フェルナンド・ソルのギター教則本は単なる教則本ではなくソルの思想が詰まっている

フェルナンド・ソルの時代のギターの構え方 楽譜/教則本

現代ギター社からフェルナンド・ソルのギター教則本 全訳が出版されました。よくあるギターの教本かと思いきや、ソルのギター曲に対する思いなどが詰まった本でした。

ギターのベートーベンと呼ばれたフェルナンド・ソル

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Wikipediaより

クラシックギターを弾いたことのある人ならだれでも知っている作曲家の一人がフェルナンド・ソルです。逆に、ギターを弾いたことない人はまったく知らない作曲家でもあります。

元々スペインで生まれた人ですが、のちにフランスに移住します。

それまで居酒屋などで弾かれる楽器でしかなったギターをコンサートで弾かれる楽器にまで高めるよう演奏や作曲をした、ギターの黄金期を支えた第一人者といえます。

フランス語で1830年に出版された教則本を翻訳

現代ギターから出版された教則本は、現代の人がソルのギター曲などに基づいて書いたものではなく、フェルナンド・ソルが1830年にフランス語で出版した教則本を日本語に翻訳したものです。

このため、単に訳しただけでは現代のわれわれにわかりづらいところもあるため、かなり多くの訳注がついていてわかりやすくしてあります

また、教則本の本体の前に当時のギターの奏法や楽器そのものについての解説もついており、かなり親切に構成されている印象です。

単なるギターの弾き方の本ではない

読んでみて思うのは、この教則本は単なるギターの弾き方を解説した本ではないということです。

頻繁に「私は」という言葉やソル自身が作曲した曲が出てきており、ソルがギターをどう弾くべきと思っていたのか、作曲した曲にどのような思いを持っていたのかが解説された本のように思います

ソルの残した曲は我々も手に入るわけですが、楽譜上にソルが考えていたことや表現したかったことのすべてが書かれているわけではありません。この本を読むとその一端がわかるような気がします。

200年くらい前から同じようなことを人々は悩んでいた

もう1つ思ったのは、ギターという楽器に対して200年くらい前から人々は同じようなことを悩み続けていたんだなぁ、ということです。

上の図はソルがギターをどのように構えるべきかについて解説している図です。ソルは左のようにギターの角を机の角において保持する方法が一番いいと考えていたようです。

一方、右側は当時イタリア人とフランス人が一般にやっていた構え方だそうで、肩のラインとネックのラインを平行にして弾くのだそうです。

今でも足台を使ったり支持具を使ったりといろいろな弾き方があり決定版というものがありませんが、200年近く前から同じと思うとなんとも感慨深いものがあります

構え方だけでなく左手や右手の使い方などいろいろ細かく解説されており、それを使うかはともかくとして興味深いです。

ソルの曲を弾くなら一度は読むべき、そうでなくても参考になる

タイトルの「教則本」というのはもともとソルがつけた原題に沿ったものなのでしょうが、現代においては必ずしもこの本の中身を正確に表したものではないような気がします。

教則本というよりはソルによるソルの曲の弾き方の解説本とか、19世紀当時のギターの弾き方とか、そういった内容の方が正しいような気がします。

その意味で、ギター初心者が読んで勉強する本というよりは、ソルの曲を弾く人が勉強するために読む本であったり、ある程度ギターを弾ける人がさらなる発展のために読む本かと思います

クラシックギターを弾いていてソルの曲を弾かない人はあまりいないと思いますので、そういう意味ではすべての人が読むべき本といえるかもしれません。

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