クラシックギターという楽器はピアノとは違い、弾くたびに調弦を行う必要があります。調弦がくるっていると和音が汚く、音楽を楽しめません。この記事ではクラシックギターで調弦を行う方法を紹介します。
クラシックギターは原理的に100%調弦が合うことはない
いきなり逆説的な内容ですが、クラシックギターは原理的に100%調弦が合うことはありません。
たとえば、自分なりの最高の調弦をした後に、6弦の4フレットのハーモニックスと、3弦の1フレットを押さえた音を比べてみてください。どちらもソ#ですが、どれだけチューナーで開放弦の音をあわせてもこの2つの音は濁って聞こえるかと思います。これはハーモニックスが純正律音なのに対して実音が平均律音であるために起こる誤差から生じます。
平均律と純正律については以下の記事も参照ください:
したがって、いくら調弦をしても濁る音は濁ります。ここで紹介する調弦方法は一般的なものなので、もっと追い込もうと思うのであれば曲ごとにその曲に出てくる和音が美しく響くように調弦を微妙に調節する必要があります。
耳で合わせる
もっともコストがかからない方法は「耳で合わせる」です。
この方法は絶対音感を持っている人であれば可能ですが、そうでない人にはおすすめできません。少なくとも基準となる1音は何かと合わせた方が良いです。
1音を基準に6本の弦を合わせる
割と昔からの方法としては1音を基準に6本の弦を順番に合わせていく方法があります。
基準にするのは5弦の開放弦(ラ)を使うのが一般的で、このような音叉を使います:
使い方としては、まず、以下のように5弦の音を合わせます:
- 音叉をひざなどにぶつけて鳴らす
- 音叉の根元をギターに押し付け、ギターを共鳴させる
- 5弦を慣らし、音叉の共鳴音と5弦の音にうなりがなくなるようにする
その後、5弦を基準に6,4,3,2,1弦を合わせていきます。
誤差の積み重なりに注意
一般的には、6弦の5フレットと5弦の開放弦、5弦の5フレットと4弦の開放弦…といった形で順次合わせていきます。ただし、この方法はだんだんと調弦の誤差が1弦に向かって積み重なるため、終わった後に追加の調弦確認が必要です。
具体的には1弦の5フレットと5弦の開放弦のうなりを見たり、比較的誤差の少ない6弦の開放弦と1弦の開放弦のうなりを見たりして、その後1→2→の順番に調弦をしていく方法があります。
ハーモニックスで合わせてはいけない
ここで注意したいのは、5弦を基準にほかの弦を調弦するときにハーモニックスを使って調弦してはいけないという点です。
ギターは平均律楽器ですので、各フレットを押さえた時に出る音は平均律の音程です。これに対して、ハーモニックスの音は純正律の音程になります。この2つには差があるため、ハーモニックスで合わせてしまうとうまく調弦ができません。
平均律と純正律の違いは、詳細は上でも紹介した以下の記事を参照ください:
微妙な差なので、あまり敏感でない人は気づかないかもしれません。また、ハーモニックスで合わせた方が音を伸ばしやすいので合わせやすいのも事実です。大体のところを合わせるにはハーモニックスを使い、その後実音で追い込むというのも手です。
基準となる周波数がいろいろある
実は音叉の中には周波数が440Hzのものもあれば、442Hzのものもあります。上で紹介したのは440Hzですが、こちらは442Hzです:
この違い、一人で弾いている分には好みで決めてもらえばいいです。一般的には周波数が高いほうが緊張感のある音になります。
しかしながら、他の人と合奏するときには同じHzにしなくてはいけません。周波数が1Hz異なると1秒間に1回うなりを感じますので、結構気になります。
チューナーを使う
最近では電子チューナーが安くなっていますので、これを使うのが今は一般的ですし、お手軽です。中には自動で糸巻を回してチューニングしてくれるものもあります。
おすすめのチューナーは以下の記事を参照ください:
チューナーにも誤差がある
チューナーは100%完全に音を合わせてくれるものではなく誤差があります。このため、チューナーで合わせた後に調弦を耳で確認する作業は必要です。
また、個体差もあるため、複数人で合奏するときは1つのチューナーを全員で使いまわすか、耳でしっかり全員の音があっているか確認すべきです。
やっぱり基準音に注意
また、チューナーに関しても基準音の確認は重要です。
特に安いチューナーの中には440Hzしか使えないようなものがあり、他の人が違う基準音を使っているとうなりが生じます。
別々のチューナーを使う場合は合奏を始める前に必ず全員のチューナーの基準音を確認しましょう。
音感を養う意味でも耳での調弦はやった方が良い
いずれの方法も誤差はどうしても付きまといますし、和音によってはどれだけ開放弦が正確でも原理的に濁りが生じます。
このため、最初のチューニングは音叉やチューナーを使い、その後その曲に一番よく出てくる和音を耳で聞いて濁りを取るのが一番おすすめです。
最初はわからないかもしれませんが、やっていくうちに耳が鍛えられ、音感が良くなってきます。
和音を楽しむ楽器であるからこそ調弦には人一倍気を遣うようにしましょう。