ギターの保護及び保管に利用するギターケースとしては、大きく分けてハードケースとセミハードケースの2種類があります。それぞれに長所と短所があってどちらを選ぶべきか迷う方も多いかもしれません。両方使ったことがある筆者が実体験に基づいておすすめを解説します。
クラシックギター用ケースについてはこちらの記事でさまざまな製品を比較しています:
ギターケースは大きく分けて4種類
まず最初に解説したいのは、ギターケースの構造です。
ギターケースは一般的に3つの層からなっています:
層 | 役割 |
外殻 | ギターを強い衝撃や刺突、雨などから守る。 |
パッド | 強い衝撃がギターに伝わらないようにする。 |
内装 | ギターが傷つかないようにする。 |
そして、ギターケースの種類は大きく分けて以下の4種類がありますが、これらの層の構成に違いがあります:
種類 | 外殻 | パッド | 内装 | 特徴 |
ソフトケース | × | × | △ | 保護のための外殻やパッドがなく、ギターをほこりから守るだけのもの。 |
ギグバッグ | × | ○ | ○ | ソフトケースに厚みのある柔らかいパッドが加わったもの。 |
セミハードケース | × | ○ | ○ | パッドが発泡スチロールなどのある程度硬くて断熱性と防湿性が加わったもの。 |
ハードケース | ○ | ○ | ○ | 硬い素材でできた外殻を持つもの。 |
このうち、ギターをしっかりと保護したいと思ったらハードケースかセミハードケースがおすすめです。
ソフトケースは何の保護機能もないので論外ですが、ギグバッグも硬い保護素材を持たないため防御力には不安があります。とはいえ、用途によってはこれでもよいかもしれません。
この記事ではある程度安心して楽器を入れられるハードケースとセミハードケースについて、用途別におすすめを解説します。
実体験に基づいてハードケースとセミハードケースの違いを解説
筆者はこれまで以下の4種類のケースを使ってきました:
種類 | 製品名 |
ハードケース | アランフェスケース |
桜井マエストロRF専用ケース | |
ヒスコックスケース | |
セミハードケース | スーパーライトケース |
この経験やいろいろとギター関連の情報を集めてた結果から特徴や違いを解説します。
必ずしも重いとも防御力が高いともいえないハードケース
ハードケースの一般的なイメージは、重いけど防御力が高いといったものかと思います。
しかしながら、残念ながらこれは必ずしもすべてのケースに当てはまるものではありません。
たとえばアランフェスケースのカーボン版は2.3kg、COCOON スペリオールカーボンファイバーケースは2.0kgとセミハードケースよりも軽いものが存在します。
ただし、注意したいのは軽いハードケースはそれだけ防御力を犠牲にしているという点。
たとえばパッドの厚みが薄かったり、外殻があっても弱かったりする可能性があります。実際、私はアランフェスケースを使っていましたが、お世辞にもパッドが厚いとはいえませんでした。
また、同じ素材を使っているのであれば、重いほうが防御力は高いです。
たとえばカーボン製の外殻を持つケースの中でも、レオナケースは3.1kgと重く、それだけ防御力に重点を置いていることがわかります:
とにかく軽いハードケースを選べばよい!というわけではない点に注意してください。
ハードケースから外殻を取り除いたセミハードケース
セミハードケースとは、一言でいえばハードケースから外殻を取り除いたものです。
その代わりパッドを発泡スチロールのようなある程度の硬さがあるものにし、外殻とパッドを兼用しています。
その特徴は軽さ。重い外殻がない分、ハードケースよりも軽く仕上げられ、代表的なセミハードケースであるスーパーライトケースは2.1kgしかありません。
弱点は外殻を取り除いたために刺突に弱い点。
たとえば槍で突かれた場合、外殻があるハードケースであればある程度は防げるでしょうが、発泡スチロールしかないセミハードケースはしっかりと刺さるでしょう。
現代社会において槍に刺されることはありませんが、傘のなかには先端が鋭いものがあり危険です。また、事故が起こった場合はガラス片など鋭いものが刺さることもあります。
ハードケースとセミハードケース、どちらを選ぶ?
これらの特徴から、ハードケースとセミハードケースのどちらを選ぶべきか解説します。
価格で選ぶならセミハードケース
先立つものがなければどちらも買えませんが、できるだけ安いほうがよいならセミハードケース一択です。
セミハードケースの最高峰であるスーパーライトケースですら2万円ほどで買えるのに対し、高級ハードケースのレオナケースは15万円以上します。
メジャーなハードケースの中で比較的安価なアランフェスケースやヒスコックスケースも3万円以上です。
ギターケースの価格についてはこちらの記事で表にしています:
あまり有名でないメーカーであればこれらより安いのもありますが、大事な楽器を入れるなら信頼性の高いメーカーを選ぶべきでしょう。
お金はないけど保護性能が高いケースを、と考えるならセミハードケースがよいかと思います。
車での移動が多いなら重めのハードケース
車での移動が多いのであればケースの重さはそれほど気にならないでしょうから、重めのハードケースでしっかりと保護するのがおすすめです。
車の場合は急停車で座席から転がり落ちたり、事故で強い衝撃を受けたり何か刺さったりすることもありえるためセミハードケースはおすすめできません。
セミハードケースを使うなら、動かないようにしっかり固定することをおすすめします。
歩きや自転車での移動ならセミハードケース
歩きや自転車での移動が多いならセミハードケースがおすすめです。
軽さと防御力を天秤にかけたとき、やはりハードケースよりもセミハードケースのほうが外殻がない分勝ります。
また、ハードケースよりも柔らかい分、背負ったり持ったりしていて身体にぶつかったときの衝撃が少ないのも利点です。
ただし、雨の日の傘による刺突には注意しましょう。私はスーパーライトケースの楽譜ポケットに電子楽譜用のiPadを入れるなどして少しでも守られるようにしています。
家のなかでの保管はハードケース
見落としがちな点として、ギターが存在する場所は外よりも家のなかのほうが圧倒的に長いという点が挙げられます。
ギターケース選びのときはどうしても持ち出すときのことを考えがちですが、時間を考えるとぶつけたり刺さったりするリスクは家のなかのほうが高いともいえます。
また、四季がある日本では温度や湿度が1年を通して大きく変動するため、その対策の意味でも家のなかでの保管はハードケースがよいでしょう。
できれば家のなかで保管するための丈夫なハードケースと、持ち出すためのケースを使い分けるとよいです。
私は家のなかではヒスコックスケース、外に持ち出すときはスーパーライトケースを使っています。
飛行機での移動はフライト用オプションがあるケースを
もし飛行機での移動があり、ギターを手荷物として預けるならフライト用のオプションがあるケースがおすすめです。
手荷物は作業員によって放り投げられることもあるため、できるだけ保護力が高い状態で預ける必要があります。
たとえばBamケースにはその名も「フライトケースカバー」というオプションがあります。
ちなみに価格が安い「HOODY for HIGHTECH Classical Case Cover」というのもありますが、こちらはフライト用ではないのでご注意ください。
また、ヴィセスナットケースにも専用のカバーがあり、フライト時に使えるとされています。
どちらもケース自体が高価ですが、手荷物として預けるならこれくらいの対策は必要でしょう。
ギターケースに万人への最適解はない
残念ながらギターケースのなかに万能なものはなく、それぞれの事情にあわせてある程度妥協する必要があります。
価格、防御力、軽さのどれを取るかは人それぞれであり、そのために多くのギターケースが存在しているのでしょう。それにデザインまで加えるとケース選びは本当に大変です。
大事なギターを守るためにもぜひ適当に選ぶのではなくしっかりとこだわりのケースを選んでください。