プラモの世界とクラシックギターの爪の世界には共通するところがあり、たとえばタミヤのプラモ用紙やすりは多くのギタリストから愛用されています。ちょっと前にクラシックギターの世界にガラス製の爪ヤスリが入ってきましたが、最近はプラモの世界でもガラス製のヤスリがはやっているそうです。逆輸入したらどうかな?ということで実際にプラモ用のガラスヤスリを購入して試してみました。
ナノ技術でピカピカになる最近のガラス製爪ヤスリ
ガラス製の爪ヤスリとは、その名のとおり金属ではなくガラスでできた爪ヤスリのことを指します。
私の記憶では20年ほど前にチェコのガラス製爪ヤスリが入ってきたのがクラシックギターがこのタイプのヤスリと初めて出会った時だったように思います。
当時のガラス製爪ヤスリは少しの力でどんどん削れるのが特徴で、削った後がつるつるになることはなく、それほどはやりませんでした。
最近はナノ技術を利用し、後から紙やすりなどを使わなくても削るだけでピカピカになるガラス製爪ヤスリが登場しています。当ブログでも紹介しました:
ピカピカ具合でいうと2000番の紙やすりよりも目が細かい印象で、時代は進歩していると思ったものです。
プラモデル業界でガラス製ヤスリが流行に
最近、ガラス製やスリの動向について調べてみたところ、プラモデル業界ではやっていることがわかりました。
プラモデルではパーツに残るランナーとパーツのつなぎ目をきれいに取るため、こだわる方はヤスリで削り落としています。
従来は爪同様金属ヤスリを使った後に紙やすりで磨いていたそうなのですが、最近切削と研磨が同時にできるガラス製ヤスリがはやっているそうです。
また、ガラス製ヤスリのもう1つの利点として、透明なので切削箇所を透かしてみながら作業できるという点が挙げられます。
削りすぎ防止になるのでありがたいのだとか。
細かいところの作業に適した細長いガラス製ヤスリが登場
注目すべきは、プラモデルでの使用に適した細長いガラス製ヤスリが登場したという点です。
ガラス製の爪ヤスリは一般的に、以下のように幅広で短いものが多いです:
ざっくりと爪の形を整えるにはこれで十分なのですが、プラモデルの場合、細かい作業が多く、このような形状では持て余します。
そこで、細かいところの作業に適した細長いガラス製ヤスリが登場していました:
微妙な形を整えるという意味ではクラシックギターの爪もプラモデルに共通するところがあります。
もしかして使えるのでは?ということでこのプラモデル用ガラス製爪ヤスリを試してみました。
プラモデル用ガラス製ヤスリを爪に使ってみた
今回試したのは、上で紹介したCorecioというメーカーのプラモ専用ガラスヤスリセット+フィニッシュスポンジです:

その名のとおり、
- ナノシャイナー:ナノ技術を使った細長いガラス製ヤスリ
- スリガラスヤスリ:磨りガラスでざくざく削れるガラス製ヤスリ
- フィニッシュスポンジ:1500番/5000版のつや出しヤスリ
が含まれています。
ナノシャイナーが細い&握りやすい
2つのガラス製ヤスリを並べるとこんな感じです:

上がナノシャイナー、下がスリガラスヤスリなのですがナノシャイナーの独特の形状が目立ちます。
この形状には2つの意味があります。
まず1つ目は、先が細くて細かいところの作業に適しているというのが1つ目の点です:

クラシックギターの場合、ネイルのように爪を丸く整えるのではなく、肉と爪の境界くらいから削る必要があります。
この作業、普通の先が丸いガラス製爪ヤスリだと難しいのですよね。
さすが細かい作業が求められるプラモデル用だけあり、こちらのガラス製爪ヤスリは使いやすいです。
また、握りこみながらの作業がやりやすいのが2つ目の点です:

まるで上等な小刀のように手のひらの中にピッタリフィットし、細かい作業がやりやすいです。
ネイル用のガラス製爪ヤスリの場合、単に長方形になっているものが多く、握りにくいときがあります。
クラシックギターの爪はミリ未満の単位で調整するものなので、しっかり握りこんで作業するとやりやすいです。
従来のナノ技術ガラス製爪ヤスリよりもピカピカに
このナノシャイナー、従来の爪磨き用のナノ技術ガラス製ヤスリよりもさらに細かい粒子を使っているところを売りにしています。

こちらの記事で紹介したガラス製爪ヤスリと比べると、確かに触った感触が違います。
さすがにどちらの方が細かいという判別は触覚ではわかりませんが、実際に削ってみると爪が恐ろしくピカピカになりました。
こちらが実際の動画です。わかりづらいかもしれませんが、爪の先が白く輝いています:
これ、後から研磨したわけではなく、ナノシャイナーで2,3往復しただけです。
「超微粒子」のうたい文句は伊達ではありませんでした。
スリガラスヤスリとスポンジはいらないかも?
一方、スリガラスヤスリは使いどころに困っています。
左手の爪を削るのに使っても良いのですが、ナノシャイナーで十分ざくざく削れるため、あえてこれを使う場面がありません。
クラシックギター用という意味ではナノシャイナーだけで良いかもしれません。
同様に、フィニッシュスポンジはフィニッシングペーパーに比べて柔軟性がないため爪の裏を磨くのにはイマイチ使いづらく、いらないかもしれません。
ただ、Corecioはナノシャイナー単体では販売していませんし、セットで買っても他社の下手な単体販売よりも安いです。
クラシックギターの爪に使ったときの利点と欠点
このプラモデル用ガラス製ヤスリをクラシックギター用の爪に使った場合の利点と欠点を解説します。
直線が出しやすい
最近のクラシックギターの奏法は、爪の上を弦が長い範囲にわたって斜めに滑り抜けていくのが主流です。
この奏法のためには、爪を斜めにまっすぐ、長く整える必要があります。
一般的な金属ヤスリの場合、どうしても金属がたわむため、一部にだけ力が入って削りすぎたり、そもそも斜めに曲がったりと、直線を作るのが難しいです。
ガラスの場合はたわむことがありませんので、そのまま素直に爪に当てればまっすぐになるのは大きな利点と言えるでしょう。
さらにこのプラモデル用ガラス製ヤスリは先が細いため、爪と肉の境の部分でも問題なく削れます。
軽い力でどんどん削れる
これは利点でも欠点でもありますが、ガラス製のヤスリらしく掘削力が強いです。
このため、軽い力で撫でるように使えば爪がどんどん削れていきます。
特に爪を大きく削りたいときには楽です。
一方で、調子に乗ってサクサク使っていると削りすぎてしまった!ということもあります。
金属製の爪ヤスリとは違う意識で使わなくてはなりません。
爪はピカピカになるけど音はとがる(試行錯誤中)
上の動画でも紹介したとおり、ナノシャイナーは非常に粒子が細かく、爪がピカピカになります。
これなら紙やすりなどで磨かずともこれで磨いただけで弾けるかな?と思ったのですな、実際に弾いたところ音がとがってしまいました。
はっきりした原因はわからないのですが、もしかすると削った痕跡が直線的すぎて、そこが弦と引っかかっているのかもしれません。
ナノシャイナーで削った後にタミヤのフィニッシングペーパーを使ったところ、ピカピカさは下がりましたが、音は柔らかくなりました。
ナノシャイナーで丸く削るのはどうしたら良いかなど、まだ試行錯誤中です。
もうちょっと薄いとありがたい
これはプラモ用に限った話ではありませんが、それなりに分厚いです。
以下の写真のように横にして自立するほど厚みがあります:

爪と肉の間を斜めに削ろうと思うと、できれば薄い方がありがたいです。
ガラス製の場合はどうしても強度の問題である程度の厚みが必要なのでしょうが、もう少し薄いと良いなぁと思います。
使い方を金属から変える必要はあるが試す価値あり
今回プラモ用のガラス製やスリを使ってみて、爪用のガラス製爪ヤスリに比べて細くて握りやすく、使いやすいと感じました。
直線を出しやすいという特徴から、クラシックギター用に使う価値はあると思います。
一方で、従来の金属製ヤスリとは異なる使用感に注意が必要です。
弱い力でガンガン削れる、柔軟性がないので当たりの感覚が違うなど、慣れが必要です。
また、ピカピカになるという点は、今のところ私は使いこなせていません。
しばらく使ってみて、うまい使い方がわかったら追記したいと思います。