最近はオンライン発表会が一般化し、すでに経験したことがある方も多いのではないでしょうか。オンライン発表会での悩みといえば音質。スマホやパソコンのマイクはオンライン会議向けの「声」には十分ですが、楽器の音を拾うには音質が低すぎます。そんな方におすすめなのがZoomから販売されているH1nというハンディレコーダー。この製品、なんと単体で録音できる上にスマホやパソコンにつないで高音質マイクとして使えるんです。H1nを実際に購入しましたのでレビューしたいと思います。
単体でもスマホやパソコンにつないででも使える高音質レコーダー兼マイク
ZoomのH1nは「ハンディレコーダー」に分類される製品です。
その名のとおり単体で音をmicroSDカードに録音できる製品であり、写真にもあるとおり上部にコンデンサーマイクがついています。
平たくいえばボイスレコーダーの高音質版です。
ただし、普通のボイスレコーダーにはないさまざまな機能が備わっています。
高音質のXY方式ステレオマイク内蔵
1番目の特徴が、90度のXY方式ステレオマイクを内蔵しているという点です。
一般的なステレオマイクの配置方法には大きく分けてXY方式とAB方式があります(ほかにもいろいろあります)。
XY方式は上の写真のように右側のマイクと左側のマイクがクロスした状態になっているため、2つのマイクの距離が近く、明確な音像が得られるのが特徴です。
クラシックギターのようにそれほど左右の広がりを求められない楽器には最適といえるでしょう。
ちなみにAB方式の場合は2つのマイクが離れて配置され、それぞれが正面または外側を向いています。音の広がり重視ならこちらもよいです。
音質にももちろんこだわっており、24bit/96kHzのハイレゾ録音もできます。
単体のマイクに比べれば音質は劣りますが、普通の人が使うには十分ではないでしょうか。
ちなみにAB方式のほうがよいという方には、タスカムからほぼ同じ機能を持ったDR-05Xという製品が販売されています:
その上位のDR-07XならABとXYの切り替えが可能です:
H1nの上位機種であるH2nは4チャンネルサラウンド録音ができてしまいます:
自分の用途にはH1nで十分だったので、今回はH1nを買いました。
iPhone/iPad/Android/PCのマイクになる
Zoom H1nの特徴的な機能であり、これがあるから私が買った機能が、スマホやパソコンのUSB接続外部マイクとして使える機能です。
スマホやパソコンにはマイクが内蔵されており、単体で録音が可能なのですが、残念ながら音楽というよりは声を拾う目的に最適化されています。
これは通話やビデオ会議で音をしっかり拾うためであり、利にはかなっています。
ただ、楽器の演奏を録音するには十分な音質ではありません。
H1nはUSBケーブルでスマホやパソコンと接続することで、USB接続の外部接続マイクとして利用可能。手軽に良い音を楽しめます。
操作が超シンプル
H1nは使いやすさにもこだわっており、操作が超シンプルです。
普段の録音で使うのは上の写真の①で示されている録音レベル調節ダイアルと、赤色のついた録音ボタンのみです。録音レベルを調節したら録音ボタンを押すだけというのは機械が苦手な方でも問題なく使える操作性といえるでしょう。
凝ったことをやる場合でも、音質、低い音のカット、リミッター、自動レベル調整くらいで、ちょっといじればすぐに使いこなせます。
オーバーダビング機能で一人重奏が可能
H1nには1つの録音にほかの音を後から重ねられる、非破壊方式のオーバーダビング機能が備わっています。
この機能を使えばたとえば一人で重奏の曲の各パートを録音して1つの曲を演奏可能です。
重奏を弾きたいけど相手がいない、という方はこの機能を使ってみるとよいでしょう。
実際にZoom H1nを購入してみた
このZoom H1nを実際に購入してみました。
なお、「Zoom」という会社はWeb会議で有名なZoomとは別の、その道では有名な日本の会社です。
小さくて軽い本体
私が購入したのはH1nに各種アクセサリがセットになったものです:
「H1n-VP」と呼ばれる型番で販売されており、H1n単体とほぼ同じ価格で購入できるためお買い得です。
といっても、私がほしかったのはアクセサリのうち専用のセミハードケースのみ:
ACアダプタとUSBケーブルは持ってますし、風防は外で録音しない限り不要でしょう。
本体はこんな感じです:
日本企業の製品だけに表示言語に日本語があり、漢字を使ってわかりやすく表示してくれます。
サイズ感はこんな感じ:
本当はもっと小さくできるけど、マイク部分に手が触れるとノイズが乗るし、液晶を手で隠さないようにしたいし、ということでこのサイズになった感があります。
重さは電池込みで88グラムでした。
長時間持っていてもまったく苦になりません。大昔の小型ガラケーの感覚です。
裏側には三脚穴があるので、向きや高さを固定しての録音もかんたんにできます。
付属のセミハードケースはさすがのシンデレラフィットです:
裏にはストラップやバンドがついています:
iPhoneやiPad、パソコンとの接続は超簡単
単体での録音機能は非常に簡単なので、iPhoneやiPad、パソコンとの接続機能を紹介します。
まず、iPhoneとつなぐにはAppleのカメラアダプタが必要です:
これはiPhoneの底部にあるポートが「Lightning」という規格なのですが、これをH1nの「USB」に変換するため。
こんな感じでiPhoneとカメラアダプタ、カメラアダプタをH1nとつなぎます。
こういう接続の場合、iPhone側からの供給電力が足りなくなることもあるのですが、H1nは追加電源なしで動作しました。おそらくH1nは自身に取り付けられた電池を使って動いているのでしょう。
ちなみに私はApple製のカメラアダプタではなく、こういう安い互換品を使いました:
動作保証はできませんが、一応動いたことを書いておきます。
USB-CポートがついたiPadの場合、USBハブをつけてそこにH1nを接続します:
USBハブは安いもので十分です。
残念ながらH1nから直接iPadにつなげることはできません(そういうケーブルもあるかもですが)。
パソコンの場合、USB-Aポートがあればそのままつなげられます。
ドライバのインストールも不要で、そのまま利用可能です。
H1nでクラシックギターの音を録音して音質をチェック
Zoom H1nでクラシックギターの音を実際に録音してみました。
使用したギターはハウザーIII世、曲はラグリマの前半です:
かなり高音質なのがわかるのではないでしょうか?アップロードの都合上、MP3に変換したので実際はもっと高音質です。
H1nが活躍するのはこんな場面
実際に使って感じた、H1nが役に立つ場面を紹介します。
オンライン発表会でよい音を届ける
すっかり一般化したオンライン発表会ですが、残念ながらパソコンやスマホのマイクを使うと音がよくありません。
H1nをパソコンやマイクにつなげば、オンライン発表会でも手軽によい音が届けられるでしょう。
オンライン発表会では講師の講評がもらえることも多いですし、、できるだけ高音質のほうが講師にとってもほかの聴衆にとっても気持ちよいものです。
リアルな発表会で気軽に録音できる
リアルな発表会でもH1nは活躍します。
スマホでも録音可能なのですが、ホールのなかでスマホを使うのはなんとなく気がとがめられるもの。
H1nは単体で録音機能がありますので、周りにはばかることなく録音できるでしょう。
さらに音質もスマホより高音質ですし、重さも軽いので長時間持っていても苦になりません。
なお、コンサートの録音は法律違反となる場合がありますのでお気をつけください。
練習で簡単に録音できる
効率よく上達するには自分の音を聴いてフィードバックするのが重要。
ただ、スマホの録音はロックを解除し、アプリを立ち上げ、と意外と面倒です。
H1nの場合、電源を入れて録音ボタンを押せば録音が始まります。音量調整もダイヤルを回すだけなので直感的かつ簡単です。
スピーカーが内蔵されており、ヘッドホン端子もあるので、録音した音をすぐに確認可能です。
もちろんWeb会議にも
H1nは音楽専用というわけではなく、Web会議での利用も可能です。
パソコンよりもよい音を届けられるので、会議がスムーズに進む…かな?
リーズナブルなのに使える高音質ハンディレコーダー兼USBマイク
実際に使ってみて、Zoom H1nはリーズナブルなのに応用範囲が広い、お買い得な高音質ハンディレコーダー兼USBマイクだと感じました。
単体で録音できるだけでなく、スマホやパソコンの高音質マイクとしても使えるのでリモート発表会やWeb会議でも活躍できます。
ただ、スマホとの接続にケーブルを介することになるため、よりシンプルに接続したいならスマホに直付けできるマイクのほうがよいかもしれません:
1台あると音楽生活を豊かにしてくれますので、ぜひ検討してみてください。