ギターを弾くときの脱力のコツと練習 右手も左手も必要最小限の力の量を知ることが重要

脱力している人間 体のケア
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ギターを弾くときにはとかく脱力が重要といわれます。でも、完全に脱力してしまったら弾けないし、どうすればいいのかわからない人が多いかと思います。コツは力を抜くことではなく、必要最小限の力の量を知ることです。

脱力ができると良いことがたくさんある

脱力が大事というのは多くの人がわかっていることかと思いますが、なぜ大事なのかについて考えてみたいと思います。

腱鞘炎などの故障の可能性を低くする

まず1番目に良いことは腱鞘炎などの故障の可能性を低くするということだと思います。

ギターを弾いていて起こるけがは大体が無理をして弾いた場合に起きます。筋肉を無理に動かした、筋を違えた、腱を痛めたなど、いろいろな故障がありますが共通するのはどれも人間の体の許容量や許容範囲を超えて動かした場合に起きるということです。

当然、脱力ができていない状態は脱力できている状態に比べて使う力が大きいわけですから、故障やけがをする可能性は高くなります。

疲れが減り長時間弾けるようになる

使う力を減らすことができれば疲れが減り、長時間弾けるようになります。

楽器を弾くのは楽しいとはいえ、弾いていくうちにだんだんと疲れてきます。そうなると楽しいがつらいに変わっていき、演奏を止めることに。

また、楽器で疲れてしまうとその後に何かしようとしても影響が残ったりします

脱力ができれば楽器の演奏で疲れにくくなりますので、楽器の演奏以外にもいい影響があります。

演奏がうまくなる

必要でない力を入れていると演奏自体にも影響があります。

ギターの左手の場合はある押さえから次の押さえに移動するときに間が開いてしまい、早いパッセージが弾きづらくなります。

右手の場合は柔らかい音や静かな音を出しづらくなりますので、音楽表現の幅が狭くなります。

逆に脱力ができればこれらの点を改善し、演奏がうまくなるでしょう。

脱力とは力を抜くことではない

ここで1つ誤解を解きたいのは、ギターなどの楽器の演奏でいう「脱力」とは「力を抜く」ことではありません。

どちらかというと「必要最小限の力で演奏できるようにする」といった方が正しいかと思います。

確かに、今に比べて力を抜くという意味では正しいのですが、「脱力」と言ってしまうと必ずしもやらなくてはいけないことを正しく伝えていないような気がします。また、何をしていいのかがわかりづらいです。

「必要性証言の力で演奏できるようにする」といった方が何をすればいいのかがわかりやすいのではないでしょうか?

クラシックギターで「脱力」するためのコツと練習

そんなわけでギターを弾くときに「脱力」をするためのコツと練習について説明したいと思います。

左手の脱力

左手の脱力ができていない状態というのは、自分がどれだけの力を入れれば弦を押さえられるのかがわかっていない状態です。

特に左手は必要以上の力を入れても音はちゃんと出ますので、脱力がわかりづらいといえます。

必要最小限の力を頭に染み付かせる練習

練習としては、左手の指を弦に触れる状態から始めます。場所はまずは1フレットで良いと思います。触れただけでは当然音は出ません。

そこから少しずつ押さえる力を入れて弾いていきます。どこかの時点で良い音が出るところがあると思いますが、その時の力が「必要最小限の力」です。おそらく多くの人が思っているよりも力を入れなくても音が出たのではないでしょうか?

これをまずは1弦で人差し指から小指までやってみてください。2~6弦についてもやると良いと思います。

まずはこれを練習を始める最初に続けてみてください。そうするとだんだん頭が必要な力というものを理解しはじめ、その後の演奏でも力を抜けるようになってきます。また、おそらく弾いているときに「あ、力を入れすぎてるな」と自分で気づけるようになると思います。

難しい押さえも原理は一緒

いや、指一本なら簡単だけど実際の曲はもっと難しい押さえでこんなに簡単にはいかない、と思う方もいらっしゃるかと思います。

でも、押さえるのに必要な力はどんな指の形でも一緒です

多くの人が誤解しているのは難しい指の形の時は強く抑えないといけないという点です。実際にはそんなことはなく必要な力は常に同じです。難しい指の形の時は指を開かなくてはいけないとかで指に力を入れづらいからということが多いかと思います。だからといって強く抑えることを意識したのでは脱力できません。「いかに必要最小限の力を効率的に伝えるか」を意識してください。

特に難しい押さえの時はその押さえ方の形でだんだんと力を強くする練習をやってみてください。

セーハは出す音、出さない音を意識する

セーハについても原理は同じです。セーハだからと言って各弦が必要とする力は変わりません。しかしながら、セーハの場合は1本の人差し指で押さえる弦の数が増えるので必要な力は増えます。

セーハの時に重要なのは、セーハによって抑えるすべての弦の音を人差し指によって押さえなくてはならないわけではないという点です。

ギターの場合は6つの弦をセーハで押さえて音を出すと不協和音になります。このため、一部の現代曲をのぞけば人差し指で6本の弦すべてを押さえて音を出すことを要求されることはほぼありません。多くの場合は他の指を使ってきれいな和音になるように他のフレットを押さえます。

また、右手の指は小指を入れても5本しかありませんので、多くの場合はセーハの時に6本すべての弦を鳴らすことはありません

つまり、人差し指で押さえなくてはいけない弦、押さえる必要な弦というものが存在します。これを意識してやることで必要な力はかなり小さくなります。

このためには、まずはセーハの時に人差し指ですべての弦を押さえなくてはならないという意識を捨てます。必要な弦にのみ力が入るようにします。

なかなか文章で説明するのは難しいですが、要は人差し指で不要な弦を下まで押し込まなければいいです。このためには、

  • 人差し指をまっすぐではなくアーチ状にする
  • 指のへこみの部分(関節のわき等)を不要な弦に当たるようにする
  • あえて指の先/指の付け根側を浮かす

といった工夫をすることができます。

試しにFの和音くらいからこれを試してみると良いかと思います。この場合は6,2,1弦は人差し指で押さえる必要がありますが、5,4,3弦は他の指です。6,2,1弦だけ音が鳴り、5,4,3弦はならないような押さえ方を探求してみてください(必ずしも5,4,3のすべてが鳴らないとは限らず、1つの弦だけでもならなければまずは成功です)。

右手の脱力

左手に比べて右手の脱力は難しいです。左手のように音が鳴る/ならないといった明確な基準がない分、習得が難しいかと思います。

音量の幅を使う

右手の脱力で大事なのは演奏時に音量の幅を使うという意識です。

楽譜上にはピアノやフォルテ、クレッシェンドといった音量に関する指示記号がありますが、それらの音量に関する指示はあくまで相対的なものです。何デシベルでなくてはならないという基準はありません。

人間の感覚としても小さい音、大きい音というのは相対的なものとして感じているのであって、どれだけの音なら大きい音という基準はありません。

要は、どれだけ小さい音から大きい音までの差があるかが重要です。

このため、右手における「脱力」のコツはいかに小さい音を使うかという点にあります

例えるなら、150kmの球ばかり投げているピッチャーは打たれるけど、140kmが最高でも緩急をつけて投げているピッチャーは打たれない、といったところです。

小さい音を知る

このための練習にはどれだけ小さい力で弾けばきれいな音が出るかを知ることが重要です。

音量の幅を使うといっても小さい音があまりにもひょろひょうろだったり音の芯がないのではよくありません(そういう音楽表現の場合を除いて)。

自分の楽器と自分の爪、自分の指、自分の体を使ったときにどれくらいきれいな小さい音が出せるかを知る必要があります

練習方法としては左手の場合と同じく、指に少しずつ力を入れて弦を弾いていきます。最初は弦に指がはじかれたり、ヒョロヒョロの音だったりするかと思いますが、どこかできれいな小さい音が出ると思います。それが一番小さい音です。これも自分が思っているよりも小さい力で出るかと思います。

そこから徐々に力を強くしていき、音がそれ以上大きくならない力を探します。ギターという楽器は入れた力に対して出てくる音量が素直に大きく鳴る楽器ではありません。どこかの点で音量が飽和します。つまり、それ以上力を入れてもしょうがない力の大きさが存在します。そこが一番大きな力です。

この一番小さい力と一番大きい力の間を使って演奏をすれば必要最小限の力で演奏が可能です。

ただし、これは「力」にフォーカスした場合であって、音楽表現としてもっと力を入れたり抜いたりすることはあり得ます。ずっとそんなことばかりする曲はないので、普段は上で探した範囲の力を使うことで効率的に演奏できます。

手以外の脱力

クラシックギターを弾くときには椅子に座って弾くわけですが、手以外の部分にも力が入っていることがあります。これも脱力したいところです。

鏡で自分の演奏姿勢を見る

このためには姿見の鏡などを使って自分の演奏している姿を見るのが良いです。

人間、姿を見るとどこかに力が入っているか力が抜けているかはわかるものです。

スマホなどで自分が演奏している動画を撮影するのも良いと思います。

ギターを弾いていない状態で目を閉じて体の状態を確認する

また、ギターを構えた状態で演奏せずに体の状態を確認するのも役に立ちます。

ギターを構えた状態で目を閉じ、頭の先から足の指の先まで少しずつ体の状態を確認してみてください。どこかに力が入っていればそこの力を抜くようにします。

この手順は本番で緊張しているときのルーティンとして取り入れても良いと思います。

一朝一夕ではできない、まずは知ることが大事

ここまで書いてきましたが、私も完璧に脱力ができているとはいいがたいです。

脱力は一朝一夕にできるものではなく、だんだんとできてくることかと思います。

まずは自分にとっての「必要最小限の力」を知ることが重要です。それによって自分が余計な力を使っていたことを知ることができます。

ぜひとも脱力を取り入れて良い演奏ができるようにしましょう。

(追記): 脱力に関して、音量に注目した記事を書きました:

(追記): 弾くときではなく、弾いていない時の脱力も重要です

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