クラシックギター弾きにとって爪の整え方や磨き方は永遠の課題です。いくらギターがよくても指が回っても、爪がだめだとすべてが台無しになります。そして、爪は生まれつきのものなのでお金でどうなるものでもありません。爪の形があまりよくない私が30年くらいギターを弾いてきて辿り着いた爪の整え方と磨き方を紹介します。
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ギタリストの爪に関する記事は以下のまとめを参照ください:
終わらない悩み、それは爪
爪でギターを弾いている人の中にも爪の悩みを持った人は多いかと思います。
私もその一人で、生まれ付いた爪の形に悩んでいます。
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上は薬指なのですが、見ての通り、きれいに弧を描いているような形ではなく、右側(表から見ると左側)のところでかくっと折れてしまっています。折れたところで弦が爪に引っかかってしまいます。。。
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また、中指も真ん中のところが2か所折れて盛り上がってしまっていて、滑らかな形ではありません。
親指も薬指と同様に折れているところがあり、とにかく弦に爪が引っかかっていました。
かれこれ30年くらいクラシックギターを弾き続きていますが、最近ではどうにか爪が弦に引っかからない形、整え方、磨き方を会得した気がします。
意識を変えてくれたPumping Nylon
私の意識を変えてくれたのがスコットテナントのPumping Nylonというギターの教本です。
この本にはギターの弾き方だけではなく構え方や爪の形の整え方まで幅広く紹介されています。爪の形のところでは、人それぞれの爪の形に合わせた最適な爪の形や弾き方が紹介されています:
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それまで私は世の中でいわれていた「クラシックギターを弾くにはこう削る」という一択しか爪の形はないと思っていたので衝撃を受けました。
ちなみに、私が使っているのは英語版ですが、Pumping Nylonは英語版だと練習曲もセットになってお買い得です。日本語版の方がわかりやすいのは確かなので悩ましいところですが。。。
私流の爪の長さ、形づくり、整え方、磨き方
ただ、スコットテナントの教本も人間を大まかに大別した爪の形しか紹介されておらず、私のように途中で折れているような爪の人用の記述はありませんでした。
そこで、いろいろ試行錯誤した結果、このようなやり方をしています。
使う道具についてはこちらの記事を参照ください:
また、爪の育て方についてはこちらの記事を参照ください:
爪の形と弾き方
現在の爪の形はこんな感じになっています。
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人差し指
まず、人差し指に関しては幸い4本の指の中ではきれいな形をしているので、最近主流である左側で肉と爪をほぼ同時にあて、そこから右上方向に滑らせていく弾き方をしています:

ただ、よく見てもらうとわかりますが、爪の左の方がやっぱり折れているところがあります。できるだけ折れている部分を使わないように、そのあたりで肉と爪にあたるように長さを調節しています。
このため、全体的にあまり爪を長くすることができず、このような長さになっています。
中指
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次に中指ですが、この指は爪の左と右で2か所折れてしまっています。なので、まずは左側の折れたところで爪と肉が当たるように長さを調整しています。
そして、通常は左から右にかけて爪を長くしているところを、右の折れたところに当たらないように、あえて右端の方は削り落としています。
薬指
そして、一番問題の薬指です。この指がもっとも苦労しました。
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最終的には普通に言われている爪の左から右上方向に抜ける弾き方をあきらめ、薬指だけ真ん中から右下方向に抜ける弾き方をしています。
これにより、極端に折れ曲がった部分を使わなくても済むようになりました。
このような右下方向に抜けるやり方は上で紹介されているPumping Nylonでも爪の形によっては推奨されているやり方です。
i, m, aの中で一本だけ右下方向への弾き方で違和感がないのか?と思われるかもしれませんが、意外と問題ありません。
親指
親指は正直まだ試行錯誤中です。
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今のところ、左下から右上方向に弾くのと、真ん中付近から左下方向に弾くやり方を混在させています。
私は第1関節がまっすぐな状態から反ることができないため、あまり親指を柔軟に使えません。また、この指も左で折れているところがある(赤と青の矢印が交わるあたり)のでそこを使わないように手首の角度自体を変えて何とかしようとしています、が、まだしっくり来ていません。
爪の先の整え方
長さと形が決まったら次に爪の先を整えます。
人によっては形づくりからいきなり磨きに入る人がいますが、私のように爪の形がきれいでない人間にはこの爪の先を整えるのが重要と感じています。
といっても、ものすごく難しいことをするわけではありません。
弦の通るルートをたどってみる
まず、弦の通るルートを指でたどってみます。
私ほど極端でなくても爪には細かい凹凸や折れがあり、表から見てきれいな形をしていても弦が通る個所が滑らかであるとは限りません。このため、実際に弦が通るルートを指で触ることで実際になめらかかどうかを確かめます。
完全な引っ掛かりでなくても意外とスムーズでない個所や曲がっているような個所が見つかるかと思います。特に、形や長さを整えた後はある個所だけ極端に削ったりして、その周りとの間で段差ができてたりします。
そんな場所が見つかったらそこを金属やすりの細かい面で削ります。
この時、引っかかる個所だけ削ってはだめです。それをするとそれ以外との場所との間で段差ができ、逆に滑らかでなくなったりします。また、削るときは弦が通る方向に削り、逆方向には動かさないようにします。できるだけ力を抜き、引っかかったり段差があるところだけ削られるようにします。
面倒に思うかもしれませんが、意外と時間はかかりませんし、このひと手間が違いを生みます。
爪の先を丸く整える
ここまでで整えられた爪は、極端に横から見た頭を描くと、下のようになっているかと思います。
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ここでポイントは、爪やすりで整えられた爪は先が角ばっているという点です。通常、爪は爪の先ではなく、先の下部分を使って弾くことになるかと思います。そうすると、爪から弦が離れるときに先の角にあたり、ノイズが生まれます。
そこで、爪の先が丸くなるように爪の先を整えます。
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爪の上側はどうでもいいのでは?と思うかもしれませんが、こっちも角ばっているとどこかにぶつけたり引っかかった時に爪が割れる可能性が高くなるので丸くした方がいいです。
丸くするのは爪の先の先のちょっとの部分だけで良いです。やりすぎると逆に爪の先がとがりすぎてノイズの原因になったり割れやすくなったりします。
やり方ですが、これも金属爪やすりの細かい面を使います。細かい面で少しずつ角度を変えながら角を落としていきます。削るというよりはなでるくらいのやさしさで良いです。また、上の図のように完全に丸くすることを目指すのではなく、そうなるような意識で整えられれば十分です。
終わったらもう一度指で弦が通るルートをなで、なめらかであることを確認します。
爪を磨く
ここまで終わったらあとは磨きます。
細かさは人それぞれ好みで
私は上の記事で書いたとおり、紙やすりの1200番→1500番→2000番で磨いた後で超精密研磨フィルムの4000番→6000番→8000番で磨きます。
どれくらいツルツルにするかは好みによりますのでどこまでやるかは人それぞれかと思います。ただ、最初から細かすぎる番手で磨かないことと、荒い紙やすりで磨きすぎないことは重要かと思います。
まずは一通り荒いのから細かいのまで試してみて好みの音が出る細かさを探すといいかと思います。
爪の先だけでなく裏も「丸く」磨く
爪を磨く、といわれて爪の先だけをひたすら磨いている人もいるかと思いますが、それはいまいちです。先ばかり磨くとせっかく丸く整えた爪の先がまたとがってしまいます:
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目指すべきは丸くなった爪の先です:
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なので、先だけではなく、爪の先が丸くなることを意識して、角度を変えながら磨くことが重要です。
また、弦が当たる爪の裏側もしっかり磨くことが重要です。ここがザラザラだといくら先がツルツルでも弦はノイズを発します。
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こんな感じでやすりで爪を挟んで磨いていきます。先端だけ磨いている人をよく見ますが、それでは弦が当たるところをカバーできません。
ただ、やりすぎると爪と肉の間にやすりが食い込んで痛いのでほどほどに。。。
この作業も終わったら弦が通るルートを指先で滑らかかどうか確認しておきます。
紙やすりの使い方にはコツがありますので、こちらの記事を参考にしてください:
最近は裏を磨くことも考えるとスポンジ研磨材が良いと思っています。
形づくりと磨くのが同時にできるナノ技術応用爪やすりも
ここまで読んでなんか面倒だな、と思った人には、形づくりと磨くのが同時にできてしまう、ナノ技術を応用した爪やすりもあります:
これなら一度で済むので省エネです。
爪の形の悪さでギターをあきらめたくない
爪の形の悪さはずっとギターを弾くうえでコンプレックスでしたが、いろいろ努力した結果、今ではそれほど気にならなくなりました。
もちろん、最初から爪の形がきれいな人がうらやましいのは確かですが、逆に形が悪いからこそいろいろ気づくこともあったかと。
同じく爪の形で悩んでいる人の助けとなれば幸いです。
追記: 爪の形と長さについてより詳細な記事を書きました。