日本の夏や梅雨といえば蒸し暑い季節。人間にもつらい季節ですがギターにとってもしんどい季節です。この時期に注意したい管理方法を紹介します。
クラシックギターのメンテナンスに関する記事は以下の記事にまとめてあります:
湿度によって引き起こされる故障
冬と夏を比べるとどちらかというと冬の方がギターにとってはつらい季節ですが、夏場もやはりギターの管理を気を付ける必要があります。
日本の夏特有の高温多湿は木でできているギターに負荷を与えます。
ネックが反る
湿度が高すぎても低すぎてもネックが反ります。理由は、指板に使われている黒檀(やローズウッド)とネックに使われているマホガニーなどの木の収縮率の違いのためです。
ネックの反りの詳細については以下の記事を参照ください:
クラシックギター専門店であるファナのHPによると、ネックの反りの修理は10,000円以上必要で1週間以上かかるそうです。修理方法によってはもっとかかります。
接着剤のゆるみ
ギターの接着剤として使われている膠(にかわ)はあまりにも湿度が高くなると溶け始めます。
この結果、弦を支えている駒が飛んでしまうようなことも。
カビが生える
湿度が高い環境にずっと放置しておくと、木でできているギターにカビが生えます。
表面は塗装でコーティングされているのでめったに生えることはないでしょうが、内部は塗装されていないことが多く、ここから生えはじめます。そして、気づかないうちに広がっていき取り返しのつかないことに。。
弦が錆びやすくなる
ギターの低音弦は金属製のため水分で錆びます。錆びると音が悪くなり、交換時期が早まることに。
夏と梅雨のギターの守り方
それではどのように夏と梅雨の季節にギターを守ればいいでしょうか?
湿度管理を徹底する
一番大事なことは湿度管理を徹底することです。ギターにとって最適な湿度は40%~60%程度といわれていますので、ギターを保管しておく場所の湿度をこの範囲に保つようにします。
理想はやはりケースに湿度管理剤とともに入れておくことです。
しかしながら、湿度管理剤や除湿剤は無限に湿度を吸えるわけではない点に注意が必要です。ある程度の湿気を吸った後は新しいのに変えるか、乾燥させる必要があります。
私はDr.DRYという湿度調節材を使い、3,4日に一度電子レンジで4分ほど過熱して乾燥させています。
逆にいうと、一週間もずっと湿度調整剤を入れっぱなしにしているとこの季節は役に立たないということです。
環境にもよるかもしれませんが注意してください。
湿度計で湿度を管理する
上で書いた湿度調整剤入れっぱなしの話とも関連しますが、感覚で湿度を管理すべきではありません。
ケースあるいは室内に湿度計を置き、きちんと数値で湿度を管理するようにしましょう。
また、湿度は一日の中でも大きく変化し、人間が見ていないときに湿度が大きく上がるということもあります。このため、私は以下の温湿度計を使って一日の湿度の変化を管理できるようにしています:
最近は、楽器内部の湿度が測定できる湿度計を導入し、さらに正確な湿度管理ができるようにしました。
まずは単純な湿度計からでもいいので、しっかりと管理してあげましょう。
クーラーの風を当てない
夏場や梅雨は人間もしんどいのでクーラーを使っているかと思います。
この時、クーラーの風を直接ギターに当てないようにしましょう。
クーラーからの風は非常に乾燥しています。このため、ギターにこの風が直接当たると乾燥しすぎることに。夏なのに以下の記事で書いた冬の乾燥する時期の故障が起きます:
ケースから出して室内保管しているときはもちろんですが、練習中もクーラーの風が当たらない場所でギターを弾くことが重要です。
汗に注意
ギターを弾いているとどうしても汗ばんでくる季節ですが、汗はギターの塗装を痛める可能性があります。
特に高級ギターで使われるセラック塗装の場合、水分や湿度に弱いため、塗装が溶け出して白化してしまいます。詳細は以下の記事を参照ください:
これを防ぐには、まずはギターを弾き終わったらからぶきすることが重要です。からぶきにより水分を取り除く効果があります。
また、腕や胸とギターが当たる部分には当て布をすると安心です。腕に関してはアームカバーをつけると良いでしょう:
あるいは、ギターと体が当たる部分を覆うG-FITという製品もあります:
塗装が白化すると見た目にも良くないですし、最後には塗装が剥げて木部が出てしまいます。注意しましょう。
弾き終わったら弦を拭く
弦の錆を防ぐには、弾き終わったら弦の表面を拭いてやるといいです。ただの布で拭くのでもいいですが、専用のアクセサリもあります:
ついでに弦の滑りがよくなり弾きやすくなる効果も。
しっかり対策をして湿度が高い季節を乗り切ろう
冬の乾燥もギターにとってつらいですが、夏や梅雨の高温多湿もギターにとってはかなりの負担です。
愛するギターを長く使うためにもしっかりと対策をしてあげましょう。
後悔先に立たず、です。