AppleがiPhoneやAirPodsで対応したことで一気に知名度が上がった空間オーディオですが、すでにクラシックギターでも村治佳織の最近のアルバムや、イエペスのアランフェス協奏曲などが対応しています。今までの音楽とどう違うのか実際に体感したのでレビューしたいと思います。また、特別な機器ながなくても誰でも簡単に試せる方法も紹介するので参考にしてください。
前後左右、上からも音が聞こえる空間オーディオ
空間オーディオとは、前後左右に加えて上からも音が聞こえる音楽フォーマットのことを指します。
以下はソニーの空間オーディオのイメージ画像で、左が従来のステレオ、右が空間オーディオです。
映画やブルーレイ、DVDなどで「サラウンド」と呼ばれる、自分がスクリーンのなかにいるかのようにさまざまな方向から音が聞こえる技術がありますが、空間オーディオはサラウンドの音楽版と思って間違いありません。
厳密には、空間オーディオの場合は「オブジェクトベース・オーディオ」という、仮想的な空間に音を出すものを定義し、そこから音が出ているかのようにスピーカーから音を出す点が従来のサラウンドとは異なるのですが、そこは割愛します。
ともかく、これまで「ステレオ」と呼ばれる左右の2chしかスピーカーがなかったのに対し、自分を包み込むように音楽再生がおこなわれる点が空間オーディオの新しいところです。
Dolby Atmosと360 Reality Audioの2つのフォーマットが存在
空間オーディオのフォーマットとしては、映画で有名なDolbyの「Dolby Atmos」とソニーの「360 Reality Audio」の2つのフォーマットが存在しています。
規格の乱立はビデオテープの時代から変わらず起きるものですが、消費者としてはやめてほしいところです。
現在リリースされている楽曲を見ると、海外はDolby Atmosが圧倒的に多く、このためにクラシックのジャンルではDolby Atmosで作られた音楽が多く見られます。
日本のアーティストでもAdo(うっせぇわなど)がDolby Atmosで配信しています。
一方、360 Reality AudioはYOASOBIなどの国内のアーティストが主に使っているようです。
再生機器側はまだまだこれからといったところですが、SonosというオーディオメーカーやApple TV 4Kなどが対応しています。
クラシックギター曲でも空間オーディオ対応が増加
空間オーディオに対応した楽曲は日に日に増えており、クラシックギター曲でも空間オーディオに対応したものが出始めています。
一番の有名どころでは村治佳織の「シネマ」、「Music Gift to」がDolby Atmos対応です(「ATMOS」というマーク付き)。
村治佳織のMusic Gift toについてはこちらの記事で詳しく解説しています:
また、イエペスのアランフェス協奏曲もDolby Atmosでリマスターされたものがリリースされています。
ほかには海外ギタリストのミロシュ(Milos)が積極的にDolby Atmos対応楽曲をリリースしています。
映画「マチネの終わりに」で話題となったティボー・ガルシアもアランフェス協奏曲などを空間オーディオでリリースしています。
おそらく今後も新しく発売される楽曲は空間オーディオ対応のものが増えていくでしょう。
クラシックギター曲に空間オーディオは必要?実際に体感してみた
しかしながら、自由に楽器の数を増やし好きな場所に配置できる打ち込み系の楽曲はともかく、楽器が1つしかないクラシックギターで後ろからも上からも音が聞こえる空間オーディオに対応する意味はあるのでしょうか?
実際に空間オーディオを再生できる環境を整えて体感してみたので、レビューしたいと思います。
使用したのは、Sonosというオーディオメーカーの機器で、
を使っています。
音源としてはDolby Atmos/360 Reality Audioの再生ができるAmazon Music Unlimitedを利用しました。
ホールにいるかのような響きを体感できる
音楽を再生してまず思ったのは、豊かな響きです。
ステレオ再生の場合は左右にしか音が広がりませんが、空間オーディオの場合は上や後ろまで、音の遅延を伴いながら音が広がります。
これは、音響の優れたホールで音楽を聴いたときに、ギターから出た音が残響や反射とともにホールの中を満たしていくのと同じです。
このため、部屋の中にいながらして、コンサートホールで演奏を聴いているような気分に浸れます。
オーディオマニアが頑張って部屋の音響を整え、ホールの響きを再現するといいますが、空間オーディオなら手軽にそれを超える音楽再生が楽しめそうです。
音の解像度が高い
音の響きがリアスピーカーで表現されるせいか、メインスピーカーから出る音がよりリアルに感じられました。
残響成分を再生しなくて良い分、メインスピーカーに余裕ができるのでしょうか?あるいは、音楽フォーマットの違いでしょうか?
いずれにせよ、音の解像度が高く、演奏がより生々しく感じられました。クラシックギターは音質の幅が広い楽器ですが、その違いをしっかりと楽しめます。
横から聞いても面白い
普通のステレオ再生の場合、スピーカーに正対する形で聞くのが良いとされています。
空間オーディオの場合、横から聞いてもメインスピーカーからは楽器の音が、リアスピーカーからは残響が聞こえるため、これはこれで面白いです。
ステレオ再生よりもより厳密に聞く場所が限定されるのかと思っていたので、意外でした。
Amazon Music Unlimitedは普通のイヤホンやヘッドホンで空間オーディオを楽しめる
私が使ったのはリアスピーカー付きの再生環境ですが、実はAmazon Music Unlimitedは特別な機器なしに空間オーディオを楽しめます。
やり方は、スマホに普通のイヤホンやヘッドホンをつけて聞くだけです。
空間オーディオやサラウンド機能に対応しているイヤホンである必要は無く、有線イヤホンでなくBluetoothを使った無線イヤホンでもかまいません。
また、Amazon Music Unlimitedには無料期間がありますので、手持ちのスマホとイヤホンがあれば無料で試すことができます。
Amazon Music Unlimitedには空間オーディオ以外にもクラシックギターの楽曲が多数あるのでおすすめです。
膨大な曲のなかから所望の曲を探す曲はこちらの記事を参照ください:
空間オーディオは一聴の価値あり
実際に試してみて、空間オーディオは一聴の価値があると感じました。
打ち込み系の楽曲はもちろん、正面からしか音が出ないクラシックギターやオーケストラの楽曲でも効果があります。
アーティストの表現したい音楽をよりリアルに体感できるという意味で、非常に価値のある音楽フォーマットといえるのではないでしょうか。
百聞は一見にしかずなので、ぜひAmazon Music Unlimitedの無料体験とお手持ちのイヤホン/ヘッドホンを使ってまずは試してみてください。