クラシックギターの曲のなかには、調弦をスタンダードなものではないものにして弾く必要がある曲があります。6弦をD(レ)に落とすドロップDの曲は山のようにありますし、ドメニコーニのコユンババに至っては1弦以外すべて調弦が変わります。
そのような変調弦の曲を弾くためには調弦を変えなくてはいけませんが、結構面倒な作業。でも、自動チューナーであるRoadie 3ならかんたんに調弦を変えることがかのうです。
今回はそんなRoadie 3を実際に購入したのでレビューしたいと思います。
ペグを自動で回してくれるチューナー「Roadie 3」
Roadie 3は、一言でいうならペグを自動で回して音を合わせてくれるチューナーです。
普通のチューナーは現在の弦の音が理想的な音に対してどれくらいずれているかを示すことしかできず、実際の調弦は手でおこなう必要があります。
でも、Roadie 3にはペグを回すためのモーターが内蔵されており、音のずれ具合に応じて自動的にペグを回して音を合わせてくれるのです。
調弦が苦手な初心者にも、調弦をできるだけ楽にやりたい方にとってもありがたいアイテムとえいえるでしょう。
変則調弦にも対応
ギターチューナーのなかには、スタンダードな調弦でしか合わせられないものがあります。また、あらゆる音階に合わせられるクロマティックチューナーも、どの弦をどの音に合わせればいいかまでは教えてくれません。
これに対して、Roadie 3はあらゆる変則調弦に対応可能です。
もともと多くの変則調弦がプリセットされている(上図参照)うえに、カスタムで自由に変調弦を作成可能。
1弦と6弦をDに落とすアンドリュー・ヨークのサンバーストやムーンタン、果ては1弦以外すべて音を変えるドメニコーニのコユンババまで自由自在です。
実際に変則調弦で調弦している動画も後でお見せしたいと思います。
小型でバッテリー内蔵
Roadie 3は非常に小さく、手のひらに収まるほどのサイズです。
普通のチューナーよりは大きいですが、十分持ち歩けるサイズであるといえるでしょう。
なかにはスマホやノートPCと同じリチウムポリマー電池が内蔵されており、1回の充電で最大150弦調弦することができます。
なお、充電ケーブルはついていますが、ACアダプタはないため、USB ACアダプタを用意する必要があります。スマホのものを流用すればOKです。
高精度で安定性の高い調弦が可能
Roadie 3には調弦の精度や安定性を向上する2つの設定が用意されています。
1つ目がTune Upモード。これを有効にすると、調弦前に一度わざと音を低くし、そこから巻き上げて調弦をします。これにより、調弦後の音の安定性が増すというものです。
人間が手でやっていたノウハウを再現しており、実用的です。
また、精度(Accuracy)の設定に高速と高精度から選択可能。高精度を選べば、少し時間はかかりますが、より音程のあった演奏ができます。
多弦ギターをはじめ数多くの弦楽器に対応
Roadie 3が対応しているのはエレキ、アコースティック、クラシックといったギターだけではありません。
マンドリン、バンジョー、ウクレレなどにも対応しており、7弦、8弦、12弦といった多弦ギターでも使えます。
さらには自分でカスタム楽器を登録することができ、機械式ペグがついた楽器ならなんでも対応可能です。
ただし、バイオリンなどの木ペグ楽器や、ベースには非対応です。ベース用には別途Roadie BASSという製品があります。
複数の楽器を登録可能、各楽器の「癖」を覚えていく
1台のRoadie 3には複数の楽器を登録することができます。
この機能はギターとウクレレ、マンドリンなど異なる楽器を持っているときに役立ちます。
また、同じ楽器を複数持っている場合でもRoadie 3は、
同じタイプのギターであってもRoadie 3はギターを個別に学習・調整していく
とのことで、各楽器の調弦の癖を学習して動作を変えてくれるようです。
スマホ対応で各弦の周波数を個別に細かく調整できる
Roadie 3はスマホとの連携に対応しています。
スマホアプリを使うことにより、オリジナルの調弦を作成することができ、これによりあらゆる変調弦に対応できるという仕組みです。
さらに、単に各弦の音を変えるだけではなく、各音の周波数を細かく設定できます。
以下の記事でも書いたとおり、ギターは平均律楽器なので、開放弦で音を合わせても調によってはよく出る和音で濁りが生じることがあります。
これを見越してわざと各弦の周波数をずらしておけば、曲ごとに美しく響く和音を作り出せるわけです。
これもプロや上級者は自分でやっていることですが、こんなことまでRoadie 3なら自動化できます。
メトロノーム機能や電動ペグワインダー機能も内蔵
Roadie 3には、自動チューナー機能以外に、メトロノーム機能や電動ペグワインダー機能が内蔵されています。
メトロノームは、テンポ以外に、3拍子、4拍子といった拍も変えることが可能です。
また、音だけでなく本体に内蔵されたバイブレーションにより振動で拍を教えてくれるため、うるさいところでもポケットなどに入れて使うことができます。
電動ペグワインダー機能は、せっかく備わっているペグを回すモーターを利用した機能。
弦を交換する際に絶大な効果を発揮してくれます。
私は電動ドリルにダダリオのペグワインダーアタッチメント(PW-DBPW-01)をつけて使っていましたが、これよりもはるかに小さいうえに3段階で速度調整もでき、使いやすいです。
ペグを挿す部分が硬めの素材なのは残念
Roadie 3のペグを挿す部分は硬めのプラスチックでできています。
耐久性としては硬いほうが良いのでしょうが、柔らかめのペグボタンを使っている場合には気になります。
布などを挟んで使えば問題はありませんが、最初から柔らかくしてほしかったというのが正直なところです。
実際にクラシックギターをRoadie 3で自動調弦してみた
それでは実際に、クラシックギターをRoadie 3を使って自動調弦してみましょう。
スタンダードな調弦の場合
まずはスタンダードな調弦をRoadie 3でおこなった動画がこちらです。
Roadie 3をチューナーモードに入れ、ペグに挿し、弦を弾くと自動的にペグが回って調弦をしてくれます。
1つの弦の調弦が終わると自動的に次の弦の調弦モードに入ってくれるため、すべての弦をスムーズに調弦可能です。
もちろん、各弦を個別に調弦することも可能。
初心者であっても迷うことなく正確な調弦ができるでしょう。
今は弦を下から順番に調弦するモードにしていますが、上から調弦するモードにすることもできます。
ちなみに、表示部の「??」には本来アプリでつけた楽器名が表示されるのですが、「桜井」と日本語で入れたら文字化けしてしまいました。。。アルファベットで入れたほうがよさそうです。
スタンダードな調弦→コユンババの調弦
次に、スタンダードな調弦からコユンババの調弦に変える動画を紹介します。
まずはアプリを使ってコユンババ用の調弦を用意します。
上はドメニコーニが推奨している楽器に負担を書けない半音下げのチューニングですが、楽譜通りの調弦ももちろん可能。
用意ができたら、Roadie 3の調弦モードを作成したものに変え、ペグにRoadie 3を挿して弦を弾くだけです。
非常にかんたんに変則調弦にギターをセットできるのがわかるかと思います。
もちろん、ここまで極端な変則チューニングでなくとも、ドロップDなども同じようにかんたんにできます。
間違ってほかの弦を弾いても安心
自動でペグを回すと聞いて心配なのは、間違った弦を引いた場合にどうなるか、という点。ペグがどんどん回って弦を切ってしまうことはないでしょうか?
実際にRoadie 3が3弦をチューニングする状態に入っている状態で3弦に挿し、1弦を弾いてみました。
ペグを回しても音が変わらないため、エラーが表示され動作が止まります。
ただし、Roaide 3を挿したペグと弾いている弦が同じ場合には、Roadie 3は設定に従ってペグをどんどん回します。たとえば、1弦を調弦する状態で6弦に挿し、6弦を弾くと、Roadie 3はどんどん音が高くなるようにペグを回すのです。
Roadie 3は、自由な変則調弦を実現するため、どの弦を調弦しているからどのくらいの音という概念がありません。あくまで設定に従って動作するため、注意しましょう。
調弦の労力が格段に減る!
Roadie 3を使うと、これまでの調弦の苦労は何だったんだ?と思うくらいかんたんに調弦ができます。
ギターの初心者でまだ調弦がうまくできない方はもちろん、さまざまな変則調弦の曲を弾きたい中級者や上級者、さらには1つ1つの弦の周波数にこだわりたいプロまで便利に使えるでしょう。
メトロノーム機能や電動ペグワインダー機能も練習や楽器のメンテナンスには便利な機能です。
弦楽器をやるならぜひ一台持っておきたいデバイスであるといえます。