クラシックギター界に革命をもたらしたといっても良いメーカー、オーガスチンのクラシックギター用の弦の一覧です。現在のクラシックギターの音はオーガスチンのおかげといってもいいくらい重要な、ナイロンを弦に使うということを最初に行ったのがオーガスチンです。
以下の記事で本ブログの弦のレビュー/感想/情報記事をまとめています
元々はギターの製作家を目指していたオーガスチン
オーガスチン社の創業者はアルバート・オーガスチンという方です。この方はデンマーク生まれで1926年~1927年にかけてギターの製作家を目指してアメリカにやってきました。
そこから1940年代までいろいろな弦を試したそうなのですがいい結果を得られません。そして、セゴビアと出会ってともにナイロン弦の開発を行い、今日のクラシックギター弦の礎を築きました。
実はセゴビアはオーガスチンと開発を行う前にナイロン弦を使ったコンサートを1944年に行っています。この時はまだナイロンを製造していたデュポン社から提供されたそのままだったためメタリックな音がしていたそうです。
また、高音弦よりもむしろナイロンを芯線に使った低音弦の方が開発が難しかったそうです。
高音弦と低音弦で明確に分かれた製品構成
オーガスチンの弦の特徴は高音弦と低音弦で明確に製品が分けられており、それらの組み合わせが自由にできる点です。
プロアルテやハナバッハは高音弦と低音弦はセットで製品が構成されていますが、オーガスチンはギタリストが自由に選べるようにしています。
時々誤解がありますが、オーガスチンの青・赤・黒のセットに含まれる高音弦はすべて同じです。違いは低音弦のみです。
高音弦
高音弦は5種類ラインナップされています。テンション(張力)とともに以下の表にまとめました(単位はkg):
1弦 | 2弦 | 3弦 | 素材 | |
クラシック | 7.81 | 5.84 | 5.56 | ナイロン |
インペリアル | 8.40 | 6.18 | 6.16 | ナイロン |
リーガル | 8.53 | 6.40 | 6.25 | ナイロン |
パラゴン・レッド | 9.91 | 6.90 | 6.72 | フロロカーボン |
パラゴン・ブルー | 10.82 | 8.34 | 7.14 | フロロカーボン |
豆知識として、パッケージに音叉の絵が描いてありますが、クラシックとパラゴンには何もありませんが、インペリアルとリーガルには音叉の上に王冠があります。そして、王冠のマークはインペリアルとレッドで別です。
上の絵は左から、クラシック、インペリアル、リーガル、パラゴンです。ここを見ると高音弦の種類がわかります。
以下からはそれぞれの弦の特徴を解説します。
クラシック (Classic)
セゴビアとオーガスチンが開発した歴史的なナイロン弦です。まさに”Classic”と呼ぶにふさわしい弦です。
音色はとても柔らかく、艶のある音が特徴です。
昔は音程の悪さでも有名で、この音程の悪さがあってこの音が出るともいわれていました。最近では改善されたともいわれていますが詳細は不明です。
一番人気があるのはレッドの低音弦を組み合わせた通称「赤」、正式名クラシックレッド(Classic Red)です。張りも強すぎず、低音弦と高音弦がよく合っています。
低音弦に力強さを求める人は通称「青」、正式名クラシックブルー(Classic Blue)を使っています。
さらに、セゴビアが最初に弾いたといわれる通称「黒」、正式名クラシックブラック(Classic Black)もテンションが弱くて弾きやすいです。
インペリアル (Imperial)
インペリアルとリーガルはクラシックとは違う素材を使い、音程の悪さを改善した高音弦です。
インペリアルの方がわずかに細く、テンションも低くなっています。このため、リーガルよりも明るい音が出ます。
ちなみに、インペリアルは「荘厳な」とか「皇帝の」という意味があります。
セゴビアは高音弦がインペリアル、低音弦がゴールドのセットを使っていたそうです。このためか、インペリアルといえばパッケージが金色になっています。
とはいえ、真鍮製のゴールド弦はあまり現在では使われないですし、レッドやブルーと組み合わせても問題ありません。
ブラックと組み合わせるのはテンションの差があるのであまり聞いたことがないですが、そういうセットもあります。
ちなみに、村治佳織は高音弦にインペリアルを、低音弦にサバレスのコラムを使っています。
リーガル (Regal)
インペリアルと同じくクラシックの音程の悪さを改善した高音弦です。素材はインペリアルと同じですが、少し太くテンションも少し高くなっています。
インペリアルよりもこのリーガルの方が昔は日本ではよく売られていました。
リーガルの場合はやはりテンションの高いブルーと組み合わせるのが一般的かと思います。
歯切れのよさを好む人はレッドと組み合わせている場合もありますが、それなら高音はインペリアルの方がいいかなとも思います。
パラゴン (Paragon)
それまでずっと昔ながらの弦のラインナップしか売っていなかったオーガスチンが2019年に発売したのがカーボン弦のパラゴンです。
昔はキンキンした音であまり受け入れられなかったカーボン弦ですが、今では普通に使われるようになり、ラインナップに必要になったのでしょう。
低音弦と高音弦が自由に組み合わせることができるのがオーガスチンの特徴と書きましたが、実はパラゴンだけは違います。パラゴン・レッドとパラゴン・レッドという2種類のセットのみでしかもパラゴンの高音弦はばら売りされているところを見たことがありません。
これら2種類はテンションが異なるパラゴンが入っています(上の表参照)。
私はパラゴン・ブルーを使ったことがありますが、かなりテンションの高い強靭なセットでした。何しろ1弦が10.8kgものテンションであり、簡単には弾かせてくれません。
パラゴン・レッドも試しました。こちらのほうはハイテンションではありますが、まだ弾きこなせる範囲でした。非常に輝かしい音で、魅力的なセットです。
低音弦
低音弦は高音弦に比べるとシンプルな4種類のラインナップです。テンション(kg)とともに以下の表にまとめます:
4弦 | 5弦 | 6弦 | 素材 | |
ブラック(黒) | 6.45 | 6.15 | 6.36 | 銅線に銀メッキ |
レッド(赤) | 7.21 | 6.93 | 6.68 | 銅線に銀メッキ |
ゴールド(金) | 8.06 | 6.42 | 6.52 | 銅線/真鍮に金メッキ |
ブルー(青) | 7.44 | 7.14 | 7.21 | 銅線に銀メッキ |
ブラック、レッド、ブルーはテンションが違うだけです。オーガスチンの他にないメーカーとして、テンションごとに価格が違うという点があります。他メーカーだと同じ弦のテンション違いは同じ価格なのですが、オーガスチンはテンションが高いほど高いです。原材料費を考えるとオーガスチンの方が理にかなっている気もしますが…。
ゴールドは銅線に金メッキとも真鍮に金メッキともいわれています。本当に「金メッキ」なのか「金色のメッキ」なのかはよくわかりません。日本の情報では真鍮ですが、海外だと銅線になっています…。
ゴールドは他の低音弦よりも暖かみのある音といわれています。
上でも書きましたがオーガスチンはインペリアルとゴールドの組み合わせを使っていたということですので、セゴビアの音が好きな人は一度使ってみてもいいかと思います。
オーガスチン弦の音の違いを聴ける動画を公開
オーガスチンは同社のさまざまな弦の音の違いを知ってもらうべく、音を比較する動画を公開しています。
詳細はこちらの記事を参照ください:
オーガスチン弦の評価とレビュー
このサイトでもオーガスチン弦を多数使用した評価とレビューをおこなっています。
こちらの記事を参照ください。
オーガスチンを使っているプロのクラシックギタリスト
伝統的な「クラシックギターらしい」音が出るため、オーガスチンを使っているプロのギタリストは多数います。
その一部をこちらの記事で紹介しているのでご覧ください。
最近は人気が落ちてきているけど根強い人気を誇るメーカー
昔に比べるとオーガスチンの人気は落ちてきているように感じます。
積極的に新製品を開発するサバレスやダダリオに比べると保守的で伝統的といった印象です。
それでも、2019年にはパラゴンを出すなどまだまだ頑張ろうとしています。
クラシックギターの歴史を語るうえで重要なメーカーであることは確かなので一度は使ってみてほしい弦です。