木でできているギターには湿度管理が欠かせません。湿度は高すぎても低すぎてもギターに悪影響を与えるため、四季を通して湿度が大きく変化する日本では湿度管理は必須といえるでしょう。特にギターが存在している時間が長いケースのなかは重要です。今回はギターの上に乗せられて、ギター内部や指板を効果的に調湿できるグッズを購入し、湿度センサーを使ってその効果を測定しましたのでレビューしたいと思います。
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湿度とギターの関係についてはこちらの記事をご覧ください:
調湿剤を置ける場所が限られるギターケース
調湿剤を置ける場所は2カ所
一般的なギターケースに調湿財を入れる場合、入れられる場所は限られています。
多くの場合、ヘッドの下の空間か、ネックの付け根(ヒール)のあたりしかないのではないでしょうか。
無理矢理表面板の上に置くこともできなくはないですが、硬い粒が入っている調湿剤の場合表面板への影響が心配ですし、ずれてホールの中に落ちるのも怖いです。
湿度管理が重要なのはそこじゃない
しかしながら、ヘッドやヒールのあたりというのは本当に湿度を調整したい場所とはいえません。
ギターにとって最も湿度を気にすべき場所はギター内部のはずです。
ギターの外側は塗装に守られていますが、内部は塗装されていないことが多く、されていても塗装が薄いことから、湿度変化の影響を受けやすい場所といえます。
また、指板やネックの湿度管理も重要です。湿度変化によって指板が割れたりネックが曲がったりすることがあります。
空気が循環しづらいギターケース内部
さらに悪いことに、ギターケースは蓋を閉じると内部の隙間がかなり少なくなります。
これはギターがケース内部で動かないようにするためですが、そのために空気の循環があまり起きません。
この結果、ヘッドやヒールのあたりにせっかく置いた調湿剤の効果が、本当に守りたいギター内部や指板・ネックに達するのには時間がかかることに。
ただ単に置けばよいというものではないのです。
表面板や指板に乗せられる調湿剤を試してみた
そこで、表面板や指板に直接乗せられる調湿剤を試してみましたので、レビューをお届けしたいと思います。
布タイプの調湿剤「モイスキーパー 楽器用湿度調整シート」
1つ目は布タイプの調湿剤である「モイスキーパー(Moiskeeper) 楽器用湿度調整シート」です:
一般的な調湿剤は硬くて厚みのあるシリカゲルを使用しています。
このため表面板や指板の上などに乗せたままケースの蓋を閉められないのですが、モイスキーパーは「モイスファイン」という湿度を調整する繊維を使っており、布のように柔らかくて薄いのが特徴です。
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パッケージの裏面にはその効果の高さが示されています。単に湿気を吸うだけでなく、楽器に最適的案湿度に保つために湿気を吸ったり吐いたりするのが特徴です。ちなみにMade in Japanだそうです:
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布のように薄くて柔らかいのは確かなのですが、完全にペラペラではなく厚みがあって曲がりづらいです。このため広げたまま置くのには問題ありませんが、布のように丸めておくという使い方はしづらそうです:
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うれしいのが湿度センサーがついていて、一目で吸湿剤の状態がわかる点。色が変わったら干すことで復活させられます:
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モイスキーパーにはレギュラーとスモールの2つのサイズがありますが、ギター用としてはレギュラーでピッタリでした:
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こうやってギターの表面板を覆う形で置いておくことで、表面板はもちろんホールの中の湿度調整にも役立つでしょう。
調湿機能付きフレットガード「MUSIC WORKS FD-02/BK」
2つ目は調湿機能付きのフレットガード、「MUSIC WORKS FD-02/BK」です。
こちらはギターのフレットを守るフレットガードに調湿機能をつけた商品であり、指板やネックの湿度調整に役立ちます。
フレットガードはどちらかというとアコギやエレキで使われるもので、ケース内で弦がフレットに打ち付けられることで傷ついたり摩耗したりするのを防ぐためのもの。
どうせ指板全体を覆っているのだからこれに調湿機能をつければさらに便利なのでは?という発想で開発されています。
指板やネックの調湿効果のほかに、弦のさび防止にも役立つでしょう。
注文するとこんな感じの長くて薄いものが届きます:
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こちらは非常に薄く、くるくる丸めることもできそうです:
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こちらはギター用とベース用がありますが、クラシックギターにはギター用でよさそうです:
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ただ、アコギやエレキをターゲットにしているためか、指板どころかホールの先まで届きました。
簡単にはさみで切れるので、好みの長さに調整できます。
また、フレットガードにも湿度センサーが付属しており、色が変わったら干すことで繰り返し利用可能です。
モイスキーパー + フレットガードで湿度がかなり安定
これまで使っていたヘッドとヒールあたりの調湿剤に加え、モイスキーパーとフレットガードを追加した状態でギター内部の湿度変化を測定してみました。
測定にギター内部の湿度を測定・記録できるこちらのセンサーを使っています:
このセンサー、湿度が設定範囲を超えるとスマホに通知を出してくれるので便利です。
モイスキーパーとフレットガードはこのように設置しています:
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こちらが測定した湿度です。ギター内部の湿度の振れ幅が非常に小さく、適切な湿度に保たれていることがわかるかと思います:
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一方、このギターを置いている部屋の湿度がこちら:
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比べていただくと、部屋の湿度は67%から73%まで大きく変化しているのに、ギターケース内部は57%付近でほぼ一定なのがわかるかと思います。
さらに、上のグラフの15時~17時頃にギターを弾いており、その間はセンサーをケース内部に入れて蓋をしていました。
つまり、ずっとケースに入れっぱなしだったわけではなく、17時頃に2時間ほど湿度の高い空間で弾かれたギターにもかからず、17時以降も湿度がほとんど変化していない、ということです。
思っていた以上に高い効果が得られました。
電子レンジには注意
モイスキーパーとフレットガードの効果は非常に高いことがわかりましたが、1点だけ注意があります。
私は普段、シリカゲルタイプの調湿剤を電子レンジで温めて復活させており、モイスキーパーとフレットガードも同じことをしました。
その結果、フレットガードの端についていたずれ防止のベルクロ部分が溶けてしまいました…。
モイスキーパーにもビニール製の湿度センサー入れがついており、ここも変色してしまっています。
本体部分は全く問題なかったのですが、これらビニール製の部分があることから、電子レンジでの温めはやめたほうがよさそうです。
私はシリカゲルタイプの調湿剤のみを電子レンジで温めて放湿し、モイスキーパーとフレットガードの湿気はシリカゲルタイプのものが吸ってくれるのを期待することにしました。
ギターの割れや反りを防ぎたいなら効果的な調湿剤を
今回モイスキーパーと調湿機能付きフレットガードを試してみて、その高い効果を実測で確認することができました。
ギターはあまりにも低い湿度にさらされると割れてしまいますし、大きな湿度変化はネックの反りを招きます。
どちらも修理には多額の費用と長い時間が必要ですし、何より大事な楽器が傷物になるのは悲しいです。
ちょっとしたアイテムの導入で予防できますので、ぜひ試してみてください。