クラシックギターの音色、音質の変化の付け方

テヌートギターさぽーを使ってギターを構える 楽器

クラシックギターの最大の魅力の1つは間違いなくその多彩な音色です。数ある楽器の中でももっとも多彩といってもいいのではないでしょうか。その魅力を最大限いかすためには変化をつける方法を知る必要があります。

他の楽器が捨て去った魅力、音色の変化

クラシックギターの魅力の1つとなっている音色や音質の変化は他の楽器が捨て去ったものとも言えます。

たとえばピアノは大きな音から小さな音まで出せる上に、誰が弾いても同じ音が出せるように設計されています。しかしながら、誰が弾いても同じ音が出せるということは変化のつけようがないとも言えます(実際には少し付けられます、後述します)。

また、バイオリンも美しい持続音を含んだメロディーを大きな音で奏でられるよう、弓を使って演奏します。しかしながら、音色の変化という意味ではギターに比べ乏しいです。

クラシックギターがクラシックギターらしく音楽を奏でるということはこの音色と音質の変化を活用するということに他ならないといえます。

クラシックギターで音色、音質の変化をつける方法

では、どのようにすればクラシックギターで変化をつけることができるのでしょうか。以下のようないろいろな方法があります:

  1. 弾く位置
  2. 爪を当てる角度
  3. 爪が当たる面積
  4. 弦を押し込む角度
  5. プランティング

それではそれぞれについて詳細を説明します。

弾く位置を変える

一番簡単で誰もがやっている方法は弾く位置を変えるという方法です。

  • 右手が弦を弾く位置をブリッジ(ギターのお尻)に近いところにすると硬めの音
  • 右手が弦を弾く位置をブリッジから遠いところにすると柔らかめの音

この方法で注意したいのは常にヘッドに近い側で弾いた方が柔らかい音が出るというわけではないという点です。

音の柔らかさは弦を弾く位置が弦の振動の半分の位置に近いほど柔らかくなります。開放弦であれば12フレットなのですが、より高いフレットを押さえるごとにその位置はだんだんとブリッジ寄りになります。

たとえば12フレットを押さえて開放弦よりも1オクターブ高い音を出すときは、12フレットの位置とブリッジの位置の真ん中が最も柔らかくなります。

このため、以下の記事でも書きましたが、柔らかい音/硬い音を出すときに常に同じ場所で弦を弾くのではなく、フレットを押さえる位置によって弾く位置を調整してやる必要があります

上の記事で書いたとおり、特にハイポジションでヘッド側で弦を弾くと、むしろ硬い音を出してしまっているケースがあります。押さえているフレットと弦長を意識して弾く位置を調整しましょう。

爪を当てる角度を変える

次の方法は爪を当てる角度を変える方法です。

  • 爪を弦に対して斜めに当てると柔らかい音
  • 爪を弦に対して垂直に当てると硬めの音

図にすると以下のようになります:

左側は弦に対して爪を斜めに弾いている場合です。この場合は柔らかめの音になります。右側は逆に垂直に近い角度であり硬めの音になります。

この方法での音色の変化は弾く位置を変える方法に比べると変化の大きさは小さいです。しかしながら、弾く位置を変える方法は変えるのに時間がかかるのに対し、爪の角度は比較的すぐに行うことができます。このため、1つのフレーズの中で部分的にアクセントとして音色を変えたいときなどに使うことができます

爪が弦に当たる面積を変える

爪が弦に当たる面積を変えると音質が変わります

  • 爪が弦に当たる面積が広いと太い音
  • 爪が弦に当たる面積が狭いと細い音

この変化をつけるのは色々な方法があります。たとえば、爪を弦に差し入れる深さを浅くしたり深くしたりしても良いですし、指を伸ばし気味にしたり丸め気味にしたりしても変わります。

爪の形や長さによっても変わりますのでいろいろ試してみると良いかと思います。

弦を押し込む角度を変える

以下の記事でも書きましたが、ギターという楽器は構造上、表面板に対して縦方向の振動は音になりますが、横方向の振動は音になりづらいです:

このため、爪が弦を押し込むときの表面板に対する角度を変えることで音色の変化を生むことができます

  • 表面板に対して垂直に近い角度の場合は木の音色で大きい音
  • 表面板に対して平行に近い角度の場合は弦の音色で小さめの音

いわゆる、アポヤンドとアルアイレの音色の違いです。アポヤンドの方が表面板に対して垂直に近い角度で弦を押し込んでおり、アルアイレとは異なる音色になります。

最近はアルアイレでもアポヤンドと同じ音色を出せるようにするのが主流になっていますのが、このためにはこの方法を使い、アルアイレで表面板に対して垂直に近い角度で押し込むようにします。

ただし、アポヤンドが不要というわけではなく、アルアイレでも(従来の)アポヤンドの音が出せ、アポヤンドはアポヤンドでしか出せない音を出せるのが理想かと思います。

プランティングを使う/使わない

クラシックギターを弾くときには爪を使う人が多いかと思いますが、爪が弦に当たるときにタッチノイズが出ます。爪でなくとも指が弦に触れても小さくてもタッチノイズは出ます。このタッチノイズでも音色の変化が生まれます。

ピアノで研究がなされているのですが、同じ強さで鍵盤をたたくとき、鍵盤に指が触れた状態から鍵盤をたたく場合と、鍵盤の上から指を下ろして鍵盤をたたいた場合で音色に違いが出るそうです。これは鍵盤に指が触れた瞬間に発生するタッチノイズによるもので、タッチノイズがある方がより硬い音に聞こえるのだとか。

ギターでも「カチカチ」という耳障りな爪のノイズは論外として、耳にはっきりと聞こえなくても爪や指のタッチノイズは音色に変化をもたらします。

クラシックギターでタッチノイズを発生させない方法といえばプランティングです。

  • プランティングを使ってタッチノイズを減らすと柔らかい音
  • プランティングを使わないでタッチノイズを出すと硬めの音

プランティングはどちらかというと弾きやすさの意味で使われることが多いですが、タッチノイズに着目するとプランティングはピアノの鍵盤を触った状態から弾く方法に近いです。このためプランティングを使うと音色は柔らかくなると考えられます。

プランティングを使わない場合はタッチノイズが生まれますので硬めの音になります。

プランティングについてはこちらの記事も参照ください:

(参考) ピアノのハンマーのしなり

これはクラシックギターには応用ができなさそうですが、ピアノにはもう1つ音色の変化を生む要因があります。それはハンマーのしなりだそうです。

piano
大阪教育大学のHPより

上はピアノの構造を示した図になります。鍵盤を押すとハンマーが弦をたたくのですが、同じ強さの音を出すときでもハンマーの速度によってハンマーを支えている横棒の部分のしなりが変わり、弦をたたく位置が変わり、音色が変わるのだそうです。

ギターでいうと弦を弾く位置を変えることに相当するのでそのまま応用はできないかな、と思いましたが、弦を弾く速度というのは何か関係しそうな気もします。

ギターらしい音楽を奏でるために

最近は音量の大きさがもてはやされて音色の変化はおざなりにされているような気がします。

しかしながら、クラシックギターの最大の魅力はやはり音色にあると私は思います。

曲を弾くだけで精いっぱいということもあるでしょうが、たまには1音だけを音色を変えて弾いてみてください。美しい音、艶やかな音、強靭な音、寂しい音、いろいろな音を感じることができると思います。

そんなギターの魅力を大事にして弾いていきたいものです。

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