クラシックギターと見た目も弾き方もよく似ているフラメンコギターですが、ギター売り場では明確に分けられており、別の楽器として売られています。どのような違いがあるのでしょうか?
このサイトのクラシックギターの材料や楽器その物に関する記事は以下の記事でまとめてあります:
基本は同じ楽器だけど演奏する音楽の違いから「カスタマイズ」されている
結論から言うと、フラメンコギターとクラシックギターはほぼ同じ楽器です。世の中には「クラシック、フラメンコ両用ギター」というものがあるくらいです。
ただし、演奏する主な音楽が違うことから、その音楽に合ったカスタマイズがされています。
包丁で例えるなら中華料理に適している中華包丁と洋風料理で使う牛刀の違いでしょうか。主に扱う料理に適した形などをしていますが、それ以外の料理でも使えないことはないです。
フラメンコギターはフラメンコ音楽の演奏に適している
そして、フラメコンギターはその名の通りフラメンコ音楽の演奏に適しています。
そもそもフラメンコとは?
フラメンコはスペイン南部のアンダルシア地方に伝わる伝統芸能です。
ギターの伴奏がつくのが特徴で、この伴奏が発展してフラメンコギターというジャンルができています。
激しく力強い演奏が求められる
フラメンコは激しく力強い踊りと歌が特徴であり、それに負けない演奏がフラメンコギターに求められました。
クラシックギターは抒情的な曲や甘い音を聞かせるような曲も多いですが、フラメンコギターはとにかく速さと切れを求められます。
このためのカスタマイズがされているわけです。
クラシックギターに対するフラメンコギターの違い
それでは具体的にどういった点がクラシックギターと違うのでしょうか?
材料の違い
フラメンコギターに使われる材料の傾向はクラシックギターとは異なります。
表面板には主にスプルースが使われ、シダーが使われることはあまりありません。これはスプルースの方がどちらかというと歯切れのいい音が出るためです。
また、裏板には独特のシープレス(糸杉)と呼ばれる木が使われます。また、メイプル(楓)もクラシックギターに比べてよく使われます。これも歯切れのいい音を重視したためです。
板の厚みも薄く仕上げてあることが多いです。
…なのですが、シダーが使われないことはないですし、ローズウッド系の裏板も「ネグロ(黒)」と呼ばれ普通に使われます。したがって、材料の違いが決定的に違うとは言えず、あくまで「傾向」です。
ボディの厚みが薄い
フラメンコギターはクラシックギターに比べてボディの厚みが薄いことが多いです。
ボディが厚いと空気の容積が大きくなり、より低音が響くようになります。これを避けて端切れをよくするためにボディの厚みを薄くしています。
…が、どこまで薄くすればフラメンコかという規定もなく、そもそもクラシックギターでも薄いものもあるのでこれもあくまで「傾向」です。
弦高が低く、ネックが細く薄い
フラメンコギターには速弾きがよく出てきます。中には超絶技巧を駆使するようなものもあり、その速さはクラシックギターの比ではありません。
このため、フラメンコギターの弦高はかなり低く設定されます。強く弾けば弦がビビるのですが、それも音楽の1つと考えられています。
また、ネックも細く薄くなっており、これも演奏性を重視した結果です。
…のですが、これもどこまで下げればフラメンコかという規定もないですし、クラシックギターでも低くする人もいます。
内部の設計も違う
明確にフラメンコギターといわれているギターは内部の設計も異なります。
できるだけ歯切れのいい明るい音と鳴るように力木の配置を工夫しているようです。
…のですが、これもクラシックギターですら様々なバリエーションがあるので、こうでないといけないという決まりはありません。
表面板にゴルペ板をつける
フラメンコギターの演奏ではギターをたたく奏法がよく用いられます。
また、弦をかき鳴らす奏法も多いので、表面板を守るための板をつけています。これをゴルペ板と言います。
ゴルペ板はセルロイド製の板で、こんな感じで表面板につけます:
形状は2つに分かれていたりと様々ですが、爪が当たったり拳でたたいたりする場所を守るのは共通です。
これをつけると当然表面板の振動は妨げられるわけですが、ないとすぐにギターの表面板がボロボロになるので装着せざるを得ません。
ちなみに、クラシックギター用にペラペラのシートが売られていますが、これだとフラメンコの奏法には耐えれませんのでご注意ください。
フラメンコ用の弦もある
弦に関してもフラメンコギター用とされている弦が存在します。
代表的なところだと、プロアルテのEJ25B:
サバレスのトマティートや:
ハナバッハの827シリーズがあります:
また、ルシエールの弦もフラメンコギター向きといわれています:
クラシックギターに比べると種類は少なく、クラシックギター用の弦をフラメンコギターに使っている人も多いです。
クラシックギターをフラメンコ音楽に使ってもいいし、フラメンコギターをクラシック音楽に使ってもいいけど
このように違いはあれどそれは「カスタマイズ」の範囲にとどまっている両者です。
このため、フラメンコ音楽をやりたいと思ったときにクラシックギターを使ってもいいし、逆もまたしかりです。
ただし、牛刀や三徳包丁を使っても中華料理はできますが、中華包丁を使った方が中華料理は簡単にでき結果的においしくなります。これと同じようにフラメンコ音楽にはやはりフラメンコギターを使った方がいいかと。
両用ギターもありますが、どっちつかずになりかねないので、しっかり試奏したいものです。
…が、音の好みは人それぞれなので、フラメンコギターの音が好きだけどやりたいのはクラシック音楽であればフラメンコギターを使っても構わないとは思います。。。