつ内声部の動きがしっかり聞き取れます

原因は金属的なギラギラした音(シャリ音)が少ないためだと思われます。他社の弦では結構金属的な音を前面に出すのが主流になっているように思い、ぱっと聞いた感じ派手で良い音に聞こえます。

しかしながら、金属的な音を前面に出すと、そればかりが耳について美しい音楽とならない場合があります。また、弾いていて疲れるのもこのタイプの音です。

これだけおとなしいタイプの低音弦はアクイーラ(Aquila)の弦くらいしか知りません。アクイーラよりももっと金属音より芯の音を重視しているように思います。

テンションについては確かに高くはありませんが、それほど低いようにも感じませんでした。

寿命に関しても期待できそう

低音弦の寿命は金属的な音が少なくなり音がぼやけてきたときのように思います。

このフィガロ弦は金属的な音に頼っていないので、おそらく寿命が来るのが遅いのではないでしょうか。

たとえばオーガスチンの青は寿命が短いように思いますが、あれは金属的なギラギラが特徴なのでそう感じるのではないかと。

寿命に関してはもう少し使ってから追記したいと思います。

明るくて軽く音が出る高音弦

一方、高音弦は軽く弾いて音が出るタイプの弦です。

明るい音で鳴るうえに軽く弾けるので、右手が疲れづらいように思います。

なぜかわからないですが、右手の指先の肉の部分で弦に触れた時に非常に触感が良いです。弦が指に寄り添うというか、拒絶されない感じがします。

小さい音から大きい音まで、甘い音から鋭い音まで自由自在

まず思ったのは音のコントロールがしやすいという点です。

特に小さい音を出したときの音の安定感が高いように思いました。弦によっては大きな音はでるけど小さい音を出そうとするとぼやけたり、ひょろひょろだったりします。フィガロの弦は小さい音でもしっかりした音が出るので音楽の表現がしやすいです。

もちろん大きな音もしっかり出ますし、音色のコントロールもしやすいです。

カーボン弦とは思えないくらい柔らかい音

3弦のフロロカーボンはサバレスのアリアンスと比べると全然キンキンした金属的な音がしません。本当にカーボン弦か?と思うほど柔らかいです。

オプティマのカーボン弦も柔らかかったですが、それよりも柔らかいように思います。

その分、ハイポジションになった時に音の飛び方はカーボンらしくない感じもしますが、全体としての音のまとまりとしてはフィガロの方がいいように思います。

テンションは低めに感じましたが、音はしっかり出ますので、まったく問題ありません。

4弦→3弦→2弦の音のつながりがいい

フィガロも公式に述べていますが、4弦、3弦、2弦の音のつながりが非常にいいです。

これは、4弦が金属的な音が少なく、3弦がカーボン弦にしては柔らかい音がするためと思われます。

スケールを弾いていると金属的な音が前に出る弦では低音弦から高音弦に移るときに違和感があり、3弦だけカーボンにすると3弦から2弦のところで違和感が出ます。

フィガロの場合はここのつながりが素晴らしく、まったく違和感がありません。

後日スケールを弾いているときの音をアップしたいと思います。

(追記): フィガロ弦で弾いた録音

(追記): 音階を弾いた音源をアップしました。6弦の開放弦から1弦までを弾いています。iPhoneで録音して加工は何もしていません。

また、ソルのop.6-8(セゴビア編の20の練習曲の第1番)も弾いてみました。こちらもiPhoneでとったものをそのままアップしています。

上のソルは張ってから2,3日のものですが、15日後くらいの同じ曲が以下です。毎日1~2時間くらい弾いているので普通の弦であれば結構へたっています。

些細なところだが気になるところも

良いところばかりではなくちょっと気になるところもあります。

6弦がちょっと鈍くて重いか?

これは好みにもよりますが、ちょっと6弦だけが鈍くて重いように思いました。

6弦だけミディアムになっていますが、これもローでもいいかもしれません。あるいは4,5弦もミディアムにするとか。

高音弦がちょっと短め

張っていて思ったのですが、高音弦が他社に比べてちょっと短いように思います。

私は弦飛びを防止するために高音弦は結び目を作っています。この時、あとから簡単に切れるようにちょっと長めにブリッジ側に残しています:

フィガロ弦の高音弦をブリッジにつけたところ
フィガロ弦の高音弦はちょっと短い

こうすると糸巻側の余裕が手のひらの横幅分くらいしかなく、引っ張りながら張るのがちょっと難しかったです(特に3弦)

他社はむだに高音弦を長く用意している気もしますし、短いほうがエコなのは確かですが。。。そして私がブリッジ側に長く残しすぎなのも確かですが。。。

次に張るときは気を付けます。。。

パッケージに高級感が乏しく、ごみの分別がめんどくさい

他社の弦はセットで買うと1つの袋に全部入っているか、あるいは1つ1つの弦がビニール袋に入っているだけです。

これに対してフィガロの弦は各弦が個別のビニール袋に入っているうえに、それにぴったりサイズの厚紙が入っています。

分別のためにこの厚紙を取り除くのがちょっとめんどくさかったりします。

他社だとバラ弦であっても外が紙で中がビニールだったりするので、そっちの方が捨てやすいです。

また、値段の割にちょっと高級感がないパッケージのように思います。パッケージに高級感を持たせるとまたコストが上がるのでしょうが。。。地味さは否めません。。。

低音弦が密封されてない

他社の弦だと長期保管しても錆びないように低音弦が空気を遮断するパッケージに入っていることが多いですが、フィガロは密閉袋ではありませんでした:

フィガロ弦の青(低音弦)のパッケージ

空気に触れたくらいじゃ錆びない!という自信のあらわれかもしれませんが、気になるところではあります。

私はクーラーボックスとシリカゲルで保管していました:

曲を弾いていて楽しい弦

正直言って、最初張って1弦ずつ弾いた時はまったく派手さのない音に大丈夫か?と思いました。

しかしながら、その感想は実際に曲を弾いて一変しました。音楽を奏でていると非常に楽しいです。

おそらく

  • 自分が弾きたいと思う音に対して素直に追従してくれる
  • 全体のバランスがいい
  • 音の分離がよく芯がしっかりしている
  • 小さい音がぼやけずにしっかり出るし、音色のコントロールもしやすい

というのがその理由かと思っています。

派手な弦の場合は1音1音を楽しむのに対し、フィガロの場合は音のつながりを含む音楽を楽しめるように思います。

たぶん、この弦の良さは曲を弾いて音楽を奏でないとわからないのではないかと思います。逆にちょっと弾いただけだと全然派手さがないのであまりよくないと思われて損をする弦ではないかと。

一方、低音弦に関してはもう少しだけ派手さがあってもいいように思います。フィガロのレッドがまさにその用途にあったもののようなので、これも試してみたいと思いました。

値段はお高めですが、ギターという楽器を楽しめる良い弦であるように思います。ぜひ一度試してみてください。

フィガロのHPから買うと、高音弦と低音弦をセットで買うと400円割引になります。

(追記) 2週間後の弦の持ちについて

フィガロ弦を張ってから2週間ほど経ちました。

まずびっくりしたのが、フレットと当たる部分が全然へこんでいません

フィガロ弦を張って2週間後の見た目

私は1日に1~2時間ほどギターを弾くので、2週間もたつとだいたいフレットと当たるところはへこんできます。以下の記事にもあるように巻線にダメージが来ると不良振動が起こって音が悪くなります。

それが、フィガロ弦の場合はさすがに擦れててかてかするところはありますが、へこみはありません(指が足りなくてピンボケになりました。。。)。

2週間たったフィガロ弦の裏側

ちょっとピンボケしましたが、弦を裏返してもこの通り。

肝心の音ですが、まったく変化がないということはなく、やはり少しへたりは感じます。鋭さが減ってまろやかになった感じです。

しかしながら、他の弦のように音の伸びがいまいちになったりということはなく、単にまろやかな音の弦になったという感じです。鋭い音を出そうと思えば出せますし、まろやかな音が好きな人にとってはかなりお勧めの弦かと思います。

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