どんなにチューナーで音を合わせても調弦が合わない時に確認すべき点

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ギターという楽器は自分で調律を行う楽器です。さらに、弦の音が狂いやすいという特性を持っており、弾く前にしっかりと自分で調弦する必要があります。が、どんなに頑張って調弦しても和音が美しく響かない時が。。。そんな時に確認すべき項目を紹介します。

使っている弦が不良弦

一番ありがちなケースが、使っている弦が不良弦というケースです。これは特に高音弦で起こります。

一般に「音痴」と呼ばれる高音弦です。

確認方法

使っている弦が不良弦かどうかの確認は簡単です。

12フレットを押さえた音と12フレットのハーモニックスの音を聴き比べます

これらの音が同じ音に聞こえなかったら不良弦です(後述のネックの反りの可能性もあるのでそちらも確認すること)。

不良弦が起こる理由

現代のクラシックギターの高音弦はナイロンやフロロカーボンでできています。原料となるナイロンやフロロカーボンを溶かし、成型機から押し出すことで製造します。

この時、押し出された弦が真円かつ半径がまったく変わらなければ音程の問題は起きません。しかしながら、工業製品である以上は誤差は起きます

このため、各社様々な工夫をしています。たとえばダダリオのプロアルテはレーザーを使って真円度や半径のチェックを行っています。真円度を高めるために研磨を行った弦も各社から出ています。

これにより一説によると現在の高音弦の精度は0.01ミリにも達しているとか。

にもかかわらずこの問題は完全に解決されておらず、高音弦の多くが多かれ少なかれ問題を抱えています。

昔はオーガスチンのリーガルとインペリアル以外の弦(クラシックと呼ばれる高音弦)は音痴な弦が多かったですが、最近は改善したという話もあります。一方、昔から精度が高いといわれるプロアルテもある程度の音痴な弦は存在します。

感覚的にはフロロカーボンの方がナイロンよりも音痴な弦が少ないような気がします。

解決方法は弦を変えるしかない

解決方法としては音痴な弦を音痴でない弦に変えるしかありません。

残念ながら音痴な弦を返金するとか交換するという制度はないので、不良弦を引いてしまった不幸を呪いながら自費で交換するしかありません。

なぜ低音弦は音痴でないことが多いのか

一方、一般的に低音弦は音痴でないケースが多いです。

これは低尾弦の構造に由来します。低音弦は芯線のうえに金属線を巻き付けた構造をしていますが、芯線は高音弦のように一本の弦でなく、細い弦が束ねられた構造になっています。このため、細い弦の誤差が多く集まることで互いに打ち消されるようです。

金属線についても誤差が出そうなものですが、ナイロンに比べると制御がしやすいのかもしれません。

ギターのネックが反っている

次に、ギターのネックが反っているという可能性が考えられます。

ギターにはフレットが打ち込まれており、これにより音程が決まります。このフレットはネックがまっすぐであることを前提に位置が決められています。

しかしながら、ギターのネックは木材なので反る可能性があります。反る理由については下記の記事を参照ください:

反ると弦を押さえた時にブリッジから押さえたフレットの位置の長さが変わり、音程が変わります

反りの確認方法は上の記事にも書きましたが、最もブリッジに近いフレットで弦を押さえた状態でギターを横から見て、弦とフレットの間隔が広がったり狭くなったりしていたら反っています。ギターのネックを上とか下から見る方法は素人には難しいのでお勧めできません。

チューナーの精度が低い、電池が切れかかっている

また、調弦に使ったチューナーの問題も考えられます。

チューナーの精度は100%ではない

チューナーは電子機器なので完璧!と思っている人もいるかもしれませんがそんなことはありません。

一般的なチューナーの精度は±1セントです。1オクターブを1200で割ったものが1セントですので、±1セントというのは半音の1/100だけずれる可能性があるということになります。

ちなみに私が使っているPolyTune Clipは±0.02セントの誤差しかありません:

たぶんこのPolytune Clipと同社のUnitune Clipが最も精度が高いチューナーです。特にUnitune Clipは精度が高いのに安くお勧めです。Polytune Clipのポリフォニックチューニング機能も便利です。

tc electronic ポリフォニック クリップ チューナー POLYTUNE CLIP BLACK
ティーシーエレクトロニック(Tc Electronic)
PolyTune Clipは、3つのチューニング・モードを搭載。全ての弦を同時にチューニング可能なポリフォニック・チューニングに加え、一般的なクロマチック・チューナー・モードと、±0.02セントの精度を誇るストロボ・チューナー・モードも選べます。

電池が切れかかっていると精度が下がる

電子チューナーは半導体を使って音の測定を行うわけですが、この特性は電圧によって変わってしまいます。

そして、電池は使っていくうちに電圧が下がっていくので、使い始めと使い終わりでは精度が変わります

どれだけ変わるのかは個体差もありメーカーも公開しているのでわかりませんが、少なくとも表示が薄くなったり電池切れかけ表示が出ているチューナーの使用はお勧めできません。

重奏、合奏、アンサンブルの時には同じチューナーを使うか、耳で合わせるべき

チューナーで特に注意したいのが重奏や合奏、アンサンブルです。

このようにチューナーごとに調弦の特性が変わるため、それぞれのメンバーがそれぞれのチューナーで合わせると音程が違うということがよく起きます

せめて同じチューナーを使って合わせるか、誰か信頼できる人が調弦したギターに耳で合わせるのが理想的です。

弦長補正が必要

もしかすると、弦長補正が必要な状態なのかもしれません。

弦長補正とは、弦を押さえることで生じる弦長のずれを補正するためのもの。

詳細はこちらの記事を参照ください:

原理的に音程が合わない

ギターは平均律楽器なので原理的に音程が100%合いません。

たとえば、6弦の4フレットのハーモニックスと、3弦の1フレットを押さえた音を比べてみてください。どちらもソ#ですが、どれだけチューナーで開放弦の音をあわせてもこの2つの音は濁って聞こえるかと思います。これはハーモニックスが純正律音なのに対して実音が平均律音であるために起こる誤差から生じます。

平均律楽器の話は長くなるので以下の記事を参照ください:

この場合、弾く曲でよく出てくる(和音が美しく響かない)和音を弾き、それが美しく響くようにチューニングをあえてずらすことで解決できます。が、他の和音が汚くなるのでなかなか難しいです。

ハーモニックスで調弦すべきでない

チューナーを使わずに、あるいはチューナーを使った後にハーモニックスを使って調弦をしている人がいますが、これは避けるべきです。

上でも書きましたが、ハーモニックスは純正律の音、フレットを押さえた音は平均律の音であり、誤差が原理上生まれます。これをやるならハーモニックスではなく実音でチューニングすべきです。実音でも誤差は生まれますが、ハーモニックスよりは正確です。

チューニングは難しい、経験と妥協が必要

このように見てきてわかるように、ある程度の和音の汚さはギターの宿命です。

和音の汚さがわかるということは経験が積まれて耳がよくなったのだと喜び、ある程度は妥協する寛容さが必要かと思います。

まずはここで紹介した点を確認して問題なければそういうものだと割り切ってください。

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