ギターケースは専用に作られたものでない限りは標準的な650mmスケールの大きめの楽器でも入るように作られます。このため、ショートスケールの楽器や小さめのボディを持つギターの場合、ケースに入れると隙間が大きくてケース内で動いてしまう状態になりがちです。ショートスケールや小さいボディのギターのケース対策について解説します。
ケースがフィットしないショートスケールや小さいボディのギター
最近はクラシックギター業界でショートスケールのギターの人気が上がり、多くのギターが販売されています。
ショートスケールのギターは弦長が標準的な650mmよりも短いギターで、その分指が届きやすく弾きやすいというメリットがあります。
最近ではプロのなかでもショートスケールを選ぶ方がおり、たとえば福田進一さんは640mmの桜井マエストロRFを使っているそうです。
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ショートスケールのギターについてはこちらの記事で詳しく解説しています:
また、ギターは弦長だけでなく、ボディの大きさもさまざまです。
特にトーレスタイプの楽器は小型のボディを持っています。
一方、世の中で一般的に売られているギターケースは標準的な650mmの弦長を想定し、かついろいろなギターで使えるよう大きめのボディを想定して作られています。
この結果、ショートスケールや小さめボディの楽器をギターケースに入れると隙間が大きく、なかでギターが動いてしまうことに。
私は弦長645mmでトーレスタイプのボディを持つハウザーIII世を使っているのですが、スーパーライトケースに入れると、こんなに隙間ができます:
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当然ケースを揺らすとなかでギターが動きます。
持ち出すときは揺れが間違いなく加わるため、楽器の保護という意味では不安が残ります。
安上がりで簡単なのは詰め物
対策として最も簡単なのは詰め物です。
私は柔らかいマイクロファイバークロスを購入し、ギターの周りに詰めています:
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マクロファイバークロスは安いので気軽に使えますし、ギターの掃除にも使えます:
ただ、ギターをしまうたびに詰め物をするのは意外と面倒です。急いでいると詰め物をせずにギターをしまってしまい、後から取り残されたマイクロファイバークロスに気づくこともあります。
さらに、マイクロファイバークロスがほつれて落ち、ケースに付いてしまいます。私は内部が黒いケースに白いマイクロファイバークロスを使ってしまい、今更ながら後悔しています…。
(追記)その後、グランドオープリーのスペースパッドという隙間を埋めるアクセサリを導入してみました:
ショートスケールや小さめボディに対応したギターケースも
ギターケースのなかにはショートスケールや小さめボディのギターに対応したものがあります。
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クラシックギター用ケースについてはこちらの記事でさまざまな製品を比較しています:
スーパーライトケース 630mm スモールボディ用
おそらく最も安く買えるショートスケール専用のギターケースが「スーパーライトケース 630mm スモールボディ用」です。
普通のケースではガバガバになってしまうギターでも、これならフィットするでしょう。
ちなみに内寸の違いはこんな感じです(上が630mm、下が普通のスーパーライトケース):
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残念なのは、630mm版はカラーバリエーションが黒しかない点。650mm用がカラフルなのに比べると選択肢がありません。
ヒスコックスケース
イギリスのヒスコックスケースにはS/M/Lの3サイズが存在し、Sサイズはショートスケールのギターに使えます。
私はSサイズのヒスコックスケースをハウザーIII世に使っていますが、この通りしっかりフィットしました:
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ただ、ヒスコックスケースは最近日本で手に入りづらくなっており、Sサイズはなおさらです。
また、見た目がおしゃれとはいえず、4kgと重いのも難点でしょう。
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ヒスコックスケースについてはこちらの記事で詳しく解説しています:
ヴィセスナットケース
ヴィセスナットケースには「アジャスタブルサポートベルト」という機構が備わっています。
これはギターを締め付ける形でベルトを内部をフィットさせられる機構であり、さまざまなギターでシンデレラフィットできるでしょう:
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少々お高いですが、これならギターを買い換えても、複数のギターを使い分けても問題ありません。
Bamケース
おしゃれなギターケースとして愛用者が多いBamケースですが、残念ながらサイズのバリエーションはありません。
その代わり、多数のクッションが付属しており、これを内部に貼り付けることで使ってギターにフィットさせられます。
ヴィセスナットケースほどのフィット感はないでしょうが、詰め物をするよりスマートです。
オーダーメイドケース
オーダーメイドでギターにピッタリのケースを作ってもらうのも1つの手です。
たとえばギターケースの老舗である岩本ケースではオリジナルオーダーギターケースを製作可能です:
価格はセミオーダーで35,000円から、フルオーダーでも50,000円からと意外とリーズナブル。
また、ギグバッグのNAZCA(ナスカ)もオーダーを請け負っています:
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ギグバッグなので防御力には不安がありますが、おしゃれなケースならこちらのほうがよいかもしれません。
価格はアコギサイズでのフルオーダーが56,100円からです。
ショートスケール用のケースの充実を願う
この記事で紹介したように、ショートスケールや小さいボディのギターに合うギターケースは存在していますし詰め物での対応も可能です。
ただ、まだまだ標準サイズのギターに比べると選択肢が少ないのが現実。
ショートスケールギターの人気が上がっていることもあり、ランナップが充実することを切に願います。