This post is also available in: English (英語)
ノブロックからリリースされた新しい弦を試しました。「エリサカス(Erithacus)」と名付けられたこのシリーズは「自然な音」を目指しており、バイオナイロンという新素材を使った高音弦がラインナップされています。購入して使ってみたところ、個性的で久しぶりに弾いていて楽しい弦でした。
以下の記事で本ブログの弦のレビュー/感想/情報記事をまとめています:
また、ノブロックの弦についてはこちらの記事を参照ください:
コマドリ属を意味する「エリサカス(Erithacus)」
シリーズ名として付けられた「エリサカス(Erithacus)」は鳥のヨーロッパコマドリ属を意味します。
どの鳥なのかはわかりませんが、絵を見る限りヨーロッパコマドリ(Erithacus rubecula)のようです。
この弦は最近ノブロックからアサド兄弟記念モデルとともにリリースされました。
アサド兄弟モデルも購入済みなので、レビュー予定です。
バイオナイロン使用モデルが存在
このシリーズは低音弦にER Double Silverと呼ばれるものが使われているのが特徴です。
自然で丸い音を目指しており、以下の高音弦との組み合わせがあります。
モデル名 | 高音弦 |
EDB | バイオナイロン |
EDC | CXカーボン |
EDN | SNナイロン |
EDQ | QZナイロン |
この中で注目すべきは植物由来の素材を使ったバイオナイロンモデルの存在です。
バイオナイロンの採用によりナイロン弦やカーボン弦で見られる「プラスチックっぽい」を音を排除しており、純粋かつ自然で丸い音が楽しめるとされています。
低音弦のコンセプトも自然な音なので、このEDBモデルがエリサカスシリーズのメインなのではないでしょうか。
バイオナイロンというとアクイーラのペルラが同じ素材を使っています。
高音弦の供給元は限られていますので、もしかするとEDBモデルの高音弦はアクイーラから供給されているのかもしれません。
高音弦の供給元に関してはこちらの記事に興味深い情報があります:
パッケージ未完成状態で到着した新製品の弦
私はエリサカスのバイオナイロンモデルを発売直後くらいにノブロックに直接注文したのですが、まだパッケージができていないとのことで、こんなパッケージで来ました:
なんと名前入りでした。
ちなみに梱包も丁寧で、到着までに時間がかかることをのぞけば非常に満足度は高かったです。
ノブロック弦を直接注文する方法については以下の記事を参照ください:
当然パッケージ裏にも情報が無いので、ノブロックのサイトから拝借したものを掲載します。
低音弦、高音弦ともに「自然な音」であることが強調されています。
ちなみにモデル名は「EDB31.5」なのですが、「31.5」は合計張力が31.5kgであることを示しているようです(上の画像の31.4は誤植または開発中の値?)。
ローテンションだけあってかなり低い張力ですね。
2弦と5弦に赤いマーキングあり
弦は以下のように6弦すべて1つの空気を遮断するパッケージに入っていました。
ダブルシルバーシリーズの場合は低音弦と高音弦が分かれていたので、パッケージ完成の暁には分かれるのかもしれません。
6つの弦が1つのパッケージに入っているものの、2弦と5弦の端が赤くマークされており、弦の区別に問題はありませんでした。
低音弦は端が金属線を含めてループになっています。
このループ部分はブリッジに付けないのが一般的かと思いますが、このままだと糸巻きを通らないので切る必要があります。
実は弦メーカーとしてはこちら側をブリッジ側に使い、簡単に弦を止められるようにしているのでしょうか?メーカーに聞いてみたいと思います。
(追記):ノブロックから返事をもらいました。
やはりこのループは製造の過程でできるものであって、弦をブリッジに結ぶのにループを使うことは推奨されないそうです。
弦をブリッジに結びつける方法についてはこちらの記事を参照ください:
乳白色で太目の高音弦
見た目の面で特徴的なのは透明ではなく乳白色の高音弦です。
これはバイオナイロンを使った弦の特徴であり、アクイーラのペルラも同様でした。
ただ、すべてバイオナイロンの弦にしてしまえば意外とギターに張った時の違和感はありません。
高音弦はテンションが低いにも関わらず太目です。これもバイオナイロンの特徴でしょう。
一方、低音弦はローテンションだけあって細めであり、非常にしなやかな印象を受けました。
高音弦、低音弦とも安定が非常に早い
エリサカスをギターに張ってまず感じたのは、安定が非常に早いという点です。
前日の夜に張ったら、翌日の昼には低音弦はほぼ安定しています。
高音弦も弾いているうちに少し音程が下がりますが、他の弦に比べたら非常に安定が早いです。
弦が安定しない時期が長いとそれだけ演奏を楽しめない時期が長くなりますので、ありがたい仕様です。
実戦向きともいえるかもしれません。
弦を早く安定させる方法についてはこちらの記事を参照ください:
丸いけどぼやけた音ではない
音としては、ノブロックのいうとおり丸みがあり優しい音です。
ただ、決して安物の弦にありがちなぼやけた音ではありません。
音の芯はしっかりとありながら、余分な刺激音を抑え、自然な音を実現しているように思います。
このため、弾いていて音の勢いがないとか、大きな音が出しにくいということはありません。
欠点があるとすれば、ちょっと色気がある音が出しにくいという点でしょうか。
「プラスチック的な音」はうまく使うと、色気につながる部分もありますので、ある意味狙い通りの音といえるのかもしれません。
テンションはしっかり低め、爪のかかりが良くて弾きやすい
テンションはローテンションといっているだけあり、しっかりと低いです。
左手が押さえやすく、右手も力を抜いて演奏できます。
ローテンションの場合高音弦が細くなりがちですが、バイオナイロンのおかげかエリサカスは割と太目です。
このため、爪のかかりがよくテンションも相まって非常に弾きやすいと感じました。
ちなみにこの1つ上のテンションはEDB33.5という張力の合計が33.5kgのモデルですが、こちらでも十分テンションが低そうです。
耐久性は標準的、高音弦のハイポジションが弱点か
しばらく張って使ってきましたが、耐久性は標準的だと感じました。
1日に1時間から1時間半、毎日弾くと2週間くらいでバテてきます。
また、使っているうちに高音弦のハイポジションの抜けがいまいちなのが気になってきました。
1弦は13フレットより上、2弦は9フレットより上、3弦は7フレットより上の音が気持ちよく抜ません。
ここは「プラスチック的な」音とのトレードオフの部分もあるのでしょうね。これが気に入らない人はカーボン弦とセットのエリサカスを使えということなのでしょう。
久しぶりに登場したローテンション&個性的な弦
正直なところ、最近新しい弦を張ってもいまいち面白くないと感じることが多く、不満を感じていました。
しかしながら、エリサカスは久しぶりに登場した強烈な個性を持った弦であり、弾いていて楽しいです。
最近登場した弦のなかでは珍しくローテンションがラインナップされているのも貴重であり、はまる人にはとことんはまる弦だと思います。
唯一の欠点は入手経路がかなり限定されているところでしょうか。
現状、日本ではアウラがこのミディアムテンション版(EDB33.5)を販売していますが、ローテンションは扱っていません。
追記:アウラでもローテンション版の取り扱いが始まりました。「エリタカス」という名前になっていますが、スペイン語読みだとこうなるのでしょうか?
Strings by Mailにもこの記事を書いている時点ではまだ扱いが無く、ノブロック直販を利用するしか手がない状態です。
個人的にはかなり面白い弦だと思ったので、日本でも扱いが増えることを願います。