木でできている楽器であるギターは低すぎる湿度にも高すぎる湿度にも弱く、しっかりと保管時に湿度管理をしてやる必要があります。しかしながら、単にギターペットなどの湿度調整剤をケースに放り込んだだけで満足していないでしょうか?その方法、間違っています。
今回は楽器内部の湿度を計測できる湿度計を購入し、いろいろと試して得た湿度管理のノウハウについて書きたいと思います。正しい湿度管理をおこない、楽器を大事にしてください。
ギターのメンテナンスに関する記事はこちらにまとめてあります:
Lee Guitars Bluetooth 温湿度計を購入して使用
測定に使ったのは、こちらのLee Guitars Bluetooth 温湿度計です。
通常の湿度計はケースの湿度を測定しているに過ぎませんが、この温湿度計はセンサーを楽器の内部に入れて測定することができ、より正確な湿度管理が可能となります。
詳細はこちらの記事を参照ください。
実際に私のギターにつけた写真がこちら。磁石を使って表面板を挟み込むのですが、結構強力な磁石が使われており、ギターを立てたり振ったりしても動きません。ケースの中に入れておいても安心です。
湿度調節剤の使い方のノウハウ
それでは、この温湿度計を使って学んだ、湿度調整剤の使い方のノウハウを紹介します。
ギターペットなどの湿度調整剤についてはこちらの記事も参照ください:
ケースの湿度と楽器内部の湿度は違う
まずわかったのは、ギターケース内の湿度と楽器内部の湿度は違うという点です。
一般的にギターケース内に湿度計を設置する場合、スペースに余裕のあるヘッド側の空間に置くことが多いかと思います。
湿度計が標準でついているアランフェスケースもここに設置されています。
しかしながら、Lee Guitars Bluetooth 温湿度計をここに入れた場合とギター内部に入れた場合を比べると、10%以上湿度が違いました。
このため、いくらギターのヘッドの湿度を測定しても意味はなく、きっちりと楽器の湿度を管理するなら楽器内部の湿度を計測することが必要であるといえます。
その意味でLee Guitars Bluetooth 温湿度計は有用です。
ヘッドやヒール部分に湿度調整剤を入れても効果は少ない
また、ギターペットなどの湿度調整剤を入れる際、やはりヘッドの空間や、
ヒール部分の空間に入れることが多いかと思います。
しかしながら、これも計測してみるとあまり楽器内部の湿度には大きな効果がありませんでした。
確かにヘッドに設置した湿度計の値は下がるのですが、楽器内部の湿度は少ししか下がりません。
ケース内は密閉されており、大切な表面板や裏板にまで湿度調節された空気が行き渡らないのでしょう。
そこで、湿度調整剤を指板上に設置してみました。
これならホールの上にも置かれますし、ヘッドやヒールよりは全体に行き渡るかと。
その結果がこちらです:
上側のグラフが湿度なのですが、山がある部分の左がヘッドとヒールに置いた場合、山の右側が指板上に置いた場合です。
見ての通り、指板上に置いた方が効果的に湿度を下げることができ、理想的な50%に近い湿度にすることができました。
その意味ではこちらのホール内に入れられるダダリオの湿度調整剤がおすすめといえそうです。
オアシスのホールに入れる加湿剤も非常に効果的であるといえるでしょう。
指板上における湿度調整剤も良さそうです。
追記:ストッキング+安い調湿剤でいけそうです。
湿度調整剤の効果は徐々に下がる
ギターペットなどの湿度調整剤を購入したらそれをケースに放り込んで満足している方もいるかと思います。
しかしながら、湿度調整剤の効果は徐々に薄れてきます。
上の図の上側のグラフが湿度なのですが、灰色の最低湿度を示すグラフが9/20付近から右肩上がりになっていることがわかります。
9/20付近に湿度調整剤を電子レンジで温めて湿度を追い出したのですが、そこから徐々に湿度を吸う能力が衰えていることを示しています。
私が使っているのは木でできたハードケースですが、それでもこれだけ変わります。
私の環境だと、1~2週間くらいで再び電子レンジで温める必要がありました。
ちなみに、電子レンジで復活させられる湿度調整剤と復活させられないものがあるので、注意してください。
また、私が使っているのはこちらのDR DRYですが、商品や使用環境によっても持ち時間は変わると思われます。ケースの密閉性が高い場合もより長持ちするかもしれません。
私はほかにスーパーライトケースも使っていますので、そちらでもデータをとって比較したいと思います。
ギターを弾くと楽器内部の湿度が上がる
再びこちらのグラフに戻ると、飛び出た山があることがわかります。
この山は、ギターを弾いた時間に発生しています。
おそらく、人間が出す湿度や部屋の中の湿度を吸ったのでしょう。また、同様に人間に温められて下側のグラフの温度も上昇しています。
このため、楽器を弾き終えたらしっかりと湿度を調整してくれる調整剤を入れたケースに入れるのが望ましいです。
ギタースタンドに立てるなどして放置すると、湿度が高い状態が維持される可能性があります。
もちろん温度管理も重要
ギターにとっては、湿度管理はもちろん、温度管理も重要です。
Lee Guitar Bluetooth温湿度計は両方測定でき、通知を出すことができます。
正しい湿度管理でギターを大事にしよう
この記事で紹介したように、多くの人がやっている湿度管理は必ずしも正しくないことがわかりました。
ぜひ正しい湿度管理をおこない、ギターがいつも健康でいい音を保てるようにしてあげてください。
この実験結果は私の環境でのものなので、それぞれの環境によって違う結果が出る可能性もあります。Lee Guitars Bluetooth 温湿度計を使うと自分のギターの内部湿度が測定できますので、導入すると良いでしょう。
AndroidでもiPhoneでも、スマホさえあれば使用でき、セットアップも指示に従うだけでかんたんでした。
また、さまざまな湿度調整剤が売られていますので、自分に合ったものを選ぶのが重要です。
大切な楽器のため、ぜひ湿度を正確に管理してあげてください。