クラシックギター用の弦メーカーのなかでも老舗の1つであるハナバッハの弦をレビューします。新しく買ったギターがドイツのハウザーIII世であり、その意味でドイツのハナバッハの弦は相性がよいのでは?という期待があります。今回はローテンションの815LTを試しました。
以下の記事で本サイトの弦のレビュー(70種類上)や感想、情報記事をまとめています:
高音弦がノーマルテンション、低音弦がローテンションのハナバッハ 緑
ハナバッハ シルバースペシャル ローテンション 815LTは、日本では一般的に「ハナバッハの緑」と言われる弦です。
ハナバッハには膨大な弦のラインナップがあるのですが、日本で昔から使われてきたのがシルバースペシャル(815シリーズ)であり、ハナバッハといえばこのシリーズを指しています。
今ではほかのシリーズもよく見かけるようになってきましたが、ハナバッハといえばシルバースペシャル、という方は多いのではないでしょうか。
ハナバッハのほかの弦についてはこちらの記事で詳しく解説しています:
シルバースペシャルの特徴として、高音弦が2種類しかないという点が挙げられます。
実はスーパーロー、ロー、ミディアム、ハイ、スーパーハイというテンション表記は低音弦を表しており、スーパーロー/ロー/ミディアムおよびハイ/スーパーハイがそれぞれ共通の高音弦を使っているのです。
このため、ローテンションといいながら高音弦に関してはミディアムやスーパーローと変わらないという変わった構成になっています。
華やかさとは無縁の質実剛健、重厚な音
ハナバッハといえば重厚な音、というイメージを持つ方は多いかと思います。
私も基本的にはそのイメージには賛成です。ただ、「重厚さ」という言葉が持つ意味は人それぞれです。
その意味で、私の持つハナバッハのイメージは「質実剛健」。
オーガスチンの青も重厚といわれることがありますが、オーガスチンが華やかさを伴っているとすると、ハナバッハは骨太で華美さがない印象を受けます。
弦を張ってすぐは低音弦の音に金属的な輝きがあるのですが、日が経つにつれてどんどん輝きが減っていき、音の芯が太く残ります。
これを「寿命が短い」と思う方もいるかもしれませんが、そうではなくハナバッハ本来の音になったということです。
骨太なので変に音がうるさくなく、和音の響きがきれいです。このため音の分離がよく、バッハが合うという意見もあります。
ローテンションだけど音がしっかりしている
ハナバッハの緑の低音弦はローテンションですが、しっかりした音が鳴ります。
一般的にローテンションの低音弦は軽く反応がよい音が鳴りますが、ハナバッハの緑の音はやはり骨太です。
このため、左手は楽なのですが、パン!と鋭く音が鳴らないため右手に力が入りがちになり、テンションが高い印象を受けます。
テンションが低い弦を試したいならプロアルテのノーマル/ライトやドーガルのディアマンテのほうがよいかもしれません。
こちらの記事でクラシックギターのテンションの低い弦を紹介しています:
ハナバッハのシルバースペシャルが好きな人はハウザーが好き
同じドイツ製ということでひとくくりにするのは間違っているかもしれませんが、ことハウザーとハナバッハに関しては同じ特徴を持っていると感じます。
華美さがなく骨太であり、通好みの音です。
このため、ハナバッハが好きな人はハウザーが好きなのでは?と思いました。
私のハウザーIII世との相性も当然よく、ハウザーIII世の特徴をしっかりと引き出してくれます。
一方で、ハウザーIII世の弱点を補完するという目的は果たせません。とにかくこの音が好きだ!ということであれば問題ありませんが、異なるエッセンスを加えるために他の弦を使うのも1つの手でしょう。
逆に、ちょっと派手すぎると感じている弦にハナバッハの緑を張るとよいバランスになるかもしれません。
低音弦が錆びるのが早い
上で寿命が短いわけではない、と書きましたが、ハナバッハは決して寿命が長い弦ではありません。
同じような弾き方をしたとき、サバレスのカンティーガプレミアムやプロアルテは2週間で錆びることはありませんでしたが、ハナバッハは9日ほどで4弦が錆び始めました。
錆び始めたらすぐに音がだめになるわけではありませんが、やはり昔からの弦なので寿命に対してそれほどケアされているわけではないのでしょう。
価格がそれほど高くなくなった
以前はハナバッハというとオーガスチンやプロアルテやサバレスに比べて高い印象を受けましたが、最近ではこれらの弦が値上がりしたせいで差が小さくなっています。
ハナバッハが安くなったわけではありませんが、選択肢に入りやすくなったのではないでしょうか。
また、ハナバッハには500シリーズ/600シリーズという廉価版もあり、これらもハナバッハの特徴を受け継いでいるため、練習と本番の使い分けがしやすいのもうれしい点です。
ぱっと弾いてよさがわかる弦ではありませんが、クラシックギターを弾いているなら一度は試してみてください。