ギター弦のテンション(張力)、Strings by Mailが実測値を公開中

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ギター弦の選定には、音色や寿命も重要ですが、テンション(張力)も重要です。しかしながら、弦メーカーはそれぞれの基準でテンションを測定しており、メーカーが異なる場合はパッケージや公式サイトに書かれているテンションを比較してもあまり当てになりません。そんななか、Strings by Mailが特許を取得した方法で測定した弦のテンションを公開しました。

共通の測定基準がないギターのテンション

ギター弦にとってテンションは重要なファクターですが、残念ながらメーカーに依存しない共通のテンション測定基準はありません

ギター弦のテンションは以下の要素に影響を受けます:

  • 弦長
    • 弦長が長いとテンションが高くなり、短くなるとテンションが低くなります
  • 基準ピッチ
    • 基準ピッチ(A=440Hzのような値)が高いとテンションが高くなり、低いとテンションが低くなります
  • 測定するタイミング
    • 張ってすぐに測定する場合と、落ち着いてから測定する場合でテンションが異なります。弦はだんだんと引き延ばされて細くなるのでその意味では時間がたつとテンションが下がりますが、一方で材料として時間が経過すると硬くなる可能性もあるので、どちらが支配的なのかはわかりません。

これらの要素を共通にしないと正確なテンションの比較はできません。

たとえば、経験的にはハナバッハのテンションはスペックよりも高く感じますし、ダダリオは公開しているテンションよりも低く感じます。

過去には現代ギターが紙面で特集していたことも

この「テンションの実測値」については興味がある愛好家が多いようで、過去には現代ギターが紙面で特集していました。

ただ、2018年12月号のようにさまざまな弦を並べて紹介するという特集は稀で、多くの場合は新しい弦を単発で紹介しており、データを比較しづらいのが実情です。

また、現代ギター誌を売るためなのか、現代ギターの通販サイトでこのデータを公開していないのは残念です。

Strings by Mailが特許取得の方法で測定したテンションデータを公開

そんななか、Strings by Mailが特許を取得した方法で測定したテンションデータを通販サイトで公開しました。

上の動画のようにギターのネックなどを模したものに弦を張って測定しているようです。

クラシックギターの弦のデータはこちらから見られます:

Search Results : Strings By Mail

クラシックギターだけでなく、アコースティックギターとエレキギターのデータも公開しています:

アコギ:Search Results : Strings By Mail

エレキ:Search Results : Strings By Mail

メーカーの公称と大きく異なる実測値

最近人気のノブロック アクティブス 300ADCのテンションを、メーカー公称値とStrings by Mailの測定値で比較してみました:

KnoblochStrings by Mail
1弦9.86kg8.86kg
2弦7.09kg6.59kg
3弦6.60kg6.28kg
4弦6.68kg6.59kg
5弦6.63kg6.52kg
6弦6.95kg6.9kg
出典Full Set ACTIVES CX Carbon 33.5 | Knobloch StringsKnobloch Actives CX Carbon MT Classical Guitar Strings 300ADC, Full Set

たとえば1弦では1kgもの違いがあります。また、全体的にノブロックのほうがテンションを高く表記しているようです。

比較には使えるがどちらが正しいというわけではない

メーカー公称値とは異なる値がStrings by Mailで公開されていますが、どちらの方が正しいともいえないことには注意が必要です

先述の通り弦のテンションは測定条件によって変わりますので、それぞれのプレイヤーが使う条件と一致させない限り正確な値は出せませんし、それは不可能です。

重要なのは異なるメーカー間で弦のテンションが相対的に比較できるという点にあります。

異なるメーカーの弦はテンションの測定基準が異なるので、使ってみると数値の差と全然違うということが良くありました

これに対し、Strings by Mailが同じ条件で測定したテンションの実測値はメーカーが異なっても相対的に比較可能です。

例えば、

  • 今はこの弦を使っているけど、もう少しテンションを低くしたい、でも前使ったあの弦ほど低くしたくない
  • カーボン弦にしたいけどできるだけテンションは低く抑えたい

といった希望がある場合には便利に使えるでしょう。

ただし、カーボンとナイロンなど素材が違うと受ける印象が異なるのでテンション実測値と受ける印象が異なる可能性はあります。

まだまだテンション測定されていない弦が多くある

また、本記事執筆時点ではStrings by Mailが測定データを公開している弦はほんの一部です。

たとえばダダリオのプロアルテ EJ-45の測定データが無いなど、発展途上であることを感じさせます。

他の仕事がある中でStrings by Mailの中の人がコツコツとやっているのでしょうから、気長に待ちたいと思います。

測定データがあるからといって、それを見た全員がStrings by Mailで買い物してくれるわけではないので、半分ボランティアみたいなものでしょうしね。

すべてのギター弦の網羅に期待したい

まだまだ発展途上のStrings by Mailの実測値ですが、ゆくゆくはすべてのギター弦を網羅してほしいものです。

日本も負けずに、現代ギターが自社で持っているテンション実測値を通販サイト上で公開してくれると良いのですが。

また、これをきっかけにギター弦のテンション測定の共通基準など生まれるとさらに良いですね。

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