物価上昇の影響はクラシックギターにも及んでおり、さまざまなギター用品が値上げされています。ケースも例外では無いですが、一方で安価なケースの需要が生まれており、ちらほらと安いケースが発売されています。Stentor SCC-100はそんな安価なケースのなかの1つであり、軽量かつお手頃なセミハードケースです。このSCC-100を購入したので、以前使っていたスーパーライトケースと比較しつつレビューしたいと思います。

クラシックギター用ケースについてはこちらの記事でさまざまな製品を比較しています:
スーパーライトケースの半額で買える軽量セミハードケース
Stentor SCC-100はイギリスのStentor社が販売しているクラシックギター用セミハードケースです。
その魅力は大きく分けて2点あります。
1つ目は価格。この記事を書いている時点での定価は14,850(税込)と、スーパーライトケース(33,000円)の半額以下です。
スーパーライトケースは昔はもっと安かったですが、かなり高くなりました。SCC-100の実売で1万円台前半で購入可能というのは魅力的と言えるでしょう。
2つ目は軽さ。公称で1.9kgと、スーパーライトケースの2.1kgに比べて軽いです。
セミハードケースを選ぶ理由の1つが軽さなので、軽ければ軽いほどうれしいもの。一方でケースのつくりに影響してくる部分でもあるので、後ほどレビューでこのあたりを確認したいと思います。
昔のギターのケースがボロボロになったので購入
私がこのSCC-100を購入したのは、35年ほど使っているギター(アストリアス A8)のケースがボロボロになったためです。
このギターが入っていたのはいわゆる昔ながらの木枠のハードケースであり、かつ購入時に付いていた骨董品です。
さすがに35年も経つといろいろな部分が壊れてきて買い換えたいと思うようになりました。
ただ、このギターは愛着はあるものの、メインのギターとして使っているわけでは無く持ち運ぶ予定もないため、あまり高いケースを使うのももったいない気がしていました。
そこでいろいろと探した結果、安価ながら軽く、面白そうなケースであるStentor SCC-100を購入した次第です。
Stentor SCC-100を写真とともにレビュー
それでは実際にレビューしていきたいと思います。
スーパーライトケースによく似た仕様のケース
Stentor SCC-100は、なんというか、良くも悪くもスーパーライトケースによく似ています。

たとえば、
- ケースの開閉がジッパー式
- 側面に楽譜などを入れられる大型ポケットが存在
- ケース内部は発泡スチロールに柔らかい布をかぶせた構造
- 弦などを入れられるポケットが内部に存在
といったところが同じです。
いかにスーパーライトケースがよくできたケースかということを感じさせます。
1.9kgは確かに軽い
このケースの最初の感想は、1.9kgは確かに軽いというものです。
こちらのクラシックギター用ケースのまとめ記事で一覧にしているとおり、1.9kgという重さはセミハードケースのなかで最も軽く、ギグバッグ並みです:
BAMケースやアランフェスカーボンと持ち比べると明らかに軽いですし、かつ表面が硬くないので身体への当たりが柔らかく、より持ち運びに適しています。
スーパーライトケースと比べると200gの差なので持ち比べないとわからないレベルではありますが、スマホ1台分くらいの差があると思えばそれなりに差があると言えるでしょう。
よく言えばシック、悪く言えば地味な見た目
スーパーライトケースは発売当時に比べてかなりカラーバリエーションが増えましたが、SCC-100は黒しかありません。しかも、内部も割と地味な色です:

スーパーライトケースはかなりポップで明るい色がありますし、内張がワインレッドなど派手な色のものがあるので、それに比べると質実剛健といったところでしょうか。
内張のなかは発泡スチロール(的な)素材が入っており、触ると硬質感があります。

ハードケースのようにクッションが入っているわけでは無いのは、スーパーライトケースと同じです。
表面板側にはブリッジやネックの形にへこみがあり、楽器がフィットするようになっています。

楽譜を入れるポケットと弦を入れるポケットが存在
ポケットは全部で2カ所あります。
1つ目が外部にある大型のポケット。こちらは12.9インチのiPad Proが余裕で入るサイズであり、楽譜などいろいろな用途に使えそうです。

もう1つはネック裏にあるポケット。ハードケースでも定番の位置です。

ゴム紐が付いているので手を離すと自動的に閉じられます。地味に便利です。
比較的大きめなギターにも対応
Stentor SCC-100は大きめなギターにも対応する余裕あるサイズになっています。
少し小さめのボディを持つハウザー2世を入れると明らかな隙間ができるほどです。

この場合、こちらの記事で紹介しているスペースパッドなどを使って隙間を埋めた方が良いかもしれません:
比較的大型のボディを持つヘスス・ベレサール・ガルシアでも余裕があります:

ギターが入らないかも、という心配は普通のギターを使っている分には感じなくてもよさそうです。
いろいろなところにコストカットの痕跡が
一方、全体としてはやはりコストカットの痕跡が随所に見られます。
たとえば、ジッパーを閉め忘れたときに不要に開くことを防ぐための帯は、スーパーライトケースではしっかりした金属製のロックですが、SCC-100はベルクロです:

また、底面に金属鋲がなく、立てて持ったときに直接地面に触れてしまいます(側面と底面には金属鋲があります):

手で持つひもや、ショルダーストラップはスーパーライトケースに比べて細くてヒョロヒョロした印象です:


安く軽く仕上げるにはこういったところを切り捨てるしか無かったのでしょう。
逆に、SCC-100を見るとスーパーライトケースはこだわって作られたケースだということがよくわかります。
必要十分なケース、長く使うならスーパーライトケースのほうが良いか?
Stentor SCC-100を実際に購入し、以前使っていたスーパーライトケースと比べると、安くて軽いという点は優れていると感じました。
軽いと持ち運びはもちろん、家のなかで移動するのも楽です。これまで木製のハードケースを使っていた方は世界が変わると思います。
また、価格面ではこの記事を書いている時点で1万円台前半と、下手なギグバッグよりも安く買えてしまいます。
それでいてこだわるべきところにはしっかりとこだわっており、必要十分という印象です。
一方、細かいところではスーパーライトケースのつくりの良さが目立ちます。
長年人気を保っているだけあって隙が無く、それだけにSCC-100も安さ・軽さでしか勝負ができなかったのでしょう。
個人的には、メインギターで常用するギター用であればスーパーライトケースのほうが安心かな、と思います。
一方、サブギターやたまに持ち出すためのケースとして使うならSCC-100も良い選択肢です。
用途と予算から選んでみてください。