ギターの弦を張ったら余った部分を切る必要があり、その際に活躍するのがストリングカッターです。ただの金属対応ニッパーでは?と思う方もいるかもしれませんが、ピックボーイのSC-150にはこだわりが詰まっており、ブリッジ付近や糸巻き付近といった切りづらい場所をきれいに仕上げられます。実際に購入して使ってみたレビューを届けします。
普通のニッパーや爪切り、はさみで切ってはいけない弦
ギターの弦は普通のニッパーや爪切り、はさみといった身近な道具で切ってはいけません。
これらは金属を切ることを想定しておらず、弦を切ると刃こぼれする可能性があります。
少なくとも「金属を切れる」と明記されているものでなくてはなりません。
詳細はこちらの記事を参照ください:
一般的な金属対応ニッパーやワイヤーカッターは使いづらい
しかしながら、一般的な金属に対応したニッパーやワイヤーカッターであっても、ギターの弦を切るのには使いづらいです。
大きくて重い
金属対応のニッパーやワイヤーカッターは大きくて重いものが多いです。
これはしっかりと力を入れて硬い金属を切るためなのでしょうが、ギターの弦はそれほど太いわけではなく、少しの力で切れます。
大きくて重いニッパーを表面板に落としてしまったら…考えたくもありません。
刃が分厚い
重さの原因の1つが、刃が分厚いという点です。
これも硬い金属に負けないようにするためなのでしょうが、このせいでギターのブリッジ付近や糸巻き付近といった細かい場所をきれいに仕上げるときに手元が見づらく、作業がしづらいです。
たとえばペンチの場合はこんな感じ:
ワイヤーカッターの場合はこんな感じです:
いずれもブリッジ付近の余り弦をできるだけ短くしたいのに、肝心の手元が見えません。
攻めすぎると刃が表面板に当たってしまいそうで…これも考えたくありません。
先端に刃がない
ペンチやワイヤーカッターは先端に刃がありません。また、ニッパーの場合も少し手前ではないと切れないものがあります。
この特徴も細かいところに刃を入れて余り弦をできるだけ短くしたい場合に困ります。
元々そういう用途を想定していないのですから、文句を言うこと自体が筋違いではあるのですが。
ギター弦に特化したピックボーイのストリングカッター SC-150
普通のニッパーやワイヤーカッターとは異なる要求を持つギター弦のカットなので、やはり専用品がおすすめです。
そのなかでもピックボーイ(PICKBOY)のストリングカッター SC-150は弦を切るために設計されたものであり、非常に使いやすい特徴を持っています。
SC-150を実際に使いながらその特徴を解説しましょう。
握りやすく使いやすいサイズと重さ
1つ目の特徴がほどよいサイズと重さです。
手に取ると握りの部分がすっぽりと手のひらに収まります:
ワイヤーカッターと比べるとこのくらいの差です:
重さは実測でわずか63gしかなく、取り落とす心配が少ないです。
刃が薄くて手元が見やすい
刃がかなり薄いのもSC-150の特徴です。
下の写真において、上からSC-150、ニッパー、ペンチ、ワイヤーカッターですが、刃が圧倒的に薄いのがわかるでしょう:
先端だけでなく刃全体が薄いので、ブリッジ付近の弦の処理もこの通り:
手元がしっかり見えて表面板を傷つける心配が少ないです。
この特徴、ギター用のストリングカッターなら当たり前に感じますが実はそうでもありません。
たとえばMUSICNOMADのストリングカッター MN226はかなり分厚いです:
格安のストリングカッターであるキクタニのRC-23もこの通り:
ありそうでないからこそ、SC-150は人気のストリングカッターなのでしょう。
先端まで刃がある
SC-150は先端までしっかりと刃があります。
下の写真において、ペンチの先端はつかむだけですが、SC-150は刃があるのがわかるかと思います:
ワイヤーカッターもワイヤーを包み込んで切るものなので、先端に刃はありません:
ブリッジ付近や糸巻き付近は表面板やヘッドと弦の距離が近く、先端まで刃がないと工具がギターの木部に接してしまいます。
しかしながら、SC-150ならこれくらい先端で切ってもまったく問題ありません:
先端部分であってもすっぱりと切れます。
こちらもたとえばダダリオのストリングワインダー兼ストリングカッターのDP0002はワイヤーカッター方式になっており、先端に刃がありません:
アコギやエレキの場合、ブリッジはボールエンドですし、糸巻きも空間に余裕があります。おそらくクラシックギターを想定せずに設計されているのでしょうね。
ちなみに、クラシックギター用のボールエンド弦も存在しています:
弦の切れ味が抜群
弦を切るために開発されただけあり、弦の切れ味は抜群です。
SC-150でギター弦のなかで最も太い6弦を切る様子を動画にしたのがこちら:
見てのとおり、何の抵抗もなくスパッと切れています。
メーカーによるとベースの弦も切れるそうなので、ギター弦などまったく問題ないでしょう。
刃を収納できないのが唯一の欠点
SC-150の唯一の欠点が、常に刃が出ている状態であるという点です。
グリップ付近にバネがあり、握らない状態で刃が開いた状態になるため、先端に付属の保護カバーをつけておかないと危ないです。
また、収納時や運搬時に刃がどこかにぶつかって傷むこともあるでしょう。
保護カバーといってもただのビニールチューブなので、なくしそうです。
刃が開いた状態のほうが使いやすいのは事実ですが、使わないときのケアももう少しあると良かったと思います。
SC-150でブリッジ付近が美しい仕上がりに
SC-150を使って私のハウザーIII世のブリッジ付近の余り弦を処理してみました。
まず、初期状態がこちら:
ワイヤーカッターを使って切ったので、攻めきれずに弦が長く残ってしまっています。
この部分が振動してノイズになることもあり、決して見た目だけの問題ではありません。
この状態からSC-150を使って短時間で仕上げた結果がこちら:
初回だったので恐る恐るでしたが、かなり美しく仕上げられました。低音弦はもっと攻めて短くできると思います。
ちなみに使用している弦留めチップはこちらのトーレスビーズです:
余り弦を美しく処理し、ノイズを減らせる
この記事でレビューしたように、ピックボーイのストリングカッター SC-150はギターの弦を切るのに最適化された工具です。
薄めの刃が先端まであり、小さくて軽いという特徴は意外とほかのストリングカッターにはありません。
もちろん切れ味は抜群であり、弦交換時にギターを美しく仕上げられます。
余り弦はノイズの原因にもなるため、音の悩みも解決できるかもしれませんよ。