クラシックギターの代表的な演奏方法の1つがトレモロです。アルハンブラの思い出や暁の鐘をはじめ、さまざまな名曲がこの技術を必要としています。しかし、意外と難しいのも事実。そんなトレモロをうまく弾くための練習方法があります。
こちらでクラシックギターの練習についての記事をまとめています:
トレモロはなぜ難しいのか
そもそもなぜトレモロは難しいのでしょうか?
音の粒をそろえないとトレモロに聞こえない
まず根本的にトレモロがトレモロに聞こえるためには音の粒がそろっていないといけません。
ここでの「粒」は音量と音質、音の長さのことです。
p, a, m, iが同じ音の長さで、かつa, m, iの音量と音質が同じなって美しいトレモロとなります。
しかしながら、i, m, aはそれぞれ指の角度も違えば力も違い、爪の形も違います。それなのに音の長さ、音量、音質を合わせるのはかなりの技術が必要となります。
同じ音の連続なのでごまかしがきかない
トレモロは基本的にa, m, iが同じ音を出します。
同じく連続して音を出すアルペジオも原理的にはトレモロと同じなのですが、アルペジオの場合は和音になったり、違う弦になったり、違う音になったりして1つの音というよりはメロディーとして人は聞きます。このため、ある意味聴いている人に対してごまかしやすいといえます。
しかしながら、トレモロの場合は同じ音を下手すると何小節も弾き続けます。そうすると聴いている人はそれぞれの音の大きさやリズム、音質の違いを見つけやすくなります。
大きく振動している弦を弾く必要がある
トレモロの場合速いリズムで同じ弦を連続して弾くことになります。
そうすると、前の指が弾いた直後のまだ大きく振動し続けている弦を弾くということになります。
大きく振動している弦に爪を直接当ててしまうとノイズが出てしまい、トレモロの連続感を妨げる要因となります。
トレモロをきれいに弾くための練習方法
それではトレモロをきれいに弾くためにはどのような練習をすればいいでしょうか?
客観的に判定できるように録音して聴く
まずはトレモロの練習をする際は録音することが重要です。
人間、なかなか弾きながら聴きながらということはできません。録音して聴くことでリズムや音量等をしっかりと自分で判断することができます。
まずはアルペジオをきれいに弾く
トレモロは同じ音を連続して弾いてはいますが、大きく分けるとアルペジオの一種です。このため、アルペジオがきれいに弾けていないとトレモロもうまく弾けません。
いやアルペジオはうまく弾けているんだけどという人もいるかもしれませんが、前述の通り和音を弾くアルペジオの場合は各弦の音の大きさや音質の違いをごまかしやすく、自分で思っているよりもアルペジオができていないケースが多いです。
ここでは各指の音の大きさよりも音の長さ(リズム)がそろっているかを重点的に練習します。
親指も含めて1弦でトレモロする
次に1つの弦でトレモロを練習します。
よく勘違いしがちなのがa, m, iがトレモロであってpは別の音(通奏低音的な)というものです。
そうではなく、美しいトレモロはp, a, m, iがそろって初めて美しく聞こえます。
また、pで低音を弾いてしまうと、その音が響いてa, m, iがうまくトレモロできているかわからなくなります。さらにノイズもうもれてしまってわからなくなります。
そこで、1弦の開放弦のみでp, a, m, iを弾きます。同じ弦を弾いているので当然音は途切れます。が、これなら録音無しでもある程度のレベルまで音の長さ、音質、音量が同じかどうかわかりますし、ノイズもすぐにわかります。
たぶん、この練習をやると自分のトレモロの拙さに愕然とするかと思います。
速く弾かない、むしろゆっくり弾く
トレモロは速く弾かないとトレモロに聞こえないと思っている人がいるかと思いますが、これは間違いです。
粒のそろったトレモロを弾くとゆっくりでも美しいトレモロに聞こえます。
速く弾くとリズムや音量をごまかしやすいの弾けているように思えますが、ゆっくり弾いたらトレモロできないのであればトレモロができていないということです。繰り返しですが、トレモロはアルペジオの一種であり、ひたすら速く弾くものではありません。
1つの弦でトレモロ練習するときもゆっくりから始めるのが良いです。
ノイズがでたら爪を見直す
トレモロの中でノイズが出る場合は爪に問題がある場合が多いです。
トレモロは同じ弦を連続して弾くため、大きく振動している弦をはじくこと鳴ります。振動している弦に直接爪が当たるとノイズが出てしまいます。
このため、まずは肉の部分で弦をとらえてそのあとで爪で弾くことが重要です。
爪が不必要に長くないか確認し、かつ弾き方に注意しましょう。
1弦ができたら2弦、3弦へ
1弦ができたら2弦、3弦へ移ります。
1弦の場合は上の弦がありませんが、2弦と3弦の場合は上の弦に指が当たることがあり難しくなります。
低音弦を親指で弾く
次に親指は低音弦を弾くようにします。実際の曲ではこのケースが多いです。
前述の通り低音弦を鳴らすとその音でa, m, iの音がごまかされてしまうので、録音をして聴くか、トレモロミュートを使って練習するのがおすすめです:
このトレモロミュートは音を小さくするための弱音器なのですが、トレモロの練習用グッズとして優秀です。
ミュートを使うと音が小さくなりサステインが短くなります、そうすると低音弦を親指で鳴らしてもその音はすぐに消え、ごまかされることがなくなります。
音の大きさがそろわない場合はアクセントをつける練習をする
音の粒の中でも音の大きさはなかなか難しい課題です。
これがうまくできない場合はトレモロ練習の時に特定の指にのみアクセントをつける練習をすると良いです。たとえばiだけ、mだけ、aだけといった具合に別々にやります。
音の大きさがそろわないというのは音量をコントロールできていないということです。意図的にアクセントをつけることで制御できる技術を身につけます。
これも必ずゆっくりから始めます。
曲の練習
ここまでくれば右手のトレモロの技術は育ってきたかと思います。
が、曲の練習になるとまたトレモロが崩壊します。
難しい場所で焦らない
原因は左手のおさえが難しい個所です。難しい個所に差し掛かると速く押さえようと焦ってトレモロが速くなってしまったり、最後の音(i)だけ短くなりがちです。
右手はロボットのように同じリズムのトレモロを刻み続け、左手をそれに合わせる気持ちでやりましょう。
リタルダンドなどの味付けはその後です。
ハイポジションで弦の高さが変わる
また、曲になると弦をおさえることになりますが、これによって弦を弾く場所の弦の高さが変わるのも難しくなる一因です。
これはもう弾いて慣れるしかないかと思います。
実は基本技術を向上させるのにいいトレモロ練習
トレモロ練習は特殊技術のように見えて、これまで説明したように、じつは基本技術の結集でもあります。
つまり、トレモロをうまく弾けるようになれば基本技術も向上するということです。
トレモロはギター特有の奏法でもあるのでぜひともこれを身につけて幅広い曲を弾けるようになりたいものです。