徐々に浸透してきている電子書籍と同様、電子楽譜も使用している人が増えています。電子楽譜環境を整える上でまず必要なのが電子楽譜リーダーです。iPadを使うのが定番ですが、他にもAndroidタブレット、Windows PC、GVIDO以外の専用端末までさまざまな端末が存在しますので、選び方とおすすめを紹介したいと思います。
本サイトの電子楽譜に関する記事は以下でまとめています:
電子楽譜リーダーとして使う端末の選び方
まず、電子楽譜リーダーとして使う端末の選び方を解説したいと思います。
紙の楽譜と同等サイズを求めるなら12.9/13インチ以上のディスプレイがほしい
電子楽譜リーダーとして使うなら、ディスプレイの大きさが重要です。
いわゆるタブレット端末は10インチ前後のものが多いですが、コピー用紙として使われることが多いA4よりも小さく、このようなものを使うと音符が小さく見えてしまいます。
A4や一般的な楽譜のサイズを、よくあるタブレット端末のディスプレイサイズと比較すると以下のようになります。
高さ | 幅 | |
A4 | 297 mm | 210 mm |
一般的な楽譜 | 304 mm | 227 mm |
12.9インチ | 280.6 mm | 214.9 mm |
11インチ | 247.6 mm | 174.1 mm |
10.5/10.2インチ | 250.6 mm | 174.1 mm |
7.8インチ | 203.2 mm | 134.8 mm |
この表からわかるとおり、A4用紙と同等サイズで楽譜を表示したいなら、電子楽譜リーダーのディスプレイサイズは12.9インチ(13インチ)はほしいといえるでしょう。
ただ、A4がコピー用紙として使われるというだけで、それより小さいとだめとは限りません。
10インチ程度であっても電子楽譜リーダーを少し手前に置けば大きく見ることができるかと思います。
電子インク(E Ink)を使ったディスプレイが見やすい
ディスプレイの種類としては、電子インク(E Ink)を使ったものが見やすいです。
これはまるで紙に印刷したかのような見た目のディスプレイであり、目に優しく、消費電力が低いのが特徴です。
たとえばAmazonの電子書籍リーダーであるKindleシリーズに採用されています。
普通の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの場合、長時間見ていると疲れてしまうかもしれませんが、電子インクならより演奏に集中できるでしょう。
ただ、電子インクは発光しないため暗いところでは明かりが必要なのに対し、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの場合は自ら発光するためそのまま使えるのは利点といえます。
また、電子インクは白黒表示のものが多く、他の目的に使いづらいのは欠点です。
譜めくりがやりやすい端末が使いやすい
電子楽譜リーダーを使う上で重要なのが、譜めくりのやりやすさです。
通常のタブレット端末の場合タッチ操作で譜めくりすることになりますが、曲の途中での譜めくりは必ずしもしやすいとはいえないでしょう。
アプリや端末の機能で、足で踏むフットスイッチで譜めくりしたり、ウインクなどのジェスチャーで譜めくりできたりするものがあるので、そのようなものを選ぶと良いでしょう。
普通のタブレットやパソコンなら他の目的にも使える
電子楽譜専用端末や電子書籍専用端末の場合、電子楽譜リーダーとしては非常に優れた機能を持つのですが、つぶしがききません。
これに対して普通のタブレットやパソコンであれば、他の目的にも使うことができ、色々と便利に利用できます。
電子楽譜に適した端末は高価なものが多いため、コストパフォーマンスを気にするなら普通のタブレットやパソコンの方が良いかもしれません。
電子楽譜リーダーとしておすすめの端末
それでは、具体的に電子楽譜リーダーとしておすすめの端末を紹介します。
iPad Pro 12.9インチモデル
現在電子楽譜リーダーとして王道といえるのが、12.9インチディスプレイを持つiPad Proを使った方法です。
電子楽譜リーダーとしてiPad Pro 12.9インチモデルが人気の理由は、
- 12.9インチというA4に近いディスプレイサイズ
- Piascoreという強力な電子楽譜アプリの存在
- 高性能で動画編集などにも使える
といったところでしょう。
また、iPad Proを2台用意して富豪ブックというアプリを使うと、Piascoreを2画面で使うことができ、普通の楽譜のように見開きが見ることができます。
高価だと想われがちなiPad Proですが、古いモデルならリーズナブルに買えるところもうれしいです。
たとえばWi-Fiモデルのストレージが一番少ないモデルだと、現在以下のような価格で買えます(あくまで目安です)。
モデル | 価格 |
第5世代 iPad Pro 12.9インチ | 12万円ほど |
第4世代 iPad Pro 12.9インチ | 10万円ほど |
第3世代 iPad Pro 12.9インチ | 8万円ほど(整備済み品や中古) |
第2世代 iPad Pro 12.9インチ | 5万円ほど(中古) |
当然新しい世代の方が性能が良いですが、電子楽譜リーダーとして使うなら第2世代でも十分でしょう。
さすがに第2世代は古すぎるのと、画面の余白が第3世代から小さくなっているため、電子楽譜リーダーとして使うなら個人的には第3世代iPad Pro 12.9インチモデルがおすすめです。
Amazonで180日保証つきの整備済み品が8万円ほどで売っています。
iPadを使った具体的な電子楽譜環境の構築についてはこちらの記事を参照ください:
実際にiPad Proを使って電子楽譜環境を構築した記録を連載し始めました:
iPad/iPad Air
視力に自信があるなら小さめの画面を持つiPadやiPad Airでも良いでしょう。
10.2インチのiPadなら4万円ほど、10.9インチのiPad Airでも6万~7万円ほどで買えます。
iPadなら2台買っても第3世代iPad Proと同等なので、2台買って富豪ブックアプリを使い、見開き環境を構築するのもありかもしれません。
iPad/iPad Airでの電子楽譜環境構築方法はiPad Proと同様です。
BOOX Max Lumi2
BOOX Max Lumi2は13.3インチの電子インクディスプレイを搭載したAndroidタブレットです。
電子インクなので目に優しく、消費電力が小さいので長時間バッテリーで使用できます。
ただ、電子インクは白黒ディスプレイなのでAndroidタブレットといっても他の目的に使いづらい点が欠点です。
価格も10万円超えとお高く、iPad Proと変わりません。
見やすさとバッテリーの持ちの良さを重視するならおすすめです。
富士通 QUADERNO
日本の富士通も電子インクを使った端末「QUADRNO」をリリースしています。
A4サイズモデルであれば紙の楽譜と変わらない感覚で使えるでしょう。
また、A4サイズでも368gと軽く、12.9インチiPad Pro(682g)の半分程度なのが持ち歩きに便利です。
価格も6万5千円程度と比較的リーズナブルといえます。
ただ、独自OS搭載で用途が限られるのが欠点でしょうか。ちなみに本来の用途は電子メモです。
Lenovo Yoga Tab 13
使い勝手の良いAndroidタブレットなら、Lenovo Yoga Tab 13がおすすめです。
その名の通り13インチディスプレイを搭載しており、Androidタブレットなのでさまざまな用途に利用可能です。
USB-C経由でディスプレイ出力もできるため、手軽により大型のディスプレイやテレビに映し出することができ、より楽譜を大きく表示することができるでしょう。
また、HDMI入力端子を使うと、パソコンのサブディスプレイとしても使えます。
価格は8万円ほどと、iPad Proの旧モデルと同じくらいです。
NEC LAVIE Tab T11 T1175/FAS
NECの11.5インチタブレットもサイズとしては電子楽譜によさそうです。
画面の縦横比が4:2.4なので16:9(4:2.25)よりも画面を余らせることなく楽譜を表示できます。
横長の画面の場合、動画を見るにはよいのですが、楽譜だと横が余るんですよね。
重さも520gと比較的軽いので持ち歩きにも適しており、直販価格で6万円程度という価格も魅力的です。
アイリスオーヤマ LUCAタブレット TM152M8N1
アイリスオーヤマから15.6インチの大型タブレット「LUCAタブレット TM152M8N1」が発売されました。
ちょっと気になるところもありますが、楽譜の見開き表示に利用できそうです。
詳細はこちらの記事を参照ください。
Microsoft Surface Pro
他の用途にも使えるという意味では、Windowsパソコンに勝るものはないでしょう。
Microsoft自らがリリースしているSurface Proシリーズは12~13インチディスプレイを搭載したタブレット型Windowsパソコンであり、電子楽譜表示端末として適したサイズです。
現在はSurface Pro 9(13インチ)が最新モデルですが、前世代のSurface Pro 7(12.4インチ)が安く買えて良いのではないでしょうか。
もちろん、長く使うという意味では新しいSurface Proという選択肢も。
PadMu Lumi 2
PadMu Lumi 2は海外で売られている電子楽譜リーダーです。
1画面のVersion Singleと2画面のVersion Doubleがあります。
ディスプレイは13.3インチ(片面)で電子インク使用と電子楽譜リーダーとしてほぼ理想的なスペックを誇ります。
Android搭載なので、白黒ディスプレイではありますが、他用途に使えなくもないです。
価格はシングル版で753.28ユーロ(約9万7千円)、ダブル版で1,490.98ユーロ(約19万2千円)とお高めなのが残念なところでしょうか。
日本への発送も可能で、試してみたところ60ドルで送ってくれるようです。
SCORA
SCORAはドイツのメーカーで、電子楽譜リーダーを販売しています。
電子学専用端末なのですが電子インクを使わずに普通の液晶ディスプレイを採用することでリーズナブルな価格を実現しているのが特徴です。
基本モデルはSolo Tabletと呼ばれる13.3インチディスプレイ搭載モデル。
価格が395ユーロ(約5万円)とリーズナブルです。
2台用意すると見開きで使えるのもうれしい機能といえます。
また24インチディスプレイ搭載で、横向きで楽譜の見開き表示ができるSCORA Largoもあります。
こちらは835.95ユーロ(約10万7千円)ですが、電子インク使用端末に比べれば安いです。
日本への発送も可能で、Solo Tabletの場合30ユーロで送ってくれるそうです。
GVIDOは販売終了に
日本にも電子楽譜専用端末のGVIDOがありましたが、残念ながら販売終了が発表されました。
詳細はこちらを参照ください:
iPhoneやAndroidスマートフォンで電子楽譜を使う方法も
ここまでさまざまな電子学リーダーとして使える端末を紹介してきましたが、どれもそれなりに高いのが欠点です。
安く済ませたいなら、iPhoneやAndroidスマートフォンを使う方法もあります。
詳細は以下の記事を参照ください。
電子楽譜にはメリットが多く存在
電子楽譜を使うことで、
- 大量の楽譜のなかから弾きたい曲をすぐに探せる
- 大量の楽譜を小さく軽く持ち歩ける
- 楽譜保管の場所を取らない
- 書き込みを書いたり消したりでき、楽譜が汚くならない
といったメリットがあります。
まだまだ電子フォーマットで売られている楽譜は少ないですが、いち早く移行するのも良いでしょう。
まずは電子楽譜リーダーとして使える端末を選び、第一歩を踏み出してみてください。