ギター材料の柾目と板目 なぜ表面板は柾目だけなのに裏板は板目もあるのか?

楽器
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色々なギターの裏板を見るとうねうねと美しい木目があるものや、シンプルでまっすぐな木目なものがあります。実はこれらは同じ木から板を切り出すときの切り方で決まります。でも、表面板だけは常にまっすぐな木目だけです。なぜなのでしょうか?

丸太からの切り出し方で変わる柾目と板目

木には成長の過程を示す年輪があり、これがギター等に加工したときの木目になります。

木は円柱形でありその中心から外側に向かって円を描くように年輪は形成されます。ギター等に加工するときはこの円柱から板を切り出すのですが、この切り出し方によって大きく2種類にわかれます。これが柾目と板目です:

Wellnest homeのHPより

上の参考写真のように、木材をピザやバームクーヘンのように切り出すと柾目、単純に端から薄切りにしていくと板目になります。

価格は柾目の方が高い

一般的に柾目と板目を比べると柾目の方が高価であるといわれています。

理由は同じ木材から取れる板のサイズによります。

アルブル木工教室のHPより

板目の場合は木材の直径を活かして大きな板が取れるのに対し、柾目をとろうとすると半径以下の材料しか取れません。したがって、同じサイズの板(たとえばギターの裏板)をとろうとすると、より大きな木材が必要になり、柾目の方が高くなります

また上の参考写真を見てもわかる通り、柾目だと無駄になる部分が多いです。このことも価格を上げる要因となっています。

このため高価な材料であるハカランダなどは柾目の材料を使ったものはなかなかなく、あってもものすごい値段になるのですね。一方、比較的木材資源として豊富なローズウッドは柾目がメインとなっています。

見た目のダイナミックさは板目の方がいい

そして、柾目の材料を使うのか板目の材料を使うかによってギターの表情が大きく変わります。

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https://eos1d3.exblog.jp/8812840/ より

上の参考写真の右下が柾目、他が板目です。

柾目にはシンプルで落ち着いた品の良さがありますが、板目はダイナミックに木目を生かした力強さがあります。

どちらの方がいいかは人それぞれではありますが、ギター一本一本の表情を楽しむなら板目の方が表情豊かであるといえそうです。

響きがよくて丈夫な柾目

一方、柾目にもメリットがあります。

音の伝導性が良い

楽器に使うときに最も重要な特性は音の伝導性が良いということです。

このためにギターの表面版(トップ)には柾目しか使われていません。これはヴァイオリンやピアノでも同様なのだとか。

ちなみに日本の伝統楽器である箏は柾目と板目と両方あるようです。大きな木材が必要だからでしょうか。

一方、ギターの裏板に板目が使われるのは、ギターの裏板は必ずしも響きを重視しておらず、むしろ音を受け止めて反射することが目的だからでしょう。

反りや歪みが少ない

まず一番の特徴は時間がたっても反りや歪みが少ないという点です。

木材は温度や湿度によって収縮を繰り返しますが、その方向は年輪に対して直角方向です。したがって、以下の参考写真のように、柾目の場合は1方向かつ横方向にのみ木材が収縮します(ヴァイオリンの例です):

佐々木ヴァイオリン工房のHPより

一歩、板目だと年輪が木材に対して一方向ではなく、かつ縦方向に存在します。したがって、収縮が横だけでなく縦や斜め方向におきます。この結果、材料の反りが生じます:

佐々木ヴァイオリン工房のHPより

参考にさせていただいた佐々木ヴァイオリン工房さんによると、ヴァイオリンは楽器の寿命をとても長く考えられており、したがって故障の要因となる板目材は使われないそうです。何百年もたっても良い音を出し続けているストラディバリウスやガルネリが今でも現役なのはこういうところにあるのかもしれません。ギターは現代的な形になってまだまだ100年そこらですからね。。。

強度についてはあまり気にしなくていい?

ギターとして使うときには強度はどちらもあまり気にする必要はなさそうです。

調べてみて面白かったのは野球のバットの話です。

野球の木製バットも木材からできているので当然柾目と板目があります。実は、板目の部分で打つとバットが折れてしまうことがあるので、ボールを打つ時は柾目の部分でうつのが長年の常識だったのだそうです。

これが、最近アメリカのメーカーがメイプル製のバットの場合はむしろ板目の方が丈夫だという見解を出してよくわからない状況になっているのだとか。

といっても差は20%程度らしいですし、ギターとして使われる状況を考えるとそれほど強度が求められるものでもないので気にする必要はないのではないかと思います。

追柾目に注意

ここまで柾目と板目の話を書いてきましたが、実はこの中間の追柾目というものが存在します。

アルブル木工教室のHPより

追柾目は単純に言うと、横から見ると柾目だけど上から見ると板目になっている材料のことです。

上のヴァイオリン工房さんの情報にもあった通り、柾目の反りや歪みが少ない理由は木目の方向が材料の方向とそろっているからなのですが、追柾目はこれがそろっていません。

このため、もちろん板目よりはましなのですが、柾目よりは反りやすいという特性があります。

困ったことに素人が見ても材料が柾目なのか追柾目なのかわかりません。材料を上から見られればわかりますが、ギターになった時点で上から見ることはできません。

店としても「追い柾目」というよりは「柾目」といった方が聞こえがいいので「柾目」といっているようです。

柾目にこだわりがある方はこの点も気を付けた方がいいかもしれません。

クラシックギターの場合は裏板と側面板だけ気にしていればOK

クラシックギターの場合、今のところ表面板は柾目でしか作られておらず、気にする必要はありません。

一方、裏板と側面板は柾目、板目両方存在しており、選ぶときのポイントになります。

一番の差は前述の通り見た目です。楽器は音が一番とは言え意外と見た目も大事です。気に入った見た目のギターでないと弾く気が起こらずしまいっぱなしになるかもしれませんが、見ていて楽しいギターは弾く機会も増えるかと思います。

音についてはギターの裏板と側面板の主目的は響かせることではないのでそれほど柾目と板目を気にする必要はないかと思います。それよりも音に影響を与える要素はたくさんありますので、まずは弾いた印象で絞り込んでいくのがいいかと。

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