クラシックギターは基本的には電気による増幅を行わずに生音で演奏する楽器です。しかしながら、他の楽器と一緒に演奏を行ったり、店内などのざわついた場で演奏したりする際にはPAを使って音を増幅した方が良い場合もあります。ピックアップをつけるにはギターのお尻に穴をあけるのが一般的ですが、穴を開けなくても取り付けられるピックアップがあります。
他の楽器に比べて非力なクラシックギター
クラシックギターの弱点としてとかく強調されがちな音量ですが、確かに非力です。
オーケストラの中では音量が小さいといわれるフルートと比べても小さく、タンゴの歴史などを一緒に弾いても遠くまでは音が届かなかったりします。
また、店内や式場、外などざわついた環境ではなかなか音が通らないのも事実です。
普通のピックアップ取り付けには穴あけが必要
このため、アコギやエレキと同じように、電気的に音を増幅するためのピックアップマイクを取り付ける場合があります。
しかしながら、普通のピックアップを買ってしまうとこんな感じの筒がついてきます:
この筒、何かというとギターのお尻にPAを取り付けるための端子を設けるためのものです。マイクの配線が外を通っていると見苦しいので、配線はギターの中を通し、端子のみギターのお尻に出します。
こちらのページでその様子が紹介されていますが、がっつりドリルで穴をあけています。。。
安かったり大事にしていない楽器ならともかく、大事な楽器にこのような元に戻せない加工をするのに拒否感があるのは私だけではないはずです。
また、普段は生音で弾くことが多いクラシックギターにこのような加工をするのは価格的にも抵抗感があるかと思います。
穴あけせずにピックアップ取り付けできる製品が存在
そんな人のために穴あけをせずにピックアップを取り付けられる製品があります。
格安のもの
まずは格安のものです。
この製品は丸い部分でギターの振動を検出し、それを電気信号に変えるものです。丸い部分をクラシックギターの表面板に取り付けて使います。
ギターの表面板はどこも均一な振動をしているわけではないので取り付け位置によって音が変わりますが、とにかく設置が簡単で安いのがメリットです。
お試しで買ってみるにもいい格安の値段(500円以下)です。
目立ちにくいサウンドホール取り付けタイプもあります:
ただし、これらのピックアップから直接ボリューム等の調整はできないので、PAの方をいじる必要があります。
もうちょっと高めでボリュームやトーン調整可能なもの
もう少しだけ高くなるとボリュームやトーンの調整がピックアップでできるようになります。
こちらはボリューム調整だけできるタイプです。
こちらはトーン調整もできます。
ボリューム等を本番中にちょっと変えたいときにわざわざPAをいじるのは面倒なので、手元にあった方が便利なのは事実です。
取り付け時に目立たないタイプ
クラシックギターといえば生音ということもあり、できるだけ余分なものがついているところは見せたくありません。
こちらのクレモナ(Kremona) NG-1 はブリッジの弦を巻き付けるところに取り付けるタイプのピックアップです:
目立たないのも特徴ですが、弦の振動をダイレクトにとらえられる上に、取り付け場所によって音が変わるという問題が起きません。素直につければいいだけなので楽です。
発展版のNG-2も発売されています:
音にこだわったタイプ
もちろん、お金を出せばどんどんいい音のものになります。
こちらのIK Multimedia iRig Acoustic StageはマイクにMEMS技術を使っているほか、外付けのDSP搭載デジタルプリアンプがあります。
さらに、USB端子もついていて、スマホやタブレットでの録音もできます。
クラシックギターの弦や表面板の振動だけでなく空気感も出したい人へ
Audio-technicaのPRO70は弦や表面板の振動を電気信号に変えるのではなく、マイクで拾った音を電気信号に変えるタイプのピックアップです。
振動をとらえるタイプだととらえられない空気感もとらえることができます。
お金を出してPAとの使用を前提にしたエレガットやトランスアコースティックギターを買うという選択肢も
やっぱりギターに配線がはい回っているのは見苦しい、という人はエレガットを別で買うのもおすすめです。
モノにもよりますが、上で紹介した高いマイク程度の値段のものもあり、意外と安く買えます。
ただし、エレガットはカッタウェイばかりで見た目的にはクラシックギターとは異なります。このため、演奏間にも違いが出ますし、なんとなくクラシック音楽っぽくありません。
そんな時は最近話題のトランスアコースティックギターがお勧めです。
ヤマハのCG-TAならクラシックギターと全く同じ見た目です。お尻にエンドピンジャックがありPAの取り付けも可能です。詳細はこちらの記事も参照ください:
クラシックギターを傷つけずにどこでも誰とでも演奏を楽しむ
クラシックギターでPAを使うのは何も他の楽器との演奏やざわついた場所での演奏だけではありません。
ジョン・ウィリアムスや村治佳織は積極的にPAを使っています。人気が高いので大きなコンサートホールで演奏する必要があるというのが理由なのでしょうが、最近ではPAの質も高く、昔ほど違和感はありません。
楽器は楽しめてなんぼなので、場所や一緒に演奏する相手を選ばずに楽しめるのは大きなメリットだと思います。
こういった製品を使って一度試してみてもいいかもしれません。