クラシックギター弾きの命である爪のコンディションは非常に重要です。にもかかわらず意外と爪の磨き方に無頓着な人が多いです。爪磨きの道具と手順について説明したいと思います。
こちらの記事では道具と手順について主に紹介しています。具体的な爪の長さ、形、整え方、磨き方についてはこちらの記事を参照ください:
また、爪の育て方についてはこちらを参照ください:
ギタリストの爪に関する記事は以下のまとめを参照ください:
爪切りは使わない
まず最初に重要なのが、爪切りは使ってはいけないという点です。
爪が伸びてしまうと面倒なのでばっさり爪切りで形を整えたくなりますが、これはいけません。
爪切りを使うと爪に大きな力がかかり、割れてしまうリスクが生まれます。爪切りの時に割れなくてもダメージを受けるのでよくありません。
どうしても爪切りを使いたい場合は、一般的な挟むタイプではなく、切れ味のいいニッパーのようなタイプ(ネイルニッパー)の方が爪への負担が少ないといわれています。
大まかな形を爪やすりで整える
なので、基本は爪切りは使わずに爪やすりで形を整えることになります。
大まかな形を整える爪やすりとしては、
- 金属製爪やすり
- ガラス製爪やすり
の2種類があります。
この時、爪の先端を磨いていくだけでなく、やすりを斜めにして爪の内側も磨いていくといいです。
適度なしなりがある金属製やすり
金属の板の表面が荒らしてあり、そこで爪を削るタイプの爪やすりです。
金属製なので適度なしなりがあり、まっすぐでない爪にもフィットするので使いやすいです。ただ、やすり面の細かさはそこそこです。
私がお勧めなのはこちらの金属製の爪やすりです。プロのギタリストもよく使っている資生堂のNA 501という爪やすりです。
が、残念ながら製造終了となり、現在は価格が高騰しています。
最近、サウンドファイルというプロのクラシックギタリストがすすめる爪やすりも登場し、私も購入しましたがかなりよかったです。
さらにこだわる人は爪の細胞を壊さないワタオカの爪やすりが最強かもしれません。
ガラス製爪やすり
比較的最近出てきたタイプの爪やすりです。ガラスの表面を荒らしたタイプのやすりです。
やすり面が細かい割にどんどん削れます。
私も一時期このタイプを使っていたのですが、やめました。
理由は、
- ガラスなのでしなりがなく、平たんでない爪を削るのに向いていない
- 削れすぎて気づいた時には削れすぎていた、ということがある
- やすり面が細かいが、結局後から紙やすり等で仕上げが必要なのは同じ
- 金属製やすりに比べて高いが、踏むとすぐ割れる
といった点です。
ただ、最近はナノ技術を使ってさらに粒子を細かし、後述する紙やすりが不要であることをうりにするガラス製爪ヤスリも登場しています。
時間がない方や面倒な方にはガラス製爪ヤスリもおすすめといえるかもしれません。
紙やすりで表面を磨く
次に紙やすりで爪の表面(というか先っぽ)を磨きます。
金属/ガラス製の爪やすりで磨いただけだと表面が荒れていて爪と弦がこすれるノイズが出ます。また、引っかかって弾きづらいです。
紙やすりで定評があるのは何といってもこちらのタミヤのフィニッシングペーパーです。
どの細かさの紙やすりで磨くか?というのは個人の好みもあるので試し試しやっていくしかありません。私は上記の仕上げセットを買って、金属製爪やすりの細かいほうの面で形を作った後、#1200 → #1500 → #2000の3段階で磨きます。
(※: やすりの細かさは#で始まる番号であらわされ、大きな番号ほど細かいです)
といっても、紙やすりを力を込めて長時間やるわけではありません。比較的さらっと、力を抜いて表面を短時間こするイメージです。なので、意外と時間はかかりません。
何分間も1つのやすりで磨く人もいますが、どれだけ頑張っても使っている細かさ以上の磨きはできません。
さらにラッピングフィルムや布やすり、革で仕上げ
細かい紙やすりで磨いたら終わりという人も多いのですが、もう1段階磨くと音が全然違います。
紙やすりは最高でも#2000の細かさしかありませんが、世の中にはさらに細かいやすりもあります。
私が使っているのはフィルム製のやすりで、超精密研磨フィルムというものです:
#15000という超細目のものまであります。これで磨くとさらに1ランク上の音になります。
他にも布やすりというのもあり、こちらも紙やすりよりも細かいです。弦で有名なルシエールがセットとして出しています:
また、セーム革等の革で磨くという人もいるようです。この場合は磨くというよりも革の脂を爪につけるイメージなのでしょうか?
楽器を磨くのにも使えて便利ですが、個人的には超精密研磨フィルムの方がいいかなと思います。
スポンジやすりもあり
紙やすりもいいのですが、爪の裏側が磨きづらいのと耐久性がないのが難点です。このため、スポンジやすり(スポンジ研磨材)を使うのも手です。
面倒でも手順を飛ばさない
重要なのは、面倒でも手順を飛ばしてはいけないという点です。
やすりをかける際は徐々に細かさを上げていく必要があります。金属製爪やすりの後にいきなり超精密研磨フィルムというのはだめです。必ず徐々にやすりの細かさを上げていく必要があります。
では、金属製爪やすりの後に#2000は良いのか?とか、#1500の後に#8000ではいけないのか?というとだめというわけではありません。ただ、時間は余計にかかります。
爪の表面は凸凹して山になっています。この山を平らにするときに大きな道具の方が速いです。しかしながら、小さい道具でも頑張れば平らにできます。
なので、#1000 –> #8000とするよりも、#1000 –> #1500 –> … –> #8000とした方が結果的に速く終わります。また、仕上げもきれいになります。
なので、私はたくさんのやすりを使っていますが、1つ1つを使う時間は10秒もかかりません。さらっと磨いて次に行きます。
爪の磨き方を見直せば音質の改善にも
爪はギターの音質を決める重要な要素であるにもかかわらず、こだわりが少ない人も多いです。
これはバイオリンの弓とは違って「無料」であるという点も影響しているのかな、とも思います。
しかしながら、無料ということは逆にお金を払ってよくすることが難しいとも言えます。
まずは磨き方を変えてみてその違いを実感するのは無駄ではないと思います。