最近、クラシックギタリストの著書が次々と出版されています。今回読んだのは荘村清志の「弾いて飲んで酔いしれて ギターとともに50年」です。実直な性格が伝わってくる、とてもいい本でした。
出版が続くクラシックギタリストの著書
ここ最近出版されたクラシックギタリストの本では、2017年の福田進一の「6弦上のアリア」、2019年の村治佳織の「いつの間にか、ギターと」があります。
いずれも、クラシックギター弾きとして、音楽だけでなくプライベートなど、人間性にも触れられる著書で大変面白いものでした。
それに続いて出版されたのが荘村清志の「弾いて飲んで酔いしれて ギターとともに50年」です。
朝日新聞連載の「人生の贈りもの」が中心
この本の内容は朝日新聞連載の「人生の贈りもの」という記事が中心です。
決して派手な文章ではありませんが、荘村さんの人柄が伝わってくるような実直な文で、大変興味深く読ませていただきました。
荘村清志といえど、人生山あり谷ありだったのだなぁとわかり、勇気づけられた気もします。
濱田滋郎による日本のギター音楽史も
面白いのが、「人生の贈りもの」がこの本のほんの一部で、さまざまな方が書いた読み物や対談が載っているところ。
たとえば、濱田滋郎による日本のギター音楽史(とそれに絡めた荘村清志の50年について)や、向田邦子の若き日の荘村を評したエッセイ、福田進一との対談、手弁当で「アランフェス協奏曲」を録音した仲間との座談会など、多岐にわたっています。
本文中でも「荘村清志を悪く言う人はいない」と評されていますが、荘村さんの優しさやまじめさといったところが人をひきつけ、こういった本として昇華したのでしょう。
本の目次はこのようなものになっています:
荘村清志フォトアルバム
魂のけものみち(谷川俊太郎)
人生の贈りもの(荘村清志)1 相棒ギター、人生を極彩色に
2 無音の世界を生きる友と「会話」
3 「私の秘密」はギター、まだマイナーなころ
4 巨匠イエペス、脱力の極意
5 心に刻んだ、楽譜にはないこと
6 演奏は完璧、でも心は空っぽに
7 向田さん、未熟でごめんなさい
8 飲んで飲んで、武満さんから曲
9 酔いしれて、自分のために
10 十弦ギター、ゴージャスだけど
11 どん底で気づいた先生の真意
12 メナ以外の指揮で録音しない!
13 大の大人が、奇跡のキヨシ会
14 消えた後、心に響く そんな音を荘村清志と日本のギターの歩み(濱田滋郎)
男性鑑賞法・荘村清志(向田邦子)
対談 福田進一
対談 小松原庸子
座談会 キヨシ会
御礼にかえて(荘村清志)
年譜
ディスコグラフィ
荘村清志ファンならずともクラシックギター好きなら読んでおきたい
荘村清志といえば、日本のクラシックギター界のパイオニアともいえる存在で、その足跡はそのまま日本のクラシックギター界の歩みといっても過言ではありません。
荘村清志ファンでなくとも、ぜひ読んでほしい一冊です。
ちなみに、タイトルは谷川俊太郎によるものだそう。すごいですね。