本サイトではかなりマニアックに弦の紹介をしていますが、ちょっとマニアックすぎる感も出てきました。そこで、現在のトレンドに沿ったメーカーやブランドに絞った弦の紹介をしたいと思います。初心者から中級者の方もこの記事の内容をおさえておけば困ることはないかと思います。
クラシックギター弦の4大メーカー
世界中には様々なクラシックギター弦メーカーがありますが、現在日本でメジャーなメーカーは以下の4社といえます。
メーカー/ブランド | 国 | 特徴 | こんな人にお勧め |
サバレス | フランス | 昔は切れのいい音の弦を特徴としていたが、現在はカンティーガシリーズが人気となり、標準的な弦となっている。 | 現代のクラシックギターらしい音を楽しみたい人。 |
ダダリオ プロアルテ | アメリカ | 精度の良さと安定感が特徴の弦。ちょっと前までは安さもありデファクトだったが、現在はサバレスに押され気味の印象。 | 癖がなく中庸であっさりした音が好みの人 |
オーガスチン | アメリカ | 世界で初めてナイロン弦を製造したメーカー。昔ながらの弦しかずっと売っていなかったが、最近カーボン弦にも手を出した。 | 昔ながらの甘くて華やかな音が好きな人。 |
ハナバッハ | ドイツ | ギラギラ感の少ない落ち着いていて重厚な音が特徴。最近はあまり勢いがない印象。 | 落ち着いていて重厚な音が好きな人。 |
特徴は完全に私の個人的な印象です。
以下からそれぞれのメーカー/ブランドの詳細を書いていきます。
サバレス
創業は1770年という老舗のメーカーです。元々イタリアでやっていたのがパリに拠点を移したのがこの年なのだとか。
本サイトでのサバレスに関するレビュー等の記事は以下を参照ください:
もはやデファクトの「カンティーガ」シリーズ
おそらく現在のクラシックギター界で最も人気があり標準的な弦がサバレスの「カンティーガ」シリーズです。
新素材の芯線を使っており、しなやかでありながら力強い音が出ます。
現代においてはとりあえず迷ったらカンティーガにしておけば問題ないといっても過言ではありません。
カンティーガは低音弦のブランドなので高音弦が必要
注意したいのはカンティーガは低音弦のブランドであり、高音弦のブランドと組み合わせたものが1セットとなります。
とはいっても、ちゃんと高音弦がセットになったものが売っているのでご安心ください。
組み合わせは3種類です。
ニュークリスタルカンティーガ
高音弦にナイロン製の弦であるニュークリスタルを組み合わせたセットです。
ギタリストの福田進一も使っているセットです。
価格が最も安く、クラシックギターらしい音がするのでとりあえずこれを買っておくのがいいかと思います。
アリアンスカンティーガ
高音弦にカーボン弦であるアリアンスを組み合わせたセットです。
アリアンスはニュークリスタルに比べてこもりのない直線的な音がするので、そういった音が好みの人にはお勧めです。ただし、価格はニュークリスタルカンティーガより高いです。
このセットが最初に発売されたため、単に「カンティーガ」といった場合はこのセットをさすこともあります。
クリエイションカンティーガ
1,2弦がナイロン弦のニュークリスタル、3弦がカーボン弦のアリアンスになっているセットです。
クラシックギターの3弦は太く音がこもりやすいので、それを嫌ったギタリストが3弦だけアリアンスにするということが昔から行われていました。このセットは最初からその構成になっており、プロのギタリストも愛用者が多いです。
価格は3種類のセットの中間です。
カンティーガプレミアムも登場
カンティーガのヒットに気を良くしたのか、その後高級版である「カンティーガプレミアム」を発売しています。
通常のカンティーガに比べより重厚な音になり、寿命も延びています。価格はカンティーガよりも上です。
高音弦との組み合わせは通常のカンティーガと同じ3種類です。
カンティーガ以外はあまり人気がないかな
カンティーガ以外では村治佳織が昔使っていた「コラム」と低音弦があったりします。また、高音弦が研磨弦のピンクラベルとかがありました。
が、現在ではカンティーガがとにかく人気で他のセットはあまり勢いがありません。
詳細が知りたい人は以下の記事を参照ください:
ダダリオ プロアルテ
様々な弦の楽器を総合的に扱うメーカーがダダリオです。その中のクラシックギター向けの弦のブランドがプロアルテです。
本サイトのプロアルテに関するレビューなどの記事は以下を参照ください:
昔は迷ったらプロアルテだった
その昔は「迷ったらプロアルテ」が当たり前でした。
クラシックギター弦の高音弦は今よりも精度が低く、はずれ弦が大量にありました。その中ではプロアルテは精度が高くはずれが少ない信頼感のあるブランドでした。また、音としても癖がなく、これを音の基準とするのが当たり前でした。
さらに、価格も安かったため、かなりの人気を誇った弦でした。
値上げにつぐ値上げと新製品があまりヒットせず人気が落ちてきた
しかしながら、値上げにつぐ値上げあり、だんだんと人気が落ちてきました。
さらに新製品を出すもののあまり普及せず、カンティーガで成功したサバレスに徐々にシェアを食われていっています。
そうはいっても安定感と信頼感のあるナイロンのプロアルテ
そうはいってもナイロンのプロアルテは今でも品質は安定していますし、音に癖がないため、昔ながらのクラシックギターの音を楽しむには良い弦です。
カンティーガの次はこれを張ってみて違いを感じるのもいいかと思います。
また、つい先日には新しいコーティングを施したXTシリーズという弦を発売しました。
錆には強そうなので寿命を重視するならこちらもおすすめです。
他にも実は多種多様な弦を出しています。他のプロアルテ製品については以下の記事を参照ください:
オーガスチン
オーガスチンといえばクラシックギターのイノベーションであったナイロン弦を最初に発売したメーカーです。
本サイトのオーガスチンに関するレビュー等の記事は以下を参照ください:
同じ製品をずっと売り続けるオーガスチン
オーガスチンのすごいところはクラシックギターを世に広めた巨匠であるセゴビアの時代の弦を今でも売り続けているところです。
というか、つい先日まで新製品もなくずっとそれだけ売っていました。
シンプルな製品構成
オーガスチンの昔ながらの製品構成はシンプルです。
低音弦はテンションの低いほうから黒、赤、青の3種類(+ゴールドというのもありますが一般的でないので除外)。
高音弦はクラシック、インペリアル、リーガルの3種類。
これらを組み合わせたものがセットとなります。とりあえずオーガスチンらしい音を楽しみたい人は以下のオーガスチンの赤とクラシックのセットを試すのがいいかと思います。
音は甘くて華やか
オーガスチンの音の特徴といえばその独特の甘い音です。
セゴビアの時代のクラシックギターといえば、という音がします。これが好きな人はこの弦から離れられません。
また、低音弦も華やかな音がします。ちょっと荒れ気味の音になりがちですが、それはそれで昔ながらのクラシックギターらしい音といえます。
プロアルテと双璧だった
その昔はプロアルテとオーガスチンは双璧をなしており、人気が2分していました。
癖がなくて素直な音で品質のいいプロアルテに対し、高音弦の精度がいまいちではずれ弦も多いけど独特の甘い音がするオーガスチンという構図です。
プロアルテ派とオーガスチン派がいて、それぞれにすみわけ亜が合った印象です。
それが時代が進み、求められる音が変わってきたため、プロアルテとともにオーガスチンも人気が落ちてきた印象があります。
最近になってカーボン弦のパラゴンを発売
それが、ようやく最近になってカーボン弦の高音弦であるパラゴンを発売しました:
オーガスチンらしい個性的な音なのか!?と思ったらそんなこともなく、いまいち盛り上がりに欠けています。
ハナバッハ
ハナバッハはドイツの弦メーカーです。
華はないけど落ち着いていて重厚、というのが印象です。
ハナバッハのレビュー等の記事は以下を参照ください:
第3勢力だったがファンも多い
その昔はプロアルテとオーガスチンが前にいて、ハナバッハは第3勢力だった印象があります。
価格もプロアルテとオーガスチンよりも高めでした。
音に派手さがないのでぱっと弾いた感じは印象が薄いですが、味わいがありファンも多いです。
新製品を色々出すもあまりメジャーにならず
ハナバッハは一時期どんどん新製品を出していました。
チタニウム弦に手を出したと思ったらカーボン弦に手を出し、超高級弦のエクスクルーシブを出したり。
その結果、非常にバラエティに富んだ構成になっています:
ただ、どれもヒットになったという印象はなく、結局昔ながらのシルバースペシャルが一番人気です:
この辺りをおさえておけばほぼOK
他にも国産弦のフィガロ、特徴のある弦を出すアクイーラ、最近日本で正式に売られるようになったラベラ、カーボンとナイロンのハイブリッド弦が特徴のドーガルなど、様々なメーカーがあります。
私個人的にはこういったマイナーなメーカーの弦にもお勧めはあるのですが、とりあえずはという意味ではこの記事で紹介した弦をおさえておけばいいかと思います。
ちょっと弦を変えてみたいと思ったときにもこちらで紹介した弦をまずは試してもらい、さらにこのサイトを参考にして新しい弦も試してもらえるとうれしいです。
よりマニアックな弦のレビュー記事や話題の記事については以下を参照ください: