ギターを弾いて上達してくるとどんどん弾きたくなってきます。しかしながら、なかなか普段は日中は弾くのが難しかったりしてどうしても夜に弾くことになったりします。夜や深夜に弾いても迷惑にならないような手段や方法をまとめました。
意外と大きいクラシックギターの音量(db)
クラシックギターの音量というと、「クラシックギターの音量は小さいから」というのがギター弾きの自虐ネタの1つかと思います。
しかしながら、実はクラシックギターの音は意外と大きいんです。
こちらはスガナミ楽器様のHPにある各楽器の音量と世の中の騒音の関係です:
なんとギターの音はパチンコ店やボーリング場の音よりも大きいという結果に。
いや、このギターは絵的にはアコギだろ、という意見もありますが、島村楽器さんの検証でもクラシックギターで90db近くまで出ているようです。
バイオリンとそう変わらないというのは意外な結果ですが、ギターは弦をはじいた時に瞬間的に大きな音が出るのに対し、バイオリンは連続的に大きな音が出るのでバイオリンの方が大きく感じるのかもしれません。
また、ギターという楽器は音を出すサウンドホールが前方向にあるので、自分が聴いているよりも実際には大きい音が出ている楽器であるといえます。
したがってクラシックギターと言えども夜中に本気で弾くと周りに迷惑となる可能性があるといえるかと思います。
ギターの音量をおさえるアクセサリ
まずはギターの音量をおさえるためのアクセサリを使う方法です。
このタイプのやり方のメリットは普段使っているギターをそのまま使えるという点です。また、コストが低く導入しやすいものが多いです。
一方、どうしても音自体は普段とは違う音になったり弾き心地が変わってしまい練習に影響が出るという弱点もあります。
弦を挟むタイプの弱音器(ミュート)
一番メジャーなのはこのような弦をスポンジで挟むタイプの弱音器かと思います:
弦が振動して音が出るのだから振動を抑えてしまえば音は小さくなる!というシンプルかつ確実な方法です。
つける位置をブリッジ寄りにすれば比較的大きく、ホール寄りにすれば小さい音になります。
トレモロミュート
弦を挟むタイプのミュートは強く弾くと振動でとれてしまうという弱点があります。
そこで新しいタイプとして出てきたのが弦と表面板の間に挟んで振動を妨げるタイプの弱音器です:
高さ調整もできるので弦高によらず使えます。
なぜ「トレモロ」ミュートなのかというと、このトレモロミュートを使った状態でトレモロの練習をすると上達が早いためです。
トレモロ練習の一番の難しいところは自分で聴いていてもトレモロの粒がそろっているかわかりづらい点にあります。親指を含むほかの指が弾いた音の残響が残っており、それぞれの指が弾いた音のリズムと音量がそろっているかが判断しづらいです。
このトレモロミュートを使うと弦のサステインが短くなります。そのため、各弦の音量とリズムがそろっているかが判断しやすくなります。また、各弦のノイズもわかりやすくなります。
もちろん、トレモロの基礎となるアルペジオに関してもいい練習になります。
サウンドホールを覆い隠すタイプの弱音器
弦の振動を妨げるタイプのミュートはどうしても弾き心地に影響が出てしまいます。
これを嫌う人にはサウンドホールを覆い隠すタイプの弱音器があります:
ギターの音はボディの中で反射した音がホールから出ることで聞こえます。このため、ホールを隠してしまえば音が小さくなるという原理です。
ついでに保湿機能を備えたものもあります:
サウンドホールの大きさはギターごとに違いますので購入前に確認をお勧めします。
大きな音が出ないギターを使う
そもそも大きなギターが出ないギターを使えば音量の問題は解決します。
この方法のメリットはそもそも小さな音しか出ないので音量の問題が完全に解決します。
一方、コスト面ではアクセサリをつけるのに比べると高くなり、普段使っているギターと違うギターになるので練習への影響が出る可能性があります。
サイレントギター
おそらくもっともメジャーな小さな音のギターといえばサイレントギターかと思います。
ヤマハのものは20年くらい前からある製品ですが、地味に進化をしており、クラシックギタータイプの最新のものは2017年に発売されたSLG200NWです。
共鳴胴を持たず弦の振動は振動板を振動させません。かわりに振動はピックアップで電気信号に変換され、イヤホンやヘッドホンを通して聴くことができます。
ACアダプタだけでなく電池でも動きますので気軽に使うことができます。
変わったところではリバーブをかけてホールで弾いているような残響を出したり、チューナーが内蔵されていたりします。また、音声入力もついているので他の人の演奏を聴きながら弾くことも可能です。
私も昔のタイプのものを持っていますが、メインのギターが使えないときはお世話になりました:
クラシックギター弾き的に唯一気になるのはカッタウェイデザインになっているところです。普通のクラシックギターはカッタウェイじゃないので別パーツででも普通の形にしてほしかったところですが。。。
ちなみに昔はアリアからもサイレントギターが出ていましたが、すでに生産中止で中古でしか手に入らないようです。
追記:「ナターシャスマートギター」という新しいサイレントギターが発売されました。その名の通り、BluetoothやUSB接続できる高機能サイレントギターです。
トランスアコースティックギター
最近出てきた新しいタイプのギターです。
こちらの記事で詳細を紹介していますが、ピックアップで電気信号にした弦の振動をアクチュエーターに伝え、アクチュエーターが表面板を振動させることで音を出します:
電気信号でアクチュエーターを駆動させるときに音量の調整もできますので、小さい音のギターとしても大きい音のギターとしても使えます。もちろんリバーブなどのエフェクターも内蔵です。
追記: 残念ながら音量調整できるのはラインアウトだけのようです。。。
このトランスアコースティックギターは完全にクラシックギターの形と同じなのでまったく違和感なく弾くことができます。また、ミュートによって変な音量特性になることなく音を小さくすることもできます。
Cross Guitar(クロスギター)
無駄な部分をすべて削ぎ落とした、シンプルなサイレントギターがCross Guitarです。
回転する棒を持っているのがミソで、弾くときは足台や支持具がわりになり、収納するときはネックの裏に完全に隠れます。
ヤマハのサイレントギターよりもかなり安価なのも魅力的です。
詳細は以下の記事を参照ください:
サウンドレスギター
フォルテ楽器で販売されているギターです。
見ての通り、表面板と裏板がありません。弦の振動によって音を出す部分がないので大きな音が出ません。
サイレントギター等のように電気的に音を出す仕組みもないので、どちらかというと練習専用のサイレントギターでしょうか。
その割に価格がちょっとお高めなのがなんですが、素材は良いものを使っているのでしょう。
トラベラー・ギター
ペグをサウンドホール側に持ってくることで、全長を抑えたナイロン弦のギターです。
ウルトラナイロンモデルという軽くて小さいモデルのほか、Escape Classicというクラシックギターに近い形状のモデルもあり、用途に合わせて選ぶことが可能です。
詳細はこちらを参照ください:
防音室 安いものもある
究極の手段が防音室を作るという手でしょう。
とにかくお金はかかりますが、自分のギターを思う存分弾くことができます。
家の一部屋を防音室にするのはコストがかかりすぎますが、最近はもっとコストを抑えた防音室が販売されています。
段ボール製防音室 だんぼっち ワイド
段ボール製にすることで安く販売している防音室です。
メーカーによると中で90dbの音量が60dbになるそうです。60dbというと日常生活音と同じなので気にならなくなるのではないでしょうか。
ギターの一般的な全長は1000㎜なのに対して幅が1100㎜とちょっとギターを弾くには小さいのが気になるところです。アコギの場合は写真的にはこんな感じみたいです:
クラシックギターの場合はもっと立てて弾くので大丈夫かとは思いますが…。
なお、内部に電源ケーブルを入れられるので扇風機などをかけることも可能です。
価格は11万円程度とサウンドレスギターを買うよりは安いですし、サイレントギターやトランスアコースティックギターを買う値段からもう少し頑張れば買える値段です。
簡易防音室 ライトルーム(プラス)
こちらは布の間にウレタンと遮音シートをいれることで音をさえぎるタイプの防音室です。
メーカーがアコギをかき鳴らしたときの音量の違いを動画で公開しています:
少し大きめの”LL”サイズや、防音性を高めた”ライトルームプラス”という製品もあります。
さすがにLLのプラスになると18万円ほどになりますが、ライトルームLなら12万円程度とだんぼっちとあまり変わらない値段でリーズナブルです。
こちらも内部に電源ケーブルをはわせられます。
島村楽器 S-OTODASU II LIGHT
楽器店の島村楽器が「S-OTODASU II LIGHT」と呼ばれる簡単組み立て、折りたたみが可能な防音室を販売しています。
クラシックギターにピッタリのサイズで、価格が13万円未満とリーズナブルです。
詳細はこちらの記事を参照ください:
カワイ 防音室 ナサール
部屋の中に部屋を作るイメージの防音室です。
上の2つの簡易防音室に比べるとかなり本格的なものになります。ちゃんと換気扇も標準装備ですし、見た目も高級感があります。
お値段は新品で買うと60万円ほどとさすがにそれなりのお値段がします。が、このタイプの防音室は意外と中古の売買がさかんで、中古のものが安く売っていたり、いらなくなったら売ったりすることもできます。
ヤマハにも同様のアビテックスというシリーズがあります。
部屋自体に騒音対策をおこなう方法も
部屋自体に騒音対策をおこない、部屋の外に伝わる音を減らすのも有効な方法の1つです。
最近はDIYできる防音グッズも多数販売されており、賃貸物件でも騒音対策ができます。
詳細についてはこちらの記事を参照ください:
周りに気を配って快適な音楽生活を
音の問題はこじれると大変なことになり、世の中では事件に発展したこともあります。
そこまでいかなくても同居している人への迷惑等を考えて、自分も周りも気持ちよく演奏をしていきたいものです。