スマホが普及して自分の演奏が気軽に録音できる時代になりました。でも、録音を聴いてみるとどうも思っていたよりも演奏が下手なよう…。。それ、自分の腕ではなくスマホでの録音のやり方が原因かもしれません。楽器の演奏をできるだけ高音質で録音するのに役立つ、スマホに簡単に取り付けられるマイクをまとめました。
スマホやタブレットで録音した時に音が悪くなる原因
原因はスマホ本体とアプリの両面にあります。
スマホのマイクは人間の声に最適化され、コストが抑えられている
スマホで録音した場合に良い音に聞こえない一番の理由はこれです。
スマホの主用途は当然通話です。楽器の演奏を録音することではありません。このため、マイクの特性も人間の音声に最適化されています。
また、スマホのディスプレイやカメラに比べるとマイクはそれほど力を入れられていません。それほど使う機会が多くなく、使ったとしても品質を求める人が少ないからです。そういった部品は当然コスト削減のために安いものが使われます。
録音レベルを自動調整するアプリ
マイクで録音するときは普通は録音レベルを設定します。これにより大きい音も小さい音もきれいにとれるのですが、スマホアプリの中にはこれがないものがあります。
特に、「ボイスレコーダー」系のアプリに多いのですが、そういったアプリは録音レベルを自動調整します。つまり、音が小さければ録音レベルを上げ、音が大きければ録音レベルを下げます。
クラシックギターなどの楽器はわざと小さい音や大きい音をだすわけですが、そのたびに録音レベルが変わり、録音された音も突然音が大きくなったり小さくなったりします。
また、全体として平坦な音の大きさの録音になります。録音レベルが高いのにあまりに大きな音が来ると音が割れることも。
別で録音機器を買うと面倒だしもったいない
一番いいのは別途録音専用の機器を買うことです。これなら品質の高いマイクを使って録音ができます。
しかしながら、本格的な機材は趣味でちょっと録音して自分の演奏を客観的に聴いたり、他の人に聴いてもらったりするにはちょっと大げさすぎます。
また、スマホなら録音してすぐ聴けますが、こういった機器は録音したデータを取り出してスマホやパソコンに移さないといけなかったり、あるいはスピーカーがついていてもしょぼかったりします。
私も以下の記事で書いた通りZoomのQ2nという製品を持っていますが、スピーカーがしょぼすぎて録音(録画)した後それを確認するのにいちいちパソコンに移さないとならず、面倒なのが悩みです。
さらに、別途機器を買うとなるとお金がかかってしまいますし、良いものは高いです。映像も一緒に撮ろうと思うとまたお金と手間がかかります。
スマホに接続できる外部マイクを使えば解決、マイク端子がなくても大丈夫
これらの問題はスマホに直接接続できる外部マイクを使うと解決できます。
これならスマホに録音データは残りますし、その後のアップロードも簡単です。
また、普通の録音機器はマイク本体に加えて、録音するためのLSIや電池、ディスプレイが必要になりますが、そういったものはスマホに既にあるので結果的に安くて小さいものになります。
趣味でクラシックギターの録音をする程度ならこれで十分です。
ところが、最近のスマホはイヤホン/マイク端子がないものが増えています。特にiPhoneは積極的にこれらの端子を削除しているためありません。マイク端子があればどんなマイクでもいいのですが、これがないとなるとどうすればいいのか。。。
しかしながら、この場合でも直接接続できる製品が存在します。電源はスマホから供給され、ディスプレイはスマホを使うので見やすく、それらがいらない分小さくて軽いので持ち運びも簡単です。
以下からは実際の製品を紹介したいと思います。比較的安価な製品に絞っています。
スマホに直接接続できるマイク
まずはケーブル等が不要でスマホに直接接続できるマイクです。
この手の機器の問題は、使っている端子の仕様が変わると使えない点です。たとえば、iPhoneからAndroidに機種変更したり、あるいは同じでも端子の仕様が変わると使えなくなります。
一方、スマホに直接差さるということは、マイクを固定するものを別途用意しなくても良いというメリットがあります。スマホをスタンドに固定すれば自動的にマイクも固定されるので簡単で取り回しも良いです。
Zoom iQ6/iQ7
おそらく一番メジャーな製品がこの2つです。iPhone専用です。
Zoomという録音機器ではかなり名の知れたメーカーが作っているiPhoneに直接接続できるマイクです。
見ての通り、下にLightning端子が出ていますので、これをiPhoneの充電するところに刺すだけで使えます。
iQ6とiQ7の違いは、まず、iQ6はマイクの向きが固定式なのに比べてiQ7は回転できるようになっている点です。iQ6は音をステレオでとろうと思うとスマホを縦にする必要がありますが、iQ7は回転して横向きでも使えます。たとえば、合奏や重奏の様子を動画にとりたいときにはスマホを横向きにするかと思いますが、iQ6だとマイクの向きが左右にならず縦になってしまうわけです。
ただし、以下のような延長ケーブルを使えばマイクを分離しておけますので解決はできます。
iQ7は回転できる分、ちょっと構造が貧弱で折れやすいという感想もあるようです。
また、iQ7にはちょっと変わった機能があり、録音した後でステレオ感の広がりを30°~150°の間で自由に調整することができます。たとえば自分一人の演奏だけを録音して、あまり周りの音をとりたくないときは広がりを絞れば自分の音だけをきれいにとれるわけです。
私はこのiQ7を買いました。レビュー記事を書いています:
IK Multimedia iRig Mic Field
この製品は端子のところが可動式になっており、90度回転できるのが特徴です。 iPhone専用です。
これにより、スマホを縦にしても横にしても正しくステレオで録音ができます。
また、四角い形なのでZoomに比べると荷物の中に入れやすく、構造的にも丈夫そうです。
RODE(ロード) VideoMic ME-L
こちらはこれまでの製品と違いモノラルマイクです。 iPhone専用です。
その分音質が高いのに加え、指向性が高いのが特徴です。指向性とは音が取れる範囲を示し、指向性が高いというのは限られた範囲の音に絞って録音することを意味します。
このため、周りがある程度ざわついているような状況でも自分の音だけに絞って録音することが可能です。
本体はモノラルだけあって細くて小さく、持ち運びも楽そうです。
SHURE MV88
日本では高本質のイヤホンメーカーとして有名なSHUREですが、録音機器メーカーとしても有名です。MV88はiPhoneに直接差せるマイクになります。 iPhone専用です。
こちらは首を回転および傾けることができるので、スマホをどの方向に向けても使えます。本体が金属製だったりと高級感あふれる製品です。
DSPプリセットモードとして、スピーチ、歌声、フラット、アコースティック楽器、バンドが用意されており、録音する場面に最適な録音ができます。アコースティック楽器ならクラシックギターに合いそうです。
COMICA CVM-VS09
珍しいAndroidに直接接続できるマイクです。
充電端子がUSB Type-CのAndroidに使えます。そうでない場合は変換が必要です。
こちらのマイクも指向性が高いので自分の演奏を録音するのに最適です。
COMICAというメーカーはあまり知らないので音質についてはなんとも言えませんが、すくなくともスマホのマイクのように周りのいらない音は拾わなくなるかとは思います。
Zoom Am7
新たに登場したAndroid対応の高音質ステレオマイクです。
上で紹介したiQ7のAndroid版で、機能面でも音質面でもかなり期待ができます。詳細はこちらを参照ください:
RODE Vlogger Kit(ブイロガーキット)
iPhone/iPad、Android、アナログ3.5mm端子の3バージョンが用意された動画撮影キットです。
高音質マイクに三脚、更には投光用のLEDまでついています。詳細はこちらを参照ください
RODE VideoMic Go II
わずか89gと超小型軽量な高音質マイクです。
iPhoneとAndroid、それにパソコンにも対応し、オーディオ出力もあります。
スマホと組み合わせればいつでもどこでも高音質録音できそうです。
詳細はこちらの記事を参照ください:
Tula Mic
Tula MicはiPhone/Android/Windows/MacのUSBマイクとして使える上に、8GBの内蔵メモリで単体の高音質レコーダーとしても使える製品です。
手のひらサイズとおしゃれな見た目も魅力的ですね。
詳細はこちらの記事を参照ください:
スマホにケーブルを介して接続するマイク
次はスマホにケーブルを介して接続するタイプのマイクです。
この手の製品はケーブルを変えればiPhone, Android, パソコンのどれでも使えるものが多いです。
一方、スマホとマイクが独立するのでマイクの固定を別途考えなくてはいけなったり、置き場所を考えなくてはいけないのが面倒です。また、必ずしも小型ではない製品もある点に注意が必要です。その分性能がよくなるのかもしれませんが、用途に合った大きさを選びましょう。
世の中にはほかにも「USB対応」をうたったマイクが多数ありますが、AndroidやiPhone/iPadに対応していると明記していない製品もあります。もしかしたら動くかもしれませんが、この手のマイクはスマホから給電を行うため、給電力が足りずに動かない可能性もあります。できれば対応を明記している製品を買った方がいいかと思います。
Zoom H1n
私が現在実際に使っているのが、ZoomのH1nです。
単体で高音質ハンディレコーダーとして使える上に、USB接続すればスマホやパソコンの高音質外付けUSBマイクとして使えます。
さまざまな場面で活躍するのでおすすめです。
詳細なレビューはこちらの記事を参照ください:
IK Multimedia iRig Mic Cast 2 / iRig Mic Cast HD
以下の記事でも紹介した、ケーブル接続でありながらスマホに磁石でマイクが固定できるマイクです。
ケーブルを変えればAndoirdでもiPhoneでも使えるという利点を保ちながら、マイクの固定を考える必要がないという便利な製品です。詳細は上の記事を参照ください。
SHURE MV5 / MV51
スマホに直接接続できるマイクでも紹介したSHUREの製品です。
MV5はスタンドがついており分離もできます。MV51は背面に展開可能なスタンドがついています。どちらもAndroid, iPhone/iPad, パソコンで使えます。
こちらもDSPプリセットモードがありますが、MV51はMV88と同じ5種類なのに対し、MV5は ボイス/楽器/フラット の3種類に絞られています。この辺りが価格の差でしょうか。
マランツプロ MPM1000U / MPM2000U
変な言い方ですが、マイクらしい見た目のマイクです。
どちらもAndroid/iPhone/PCで使えるのですが、iPhoneで使う場合は以下の変換ケーブルが別途必要です。
MPM2000Uの方がマイクとしての性能が高く、キャリングケースやショックマウントがついています。MPM1000Uは代わりにマイクホルダーががついています。
いずれにせよ、マイクを固定する三脚などは別途必要です。
AKG Lyra
AKGから発売されたiPhone, iPad, Android, パソコン対応の高音質マイクです。
192kHz/24-bitという他にないくらい高音質なハイレゾで録音できます。また、様々な機能をお手軽に使えます。スタンドもついており、扱いやすい製品です。
詳細は以下の記事を参照ください:
追記:新型の「Ara」も発売されました。
IK Multimedia iRig Acoustic Stage
ちょっと変わり種の製品です。マイクで音を取るのではなくピックアップで音を拾います。
ピックアップ部はピックのような形をしていて、それをサウンドホールで表面板に挟みます。このピックアップが振動を拾い、スマホに送る仕組みです。
ギターの表面板の振動を直接録音するため、周りの雑音が一切入らないのが特徴です。外で弾いていようが、テレビがついていようが、録音されるのはギターの音だけです。
また、この特性を生かしてスピーカー(PA)につなぐのにも役に立ちます。どれだけざわついた店内だろうがギターの音だけをスピーカーから出すことができます。
ただし、自分一人の音しか録音できません。また、ケーブルの取り回しも面倒そうではあります。
ちょっと大げさすぎるという人にはピックアップ部分だけの製品もあります。
iPhoneなら以下の変換アダプタをかませて使えそうです:
発売時に比べてやたらと安くなっているのでまずはこちらで試すのもいいかもしれません。
Bluetoothで接続するタイプ
最後がBluetoothで接続するタイプです。Bluetoothのイヤホンやヘッドホンはかなり市民権を得てきましたが、高音質のマイクはなかなかありません。最近、ようやく動画と音声が同期するBluetoothマイクが登場しました。
Mikme
Bluetooth接続できるだけでなく、ICレコーダーのようにも、パソコンのUSB接続マイクとしても使えるマイクです。
詳細は以下の紹介記事を参照ください:
SmartMike+
15gのスティック型で扱いやすいBluetooth接続の高音質マイクです。
2台そろえるとさらに便利に使える機能もあり、なかなか面白い製品といえます。
詳細はこちらの記事を参照ください:
手軽に音質の良い録音とすぐに聴けるができる環境を作って腕を上げよう
自分の演奏を録音して聴くというのは非常にいい練習になります。
客観的に聴くことでより自分の演奏の良いところや悪いところを知ることができ、良いフィードバックができます。
しかしながら、音質が悪かったり、録音したものを聴くのが面倒だと億劫になってしまいます。
快適な録音と視聴環境を整えて腕を上げていきましょう。
(追記):マイクだけでなくアプリ等も含めたオンラインレッスン/合奏/重奏環境についてまとめました