教則本に必ず登場し、その後も指ならしによく使われるスケール(音階)練習ですが、なんとなく弾いていないでしょうか?実はスケール練習はクラシックギターにとって非常に重要な練習であり、初級から中級、上級を目指すならスケール練習をしっかりとおこなうことが重要と言っても過言ではありません。その効果と練習方法を解説します。
クラシックギターの教則本についてはこちらの記事も参照ください:
スケール練習=音階を弾く練習
スケール練習とは、一言で言えば音階を弾く練習のことです。
いわゆるド・レ・ミ・ファ…というやつです。
もう少しクラシックギターで拡大解釈をすると、
- アルペジオでない
- 和音でない
という、単一の音の羅列を練習することをスケール練習といっても良いかと思います。
つまり、多く人が退屈と思う練習です。
セゴビアはスケール練習を重視した
このスケール練習、実はあのセゴビアが、
2時間の音階練習は6時間の無益な練習に匹敵する
アウラのHPより
と語ったといわれるほど、クラシックギターにとって重要な練習です。
単なる指ならしだと思っていた人は、考え直した方が良いかもしれません。
スケール練習によって得られる効果
それでは、スケールを練習することによってどのような効果が得られるのでしょうか。
右手と左手の動きの同期がうまくなる
クラシックギター特有の効果が、左手と右手の同期がうまくなるという点です。
たとえばピアノの場合、鍵盤を押せば音が出て、離せば音が止まります。
しかしながら、クラシックギターの場合、左手で弦を押さえ、その後でさらに右手で弦を弾かなくては音が出ません。
しかも、左手で新たに弦を押さえると、その弦でそれまで鳴っていた音が止まってしまいます。
このため、左手が遅ければ音が出ず、右手が遅ければ音がない時間が生まれるということになり、右手と左手の同期は非常に重要です。
この両手の同期を鍛えるのに、1つの弦の上で音を連続的に弾く練習を含むスケール練習が非常に効果的といえます。
ゆっくりとしたスピードで、できるだけ音の間に無音状態がないように、かつ音がしっかり出るように意識して弾いてみてください。意外と難しいことに気づくのではないでしょうか。
両手の同期がうまくなれば、結果的に速弾きもうまくなるでしょう。
指ごとの音量/音質の均一化
クラシックギターの場合、同じ弦を親指、人差し指、中指、薬指を使って演奏します(時には小指も)。
これらの指は長さも違えば力も異なりますが、曲の演奏において指の違いによって音量や音質が異なることは許されません。
スケール練習をおこなう際に右手のさまざまな指を組み合わせ、かつ音量と音質が均一になるように演奏することは、不要なな音量/音質差をなくし、曲で表現すべき音量/音質の違いを際立たせるのに役立つでしょう。
左手の小指と薬指を鍛える
小指と薬指は、人差し指と中指に比べて力が弱く、かつコントロールしづらい指です。
スケールでは左手の指をまんべんなく使うため、これらの弱い指を鍛えるのに効果的といえます。
指板を見ずに演奏するための感覚が付く
スケールは練習方法によっては、指板上のかなり広い範囲を使って演奏することになります。
これを繰り返すことで、ローポジションからハイポジションまで指板の感覚が身につき、指板を見ずに演奏するのが楽になるでしょう。
中級や上級の曲になるとハイポジションを使った演奏が必須になりますが、そのような曲の演奏につながります。
スケールの練習方法
どのように練習すれば効果なスケール練習になるか解説します。
ゆっくり弾くことを忘れない
スケール練習で重要なのは、スピードよりも精度です。
このため、ゆっくりスケールを弾く練習が必要といえます。
もちろん、速弾きの練習のためにスピード重視の練習をしても良いのですが、目的ごとに適した速度が違うことは覚えておきましょう。
メトロノームを使う
人間、苦しいところは無意識のうちにごまかしがちです。
メトロノームなしでスケール練習をおこなうと、指がきつかったり飛んだりするところでテンポが揺れることがあるでしょう。
これを防ぐため、メトロノームを基準に練習することをおすすめします。
しっかりと自分の音を聴く
音量および音質の均一化のためにも、自分が出した音を聴きながらスケール練習する必要があります。
この目的もあってゆっくりしたスピードで弾くことが重要です。
指の順番を変えるなどしても音量と音質が変わらないことを確認してください(i->mをm->iにするなど)。
また、弦をまたいだ際もできるだけ音質を変えないように工夫することも実際の曲を弾く際に役立ちます。
音の間をできるだけ短くする
効果のところで解説した左手と右手の同期をうまくするため、できるだけ音の間の無音期間を短くするよう意識して弾いてください。
これも速く弾いてしまうとわかりづらいので、ゆっくり弾きながら確認するのがおすすめです。
一音一音を大切に、ギターの響きを楽しむようにして弾くと良いでしょう。
音量や音質に変化を付けてみる
スケールを弾く際に音量や音質に変化を付けることで、曲を弾くときの表現の幅を上げることができます。
たとえば音階の上昇とともにクレッシェンドし、下降とともにデクレッシェンドしたり、音階の変化とともに音質を硬くしたり柔らかくしたり、さまざまなバリエーションが考えられます。
こちらも自分のギターが持つ音の幅広さを楽しむといいかと思います。
ただ、変化をつける練習とそうでない練習は分けたほうが良いです。どちらも中途半端になり、効果が薄れてしまいます。
スケール練習に適した教材
スケール練習に適した教材を紹介します。
セゴビアのスケール
クラシックギターにおけるスケール練習の定番といえば、セゴビアのスケールでしょう。
運指もしっかり指定されており、これに従うことでクラシックギターの指板をまんべんなく練習することが可能です。
価格も安く、さらにAmazonの電子書籍読み放題サービスのKindle Unlimitedでは読み放題の対象になっています。
ちなみに、Kindle Unlimitedはほかにもさまざまなクラシックギター関連のほうが読み放題になっているのでおすすめです。
ギタリストのための標準ギター・エチュード選集スケール編
スケール練習は重要なのですが、そうはいってもセゴビアのスケールばかりやるのは正直退屈です。
より実践的かつ弾いていて楽しいものとして、スケール練習を含む練習曲を弾くという方法があります。
そのためにおすすめなのが、「ギタリストのための標準ギター・エチュード選集スケール編」です。
この本にはスケール練習に適した練習曲のみを収録しており、かつアルペジオとスケールの切り替えが必要な曲など、スケールに関してより実際の曲に近い練習が可能です。
この本についてはこちらの記事も参照ください:
Complete Warm-Up for Classical Guitar
クラシックギターの指慣らしに適した素材を収録した教本ですが、スケール練習も入っています。
均一の音の長さだけでなく、長さの変化をつけるなど、飽きさせない工夫がなされています。
詳細はこちらの記事を参照ください:
スケール練習は上達への近道
スケール練習は正直言って地味です。
練習曲などを弾くよりも退屈な面があり、これが大好きという人はそれほど多くはないでしょう。
しかしながら、クラシックギターだけでなく、スケール練習はあらゆる楽器で有効な練習手段といわれています。
初級から中級、さらには上級を目指すなら、ぜひ毎日の練習に短時間でもスケール練習を取り入れてはいかがでしょうか。