クラシックギターを弾いている人でもその歴史や構造をしっかり理解している人は少ないものです。また、名器と呼ばれる楽器や名ギタリストについても、名前を聞いたことはあっても詳しくは知らないという人が多いのではないでしょうか。「CDでわかるギターの名器と名曲」はそんなクラシックギターの基本を解説してくれる1冊です。
濱田 滋郎氏が「1冊でギターのことがよくわかる」本として執筆
この本は「1冊でギターのことがよくわかる」ことを目的として書かれた手引き書です。
昨年惜しまれつつ亡くなった著者の濱田 滋郎氏は、クラシックギターのことが1冊でよくわかる本が世間にないため、この本を作ったと後書きで書いています。
確かに、さまざまな本の中に断片的にさまざまな情報がありますが、1冊にまとまっているのは珍しいでしょう。
ギターの歴史や構造がよくわかる
この本ではクラシックギター弾きなら知っておきたい、ギターの歴史や構造について詳しく解説されています。
そのなかにはたとえば、
- リュートは考え方によってはギターの祖先ではない
- 有名な「きよしこの夜」は実はギター伴奏で初演された
といったことが書かれており、大変興味深いです。
また、内部構造も含めたギターの構造についての解説もあり、ギター弾きならぜひ知っておきたい知識が詰まっています。
名器や名ギタリスト、名曲について詳しく解説
また、名器と呼ばれる楽器、名ギタリスト、名曲についても詳しく解説されています。
名器についてはトーレスに始まり現代のスモールマンまで網羅され、たとえ買えなくても見ているだけで楽しいです。
現代的なギターの生みの親であるトーレスについてはこちらの記事を参照ください:
名ギタリストも過去から現代まで紹介されており、逸話についても書かれており興味深く読めました。
また、名曲については作曲された背景やなぜ名曲と呼ばれるかについても触れられており、よりそれぞれの曲を理解できるでしょう。
村治佳織による「ギターの世界」や対談も
ギタリストから見たクラシックギターの世界についても紹介されています。
村治佳織が自分がギターを始めたきっかけや留学、ギターへの思い、これからについて語っており、ギターを弾く人なら参考になることがあるでしょう。
著者と村治佳織によるギターについての対談も収録されており、二人のギターに対する熱い思いが見て取れます。
名器の聞き比べがないのは残念
この「CDでわかる」シリーズにはヴァイオリン編があり、そちらには名器と呼ばれる複数の楽器で同じ曲を演奏した聞き比べがCDに収録されています。
しかしながら、ギター編のCDは今までの音源からピックアップしたものが収録されているだけであり、名器の聞き比べができません。この点は残念です。
本の部分はギター編の方が優れていると感じたので、本当にこの点だけが残念でした。
クラシックギターの名器聞き比べについては、福田進一がCDをリリースしています。
このCDには、
- 桜井正樹(2010, RF-マエストロ・モデル)
- ホセ・ルビオ(1966 / ニュー・ヨーク)
- サントス・エルナンデス(1932 / マドリッド)
- ヘルマン・ハウザー1世(1947 / ミュンヘン)
- イグナシオ・フレタ・エ・イーホス(1998 / バルセロナ)
- ヘルマン・ハウザー III(2008, ジュビリー)
で演奏された曲が収録されています。
残念ながら絶版状態、中古の古本で手に入れるしか
ここまでおすすめしてきた「CDでわかるギターの名器と名曲」ですが、残念ながら現在では絶版状態のようです。
一通り探してみましたが、少なくとも主要なネットショップでは新品の在庫が全滅状態でした。
このため、手に入れるにはAmazonなどで販売されている古本を購入するしかないでしょう。
それなりに人気があるのか、定価(1,800円+税)よりも高い価格で販売されていることもあります。
このため、ぜひ買って読んでほしいとは言いづらいのですが、一読の価値がある本だと思います。
ギターについてより深く知りたい人は探してみてはいかがでしょうか。