ギターの曲の多くは同じ調弦を前提として書かれています。しかしながら、ギターの弦自体はどのような音にも調弦できますのでそれにこだわる必要はないはずです。なぜ今のような調弦になったのでしょうか?
まず感じる3弦と2弦の違和感
ギターを習い始めた人が最初に習うことは調弦かと思います。
チューナーを使わない場合は、まず5弦を音叉などであわせて、そこから6弦の5フレットと5弦の開放、5弦の5フレットと4弦の開放、4弦の5フレットと3弦の開放、3弦の4フレットと2弦の開放、2弦の5フレットと1弦の開放をあわせます。
この時点で、「なぜ3弦だけ4フレット目?」という疑問は誰もが抱くかと思います。
また、これのせいで6弦から音階を弾くときに音が覚えづらく、恨みに思った人もいるのではないでしょうか。
バイオリンは7フレット目で次の弦の音なのになぜギターは5フレット?
また、2、3弦だけでなくそもそもなぜ他の弦の間隔が5フレットなのかも疑問の余地があります。
実はバイオリン、ヴィオラ、チェロは低い弦からソ、レ、ラ、ミとなっています。ギターでいうと7フレット目で次の弦の音になるイメージです。
つまり、弦楽器とよばれるカテゴリーの楽器において、弦間の音の間隔が一定ではないのです。
なぜこのようなことになっているのか調べてみました。
4度調弦(チューニング)は楽器の大きさと構えのため
まず、2,3弦のことは忘れて他の弦がなぜ5フレットで次の弦の音になるかについてです。
ちなみに、このような調弦を4度調弦と言います。バイオリンの場合は5度調弦です。
スケールを高速に弾くため
楽器を弾くときには音階(スケール)が曲に含まれていることがよくあります。音階を弾くときには大体高速で弾くことが求められるので、指が素早く動く必要があります。このためには4度調弦のほうが押さえやすいのです。
たとえばドレミファソラシドを5弦の3フレットから弾くことを考えると、ギターのチューニングだと左手の位置を変えずに指だけを動かして弾くことができます。
これがもしバイオリンのように7フレットで次の弦の音になるとすると、左手を弦ごとに大きく動かして弾く必要があり高速に弾くのは難しいです。
バイオリン系の楽器の場合は楽器自体が小さく、また構えが指を開くのに適した持ち方をしていることから5度調弦でも問題ありません。
ちなみに、コントラバスだけは4度調弦が基本だそうです。5度調弦派の人もいるようですが…。そもそもコントラバス自体バイオリンの直系ではないですから4度調弦なのかもしれません。
バイオリン系が5度調弦なのは音域を広く取る意味もある
また、ギターが6弦なのに対しバイオリン系は4弦です。
バイオリンのように少ない弦でできるだけ広い音域をカバーしようと思うと、各弦間の音の間隔を広くする必要があります。
それもあってバイオリン系は5度調弦です。
2弦と3弦の音の間隔は…諸説ある
これに対して2弦と3弦の音の間隔についてはこれといった確実な証拠がないそうです。
わかっているところでは1500年代(16世紀)の時点ですでにギターの祖先の5弦の楽器がラ、レ、ソ、シ、ミという今のギターの5~1弦と同じチューニングだったそうですが、文献などで理由が残っているようなものではないのだとか。
なので、逆にこういう理由なのではないかという説がいくつか出ています。実際には一度にバシッと決まったのではなく、いろいろな調律があり、その中で生き残ったのが今の調律なのでしょう。
以下では諸説ある理由について解説します。
1弦と6弦の開放弦が不協和音になる
最初の説がすべて4度調弦にしてしまうと1弦と6弦の開放弦が不協和音になるからというものです。
2弦と3弦の間を4度調弦にすると1弦の音はファ(F)になります。これと6弦の開放弦を同時に弾くと不協和音になります。
ギターの曲において開放弦というのは、押さえなくても音が出るので楽でありがたいものです。しかしながら、1弦と6弦が不協和音になるとこれらは同時に弾くことはできなくなります。
1弦をファにすると4,5弦との相性は良くなる気もしますが、ベースとなる最低音の6弦を優先した方が音楽としては良いのかもしれません。
1弦と6弦がセーハで同時に弾けない
これは開放弦の不協和音と同じような内容になりますが、セーハした時に1弦と6弦が常に不協和音になるので指が必要になるという問題が生まれます。
1弦と6弦を同時に押さえるというのは指の構造上苦しいものです。あまり実際の曲でも出てこないのではないでしょうか?
できればセーハで同時に押さえられると楽なのですが、これが不協和音になるとできなくなります。
左手が楽になるから
最後がこの方が左手が楽になるから、というものです。
これは様々な理由が考察されていて、よくあるコード進行ではこの方が弾きやすいとか、単に小指を使わなくてよくなる場面が増えるからだとか、いろいろなことが言われています。
2弦と3弦の間を4度調弦にしている人も、5度調弦にしている人もいる
現在のギターのチューニングはStandard Tuningと呼ばれていますが、中には2弦と3弦を4度調弦にしてAll Fourth Tuningとして採用している人もいます。
また、バイオリンと同じようにすべて5度調弦にしている人もいるとか。
クラシックギターではあまりいませんが、ジャズなどの分野では結構いるようです。
自分の表現したい音楽を弾くのに適した調律を求めているということなのでしょう。
膨大な曲が今の調律で書かれている以上、今のチューニングを使うしかない
特にクラシックギターの場合には昔から書かれてきた膨大な曲を楽譜通りに演奏することになります。
そして、それらの楽譜のほとんどは2,3弦以外は4度の調律を前提としている以上、これを使うしかありまん。
特に初心者が音を覚えるのにめんどくさいという側面はありますが、もはやギターという楽器にとっては変えようのないStandardなのでしょう。
あきらめて覚えるか、他の楽器にするか、はたまた自分独自の調律と曲を作るか、ですね。