ギターの腕を上げるためには自分の演奏を客観的に聴いて改善することが重要です。そのためには自分の演奏を録音して聴くのが一番なのですが、一番手軽な録音機材であるスマホのマイクはお世辞にもいい音とは言えません。かといって他の録音機材を買うのは。。。そう思いiPhoneにつけるだけで高音質で録音できるZoom iQ7を買いました。
クラシックギターの演奏をスマホから高音質で録音できるマイクについてはこちらの記事も参照ください:
スマホのマイクの音質はあまりよくない
スマホはとにかく便利です。マイクもついているしマイクもついているので自分の演奏の音も姿も簡単に録音/録画することができます。
しかしながら、どんどんよくなっているカメラに比べてマイクの品質というのは実はあまりよくなっていません。普通の人たちは動画を見たり撮ったりすることはあっても、音声についてはあまり重視していないのでしょう。
詳細は以下の記事を参照ください:
iPhone/iPadのLightningコネクタに直接接続できるZoom iQ7を購入
上の記事はまさに何とかして良い音でスマホで録音したいと考えていたときに調べた内容を書いたものなのですが、この中で最終的にZoomのiQ7を購入しました。
iPhone/iPadに直接さして使える
このiQ7の特徴は何といってもiPhoneやiPadに直接さして使える点です。
本体はこんな形をしています。ミッキーの耳のようにマイクが上についており、その下に録音レベルを調整するノブがついています。そして、一番下にはiPhone/iPadの充電端子と同じLightningコネクタがついています。
本体はマイク部以外はプラスチックでできています。全体的には軽いのですが、マイク部に少し重量感があります。
この端子をこんな感じで刺して使います。iQ7をiPhone/iPadに刺すだけでどの録音アプリからも高音質で音がとれてしまいます(ローカルなアプリは対応していないかもですが)。
もちろん、動画と一緒に高音質で音をとることも可能で、iPhoneやiPad標準のカメラアプリで手軽に使えます。
マイクとマイク基部が回転する
このiQ7、マイクが2軸で回転します。
以下が動画です。私が片手でスマホをもってもう片手で回転させているので動きがぎこちないのはご容赦ください。実際はスムーズに回ります。
回転するのはマイク自体とマイク基部の2か所です。これにより、いろいろな用途にこのマイクを使うことができます。
マイクの「指向性」
この点を理解するにはまず、マイクの「指向性」について理解する必要があります。
iPhoneのマイクではあまり意識していないかもしれませんが、高音質のマイクでは音が飛んでくる方向によって録音できる/できないが変わります。
平たく言えば、前から飛んでくる音は録音できるけど、後ろから飛んでくる音は録音できない、みたいな感じです。
したがって、高音質マイクで録音を行うためにはマイクが向いている方向が重要です。
普通のiPhoneに直接接続するマイクは角度を変えれない
しかしながら、普通のiPhone直接接続タイプのマイクは角度を変えれません。
たとえば同じZoomのiQ6ではマイクが常に前を向いています:
これだと上の写真のようにICレコーダーを使ってインタビューをするようなスタイルでは使えるのですが、動画と一緒に音を取りたいような用途では使えません。
また、IK MultimediaのiRig Mic Fieldでは常にマイクが正面を向いています。
このため、動画と一緒に音をとりたい用途にはあっているのですが、音だけとりたい場合でもiPhoneやiPadをスタンドなどに立ててやる必要があります。
もちろん、どちらもLightning延長ケーブルを使って本体から離してやれば自由な角度にできるわけですが、せっかく本体に取り付けられるというメリットがなくなるので残念でもあります。また、マイク本体を何とかして固定する必要もあります。
マイクを回転してあらゆる方向にマイクを向けられるiQ7
一方、iQ7はマイクが回転するというギミックによってマイクの方向を自由に変えられます。
iQ6のようにICレコーダーのように使いたければこういう角度にします:
上の写真に写っている、片方のマイクについている矢印がマイクの方向です。これだと上方向がマイクの正面です。
スマホのカメラで動画をとりながらiQ7で音をとりたければこうです。もちろん、自撮りで動画をとりながらというのも可能です。譜面台の上にiPhoneを置いて録音する場合でも自撮りスタイルは役に立ちます。
あるいは、音だけとりたいけどiPhoneを縦に置くスペースがない、という場合でも上のような角度にすれば横にできます。
さらにはマイクを斜め方向に向ければ地面にiPhoneを置いたままで最適な方向にマイクを向けることが可能です。
このように、iQ7は非常に応用範囲が広いマイクといえます。
MSマイクで後から音をとる範囲を変えられる
iQ7は見た目も普通のマイクと比べて変わったマイクかと思います。実はiQ7はMSマイクというちょっと変わった方式になっています。
普通のステレオマイクは右チャンネルと左チャンネルの2つのマイクを正面に向けて録音しますが、MSマイクの場合はM(Mid)チャンネルとS(Side)チャンネルで録音します。また、Mは前を向いており、Sは90度回転して横を向いています。
そして、録音したMとSの音を後から加工することによりステレオの音声にします。
興味がある方はさらに調べてもらえばいいですが(この辺りの記事がわかりやすいです)、これの利点は後からステレオ音声の広がり(==録音の範囲)を変えられるということです。
たとえば、クラシックギターのソロを録音したい場合には非常に狭い範囲だけを録音した方がいいです。無駄に広げてしまうと周りの環境音(人の声とか、足音とか)が入ってしまいます。一方、重奏や合奏の場合には広い範囲を録音した方がバランスとしてもステレオの広がりとしても良いです。
普通のステレオマイクの場合はこれをマイクのセッティングで解決するわけですが、MSマイクの場合は後から調整ができます。
もちろんこの方式にもデメリットがあり、録音した生の音は人間が聴いてもよくわからない音になっています。必ず後から加工しないといけません。これ面倒なので、iQ7には手軽に録音するために90度と120度に最初からしてしまうモードがあります:
上の写真の右側の90°、120°、M-Sと書いてある設定がそれです。この設定を変えることで普通のマイクと変わらず使うことも、MSマイクとして後から調整をすることもできます。練習の時は90か120、コンサートや発表会ではM-Sにしてじっくり後から調整、とかの使い方でしょうか。
iPhone内蔵マイクと音質を比較
このZoom iQ7がiPhoneの内蔵マイクに比べてどれくらい音質がいいのか比べてみました。iPhoneはiPhone XRを使っています。iPhoneの方は曲の途中で止めています。
iPhone XRのマイク:
Zoom iQ7:
スマホやパソコンの内蔵スピーカーでは音質の差がわかりにくいかもしれないので、イヤホンや外部スピーカーで聴いた方がいいかと思います。iPhoneのほうはどこか強調されたような音になっていますが、iQ7の方がすっきりとして和音でも音が埋もれずに聞こえます。自分の演奏の音のバランス等を見るのにこれだけ差があるとiPhoneの方でやるのは難しそうです。
また、音質の差もさることながら、周りの環境音の差が大きいのに気づくかと思います。iPhoneの場合は指向性が低いので、周りの音まで録音してしまいます。上の録音はどちらも家人が周りで家事をしているのですが、iPhoneの方はその音が入ってしまっています。一方、Zoom iQ7の方は指向性が高いのでギターの音がしっかりととれています。
首が折れやすいのが唯一のネック、瞬間接着剤で補修可能
ここまで良いことばかり書いてきましたが欠点もあります。それが「首が折れやすい」という点です。
マイクを2軸で回転できる機構にしたせいか、マイクを支える首の部分が弱くなっています。このため、落としたときに床が硬かったり当たり所が悪いと簡単に折れてしまうのだとか。
ただ、折れるといっても中の配線は無事なので、瞬間接着剤で補修が可能です。世の中の人もそれで補修して使っているようです。
また、iPhoneに直接差せるといっても、iPhoneをケースに入れていると厚みでさせないこともあります。救済措置としてiQ7の底部のパーツが一部とれるようになっており、これにより多少のケースの厚みはカバーされます:
ただ、ケースの厚みよってはこれでも対応できません。常につけておくものでもないので、録音するときはケースを外してもいいのですが、私はLightning延長アダプタで対応しました。
ちょっと不格好にはなりますが、安定性は問題ありません:
アマゾンでもベストセラーでお勧めのマイク
このZoom iQ7、これだけ高音質でいろいろな機能がありながらリーズナブルなので、アマゾンでもベストセラーになっています。
自分の演奏を録音して腕を上げたい人にも、コンサートや発表会の音を良い音で録音したい人にもお勧めです。
(追記) iQ7のAndroid版であるAm7も発売になりました。Androidユーザーの方はぜひ検討ください。