ギターのネックやフレットの調整というと、熟練の製作家やリペアマンが、経験や勘をもとに行うプロフェッショナルな行為というイメージがあります。そんな調整を自動で行う、最新テクノロジーを使ったマシンが「PLEK」です。
ギターの状態を「数値化」するPLEK
PLEKは、これまで経験をもとに行われてきたギターの状態チェックや調整を、「数値化」するマシンです。こちらが公式の紹介動画:
PLEKは電話ボックスのような形をしており、そこにギターを入れて使います。実際にPLEKを使ってギターをスキャンした動画がこちらです:
これにより、弦を張った状態のネックの反り、フレット、弦の振幅、ナット等を1/1000mm単位で測定・可視化可能なのだとか。
ギターのネックは一般的に木でできており、均一とは言えません。まっすぐに見えても実際にはあちこちが曲がった状態になっており、実際に測定を行うとこんな感じでゆがみがわかるのだそうです:
Virtual Fret Dressでシミュレーション
次に、Virtual Fret Dressと呼ばれる技術で、どのように調整すればどのように変わるかをシミュレーションします。
これにより、これまでは製作家やリペアマンの勘と経験に頼ってきた、どう調整すればよくなるのかという点を、数値で確実なものにすることが可能です。
調整しては測定を繰り替えす
数値化できたら、それに基づいてギターのネックを調整します。フレットのすり合わせはPLEKがやってくれるので簡単です。
そして、また測定すると前回からの変化が見え、最終的に理想状態になったところで終了です。
もちろん、すべてが完璧にはならず、どこかをよくするとどこかが悪くなるという可能性も。その場合はトレードオフを依頼者が考慮して選択することになります。
ナット製作もPLEKで可能
さらに、音にとって重要なナットの製作もPLEKで行うことができます。
高さや溝の切り方をどうすればベストなのかを、PLEKが判断してくれるそうです。
クラシックギターには対応している?
このように魅力的なPLEKですが、クラシックギターには対応できない場合があるようです。
【ギター】現時点では、マルチスケールとフレットレスには対応しておりません。
また、下記のギターは個体によってPLEK出来ない場合がございます。お申込みの前に一度お問合せください。・・・
ガットギター
・・・
実際にクラシックギターに適用した例が見つからなかったのですが、原理的にはクラシックギターでも行ける気はします。
ギター製作・修理・調整の分野にももっと最新技術を適用したい
特にクラシックギターの場合、ギター製作や修理、調整には職人の経験と勘が多く使われている印象があります。
これだけ科学技術が発達しているのですから、もっと最新技術を用いてもいいのではないでしょうか。
今回紹介したPLEKはその例ですし、もっと人工知能を使っていい音になるにはどうしたらいいとか、そういった解析が進んでもいい気がします。
でも、伝統を大事にしたいとか、「人が作っている」という暖かみを楽しみたいという気持ちもわかります。なかなか悩ましいところです。