クラシックギターを弾くときに支持具を使う人が増えてきましたが、伝統的な足台を愛用する人も多くいます。どれも同じように見えるのでついつい適当に選びがちな足台ですが、使いづらい足台を使っていると演奏が不安定になることも。何事も足元が大事、ということでおそらく一般的な足台の中で最も安定性が高い足台であるHercules FS100B を購入してレビューします。

クラシックギターの支持具や足台や支持具の紹介・レビュー記事はこちらのきじにまとめてあります:
さまざまな素材や大きさ、特徴がある足台
一件シンプルに見える足台ですが、各社さまざまな工夫を凝らしています。
たとえば素材は鉄、アルミ、木などがありますし、大きさもマチマチです。さらに、足台の高さを上げたときに足を乗せる面が水平のものからかかと側が下がるものなど、好みにあわせて選ぶ価値があるものといえます。
そのあたりのこだわりはこちらの記事をご覧ください:
大きくて重い足台「Hercules FS100B」
今回は数ある足台の中でも、最も安定性にこだわった製品であるHercules FS100Bをレビューします。
私は以前、Herculesのギタースタンドを購入しその安定性の高さに驚かされました:
FS100Bにも同様の安定性を期待しての購入です。
足の幅にこだわった足台
FS100Bの最大の特徴はその大きさと重さです。
使用者が多いKIKUTANIやARIA、現代ギターの足台と比べるとこんなに違います(縦と横は足を置く場所の大きさ):
製品 | 素材 | 縦(mm) | 横(mm) | 高さ(mm) | 重さ(g) |
Hercules FS100B | 鉄 | 246 | 110 | 130 ~ 265 | 800 |
KIKUTANI GF-1B | 鉄 | 250 | 96 | 130 ~ 247 | 570 |
ARIA AFT-100 | アルミ | 250 | 90 | 110 ~ 215 | 310 |
KIKUTANI GF-7 | アルミ | 193 | 86 | 100 ~ 175 | 288 |
現代ギター GGFS-1 | アルミ | 195 | 85 | 90 ~ 170 | 236 |
現代ギター GGFS-BW | 木 | 230 | 90 | 100 ~ 175 | 450 |
特筆すべきは横幅です。他の足台が100ミリ未満なのに対し、FS100Bは110mmもあります。
実際に86ミリのGF-7と比べるとこんなに差があります:

日本人の成人の場合、足の幅は男性は平均100.3ミリ、女性は90.4ミリだそうなので、単純計算で男性の場合は半分以上、女性の場合でもそれなりの方が足が足台の上に乗り切っていない計算になります。
この平均値は素足での幅ですから、靴下や靴を履けばほとんどの方の足が足台に乗りきっていないといえるのではないでしょうか。
細い棒の上に立つよりも太い棒の上に立つ方が安定するのは自明ですから、演奏中の安定感にも間違いなく影響があるでしょう。
また、本体の横幅が広いということは、倒れにくいということでもあります。
上の写真のGF-7はちょっと横から力を加えると倒れてしまいますが、FS100Bなら重さも相まってちょっとやそっとでは倒れません。
厚めの鉄で耐荷重は驚異の90kg!
上の表のFS100BとGF-1Bを比べると、サイズの違いに対して重さの差が大きいことがわかります。
これは厚めの鉄としっかりした作りのためです。こちらの写真を見ると、足の部分の太さや塗装を含めたつくりの良さがわかるのではないでしょうか?

コストをケチると細くて弱い素材を使うことになりますが、そうすると素材がたわんで足を乗せたときのぐらつきが生まれます。
FS100Bの場合、許容荷重が驚異の90kgです。つまり、体重90kgの人がこの足台に乗っても問題ありません。
ギターの演奏中に身体を揺らすなどして一時的に足台に負荷がかかったとしても、FS100Bなら全く問題なく受け止めてくれるでしょう。
作りの良さでさらに安定性を向上
いくら90kgのものを乗せられるといっても、たわんだり揺れたりしたのでは演奏が安定しません。
FS100Bはしっかりした素材に加え、作りの良さで安定性を高めています。
非常に精度よく作られているため、以下の写真のように足を途中まで広げた状態で持ち上げてもジョイント部分が動かず、勝手に開くことがなく、まったくぐらつきません:

お手持ちの足台で試してもらうとわかると思いますが、普通の足台はこんな感じでぶらぶらします:

さらに、演奏中に足元がぐらつく原因となる、横方向にもぶれづらい高精度なつくりになっています。以下の動画の最初がOHASHI FT-3、次がKIKUTANI GF-7、最後がHercules FS100Bです:

指で足を固定している部分を横に動かしたとき、FT-3は変動が大きいのがわかります。GF-7に至っては、横に動かすと元に戻りません。
これらに対し、FS100Bは変動が小さい上にすぐに戻ります。また、最初からわざと少し左にずらしてジョイントが触れあうようにしてあり、左方向には動きません。
こんなに精度の高い足台は初めて見ました。
腰痛改善に効果がある?
足台を使ったときの弊害として知られている腰痛ですが、身体に無理をかけることが原因とされています。
安定性が低く、からだに合わない足台を使っていると知らず知らずのうちに無理がかかっているかもしれません。
FS100Bのように安定性が高い足台に変えると、改善される可能性があるのではないでしょうか。
ただ、あまりにも腰痛がひどい場合は素人判断をせず、支持具に変えたり医者に行ったりすることをおすすめします:
外に持ち出すのには向いていない
Hercules FS100Bの欠点は、その大きさと重さです。
家のなかで使う分には良いのですが、重さが800gと、一般的なクラシックギターの半分以上の重さがあります。
また、現代ギター GGFS-1と比べると3倍以上の重さです。
このため、車での移動なら良いかもしれませんが、公共交通機関や徒歩などで移動する場合は必ずしもおすすめできません。
こればっかりはトレードオフなのでどうしようもないところではあります。
また、多くの足台に付いている持ち出し用の袋も付いていません。
普段はFS100Bを自宅で使い、外で弾くときは軽めの足台、気合いを入れる本番ではFS100Bを頑張って持っていく、という運用が良いでしょうか。
意外とリーズナブルな価格設定
こんなに分厚い素材で高精度に作られていたらさぞかし高いのだろう、と思いきやFS100Bは意外とリーズナブルな価格設定です。
本記事執筆時点での定価は2,500円、Amazonなどの大手ネット通販サイトでは2,000円未満で売られています:
激安の足台をのぞくとそれほど高いとは言えず、むしろお買い得感すらあります。

お金をいくら払ってでも良い!という方にはこんな足台もあります:
クラシックギターショップではあまり売られていないけどおすすめ
Hercules FS100Bは意外なことに、クラシックギター専門ショップではあまり取り扱いがありません。
Herculesがどちらかというとアコギやエレキに力を入れているので、あまり取引がないのでしょうか?
ただ、Hercules FS100Bは間違いなくクラシックギターにぴったりの足台ですし、他のHercules製品と違って黄色が大きくあしらわれたデザインでもないのでクラシックギターのステージで使ってもまったく問題ありません。
クラシックギター弾きの人は支持具にはこだわっても、足台にはこだわらない傾向があります。支持具に比べればかなりリーズナブルですので、ぜひ一度FS100Bを試してみてください。